13限 中学時代の悲劇
中学時代。
「ファーストォォォ」
網に触れるギリギリで部員達が精一杯応援する。今年、最後のチャンスである 団体戦の関東大会出場が決まる大事な試合だからだ。コートには汗だくの状態で深呼吸を繰り返し気持ちを落ち着かせる圭介。圭介にとって今年は最後の年だった。右手のボールを軽く弾ませる。周りの声援が耳に入らなくなる。ボールを数回弾ませ、ボールの感触を確かめる。感覚が掴んだと思ったら視線を相手コートの真ん中、センターに向ける。右手のボールを少し前のほうに上げ、ラケットに思いっきり体重を乗せ振りかぶる。ボールは相手センターラインギリギリで弾み伸びる。相手はそのボールを苦しそうに返球する。そのチャンスボールを容赦なく相手コートに叩きつける。その後も一方的なゲームが続く。数日前に痛み出した肘もいつの間にか消えていて問題なかった。
「チェンジサービス」
サービス権が変わり今度はレシーブとなる。このゲームをとれば団体戦、関東大会出場と頭に浮かび心が乱れる。深呼吸をしてしっかり相手の動き1つ1つを凝視する。
相手がトスを上げた瞬間、スプリットステップをして相手が打った瞬間に右に動く。速いサーブがコートに入ったが圭介はそれを難なく深く返す。相手も負けじとそのボールを打つ。圭介は左右に打ち相手を走らせる。相手のボールが浅くなったところで強打した。
「ナイスストローク!」
「0-1」
先ほどと同じようにリターンをする。そしてスプリットステップで次の準備をしようとした瞬間、着地に失敗し足を捻る。そのまま転びそうになるが踏みとどまりギリギリで返球する。相手がコースを狙ったショットを打ってきたため痛む足を動かし強打する。しかし焦ったためかネットに引っかかる。
「一本集中!」
「1-1」
スプリットステップ時に痛む足を無理に動かしながらのため、その後苦戦を強いられる。
「デュース!」
気づいたらデュースになっていた。ここから2点差がつくまでずっと試合が続く。足首を痛めた圭介にとって不利だった。
[加奈と圭介のテニス講座]
加奈「助けて、お兄ちゃん、今回は難しいのが
多いよぉ」
圭介 「じゃあ、まずは試合の進め方について説明
するね」
加奈 「お願いしまーす」
圭介 「まずはテニスは1ゲーム4ポイント制なんだ」
加奈 「相手が4回ミスをすれば良いんだね」
圭介 「そうだよ、だけど注意があって、デュース
というものがあるんだ」
加奈 「ジュースじゃないよね」
圭介 「ちがうよ、たまにそう言ってる審判いるけど
間違いだよ。それでデュースというのは
3-3になった時におこるんだよ」
加奈 「そうなんだ、それでどうなるの」
圭介 「2点差がつくまで続くんだよ。
4-6、 6-4、8-6、6-8 のようになるとゲーム
をとるだよ」
加奈 「4-6 と6-4って何がちがうの?」
圭介 「テニスは、サーブを打った人を先にカウント
するんだよ」
加奈 「そうなんだ、それでゲームはどれくらい
とればいいの?」
圭介 「5ゲームマッチなら先に 3ゲーム。7ゲーム
なら5ゲーム先取すれば勝ちだよ」
加奈 「けっこうやるんだね」
圭介 「プロの試合はもっと長いよ。次にチェンジ
サイズとサービスについて説明するね」
加奈 「はーい!」
圭介 「チェンジサービスはサーブを交代して
チェンジサイズはサーブとコートを変える
ことだよ」
「なるほどねー」
圭介 「それで2ゲームと4ゲームのときにコートを
変えるんだ」
加奈 「頭がパンクしちゃうよー」
圭介 「難しいよね、じゃあ、今日はここまで」
加奈 「また、次回で、バイバイ」