14限 託す想い
今までのあらすじ
武本 圭介は関東大会出場が決まる試合で足を痛めてしまいうまくプレーができないでいた。
デュースアゲイン」
このゲームだけでも10本のラリーが続き30分が経っていた。はやく決めたい圭介はリターンした後にそのまま前につめる。激痛が襲い前によろける。そして視線を上げるとゆっくりボールが近づいてきた。何もできずに回転がかかっていたボールが顔面に直撃し倒れる。
「おい、直撃したぞ」
「大丈夫か」
周りが騒がしくなり圭介のもとに審判が近づいてくる。相手選手も心配そうにその様子を見ていた。コーチが目の様子を確認する。
「続けられそうか」
「大丈夫です」
迷いなく圭介は答える。
「足の方は」
「そっちも大丈夫です」
それを聞いたコーチが、呆れた声で行って来いと背中を押す。背中を押された圭介はゆっくりコートに戻り構える。審判も戻り、コールし試合が再開する。ゲームカウント2-0のアドバンテージサーバーで次の点を取られたら最低あと4回点を取らないといけなくなる。圭介は勝つため、相手の意表を突こうと同じように前に出た。しかし相手は逆サイドを狙ってきたため取れなかった。
「チェンジサイズ!」
痛む足を引きずりベンチに座りドリンクを喉に流す。
「ちょっと足見せて」
コーチに言われ靴を脱ぐと赤く腫れあがっている足が姿をあらわす。
「ほんとにこんなのでできるのか、靭帯損傷してるかもしれないぞ、それにさっきも顔面に食らって、さらに左肘も痛いだろ、悪いが棄権しなさい、これは団体戦で次に仲間がいるんだから信じなさい」
足が思った以上に腫れていてコーチが顔を歪める。足に顔に肘も怪我している自分に思わず笑ってしまう。
「関東大会に団体戦で出場しても武本が怪我してたら勝てないから今は棄権して安静にしなさい」
次の選手の唐崎、斉木ペアが自信満々に頷く。
「まけないでくださいよ」
そう軽口を言い武本 圭介は棄権した。