19限 別れ
今までのあらすじ
同じ高校を目指すことを決めた!
夏休みが過ぎ2学期に入って数日のある日、前触れもなく突然、父さんが帰宅した。時刻は21時のため母さん、圭介、加奈は家にいた。
「真沙美はいる?」
リビングの扉を開け、ビクビクした様子で母さんを呼んだ。呼ばれた母さんはリビングにすぐに出た。部屋にいた加奈と圭介はリビングに通じる廊下から扉越しにその様子を見ていた。
「え、えーと、離婚することにしたから、お金とか親権は全部、あげるよ、詳しいことは弁護士呼んだからそっちの方で」
そう言い、古ぼけた鞄から離婚届を取り出し机においた。母さんはそれに一瞬驚いたが迷うことなくサインする。そしてサインしたところで紙を丁寧に鞄にしまった。
「こうなってしまってごめんね」
謝罪をして圭介たちが覗いている扉を開けた。隠れる時間がなかったため父さんと圭介と加奈が出会う。父さんはまた謝り、そのまま出て行った。僅か10分の出来事だった。
「圭介たち見てたの?」
母さんも圭介たちに気づき話しかける。加奈が小さく頷く。
「ごめんね」
ぽつりと母さんは言った。
後日弁護士が家に来て書類等を作成し正式に離婚した。圭介は父さんという人物がよくわからないままの別れだった。それは加奈も同じだった。幼い頃は一緒に遊んだりもしていたと思うが10歳になった頃から父さんは帰らなくなっていた。そのため離婚ということで大きな変化はなかった。養育費が支払わられるようだが母さんはいつも通りに働き、いつも通りに帰宅した。そして特に変わらないまま時が過ぎ、圭介の怪我もだいぶよくなりギブスを外せるまでになっていた。しかし、まだ運動はできる状態ではなかったため受験勉強に励む毎日だった。