25限 家族
今までのあらすじ
圭介はイップスを克服しテニスをやりたくなり
池波さんと同じスクールに行こうか考えていた。
夕飯時、加奈にテニスをすることを話すとイスから立ち上がり驚いた。
「ほんとうに!」
「まあ、母さんも戻ってきたことだからバイトを減らしても大丈夫だと思うからさ」
母さんが出てきた瞬間、やはり加奈はどこか嫌そうな顔だった。
「そうだね、お兄ちゃん、今、ほとんど週5だから減らしたほうがいいよ」
ほとんどと言ったのはたまに週4のことがあったりと週によって変わるからだ。
「だけど母さんが再婚のことが落ち着いてからのほうが良いとも考えるんだよね」
それを聞いて加奈が頬を膨らませる。
「ずるいよ、お兄ちゃん、私、再婚に賛成するしかないじゃん」
圭介は加奈が本当は反対ではないのは見ていてわかった。しかしそれを認めたくなくて嫌な顔をしていたこともわかっていた。
「智さんも悪い人じゃないから大丈夫だよ」
加奈はクマのフードを深く被り小さくうん、と言った。圭介は勇気を出した加奈の頭を撫で、バイトに向かった。
バイトが終わった圭介が帰宅すると部屋を誰かロックした。
「母さん、どうしたの?」
先に仕事から帰宅した母さんがそのまま入ってくる。
「まだ言っていなかったことがあって」
急に帰宅し、再婚話を急に持ち出しこれ以上何があるのかと身構える。
「母さん、再婚したら仕事やめようかと考えてるんだ。もちろん急にはやめられないけど」
母さんが圭介の机に座って言う。僕もベットに寄りかかる。
「今まで圭介たちに寂しい想いをさせてしまったからこれからは一緒にいようと思って。
仕事も一段落つくから」
「そうなんだ」
「圭介は再婚に賛成?」
母さんは真っ直ぐに聞いてくる。
「加奈はどうなの?」
「母さんは圭介に聞いてるから」
母さんが優しい声で言う。
「前も言ったけど賛成だよ、実際会っていい人だったし」
「そう、なら再婚するね、家はこのままでお父さんの部屋を使ってもらっていいよね?」
圭介は、それで良いと言葉にしたが実感が湧かないでいた。実際に会えば実感が少しでも湧くと思ったがだめだった。反対というわけではなかったが不安はやはりあった。
「それとテニスもやったらいいよ」
「え、加奈から聞いたの?」
突然、テニスを勧められて驚いた。しかし落ち着きを取り戻すとふとあることが言いたくなった。
「母さん、いろいろありがとね」
怪我した時、テニスを休憩したときも母さんが支えてくれた。そのことをまだ感謝してなかった。
「何よ、急に、早く寝なさい」
母さんが逃げるように自室に戻っていった。