12限 左利き
土曜日に小学生と再戦することを伝えると斉木 祐真と唐崎 拓 が練習を手伝ってくれることになった。
さらに池波 沙織里さんも手伝ってくれることに!
木曜日の放課後、圭介、池波さん、唐崎、斉木はラケットケースを背負いテニスコートに集まっていた。
「じゃあ、最初は軽くラリーしよっか」
「ペアはどうする?」
相談した結果、唐崎と圭介ペア、池波さんと斉木ペアになった。唐崎と斉木は現役テニス部のため別にした方が良いという考えだ。誰も反論がないためそれで始める。また、テニススクールの池波の腕も未知数だったためだ。
「いくぞ」
それを合図に斉木がアンダーサーブを軽く打つ。それを圭介がフォアハンドで少し強めに打つ。頭の中でスプリットステップ、テイクバック、前に押す、首に巻くという一連の動きをしっかりイメージする。ラリーということで後ろに下がっていた池波さんがフルスイングの強烈のフォアハンドストロークを撃つ。深く鋭いショットが唐崎の足元に刺さる。唐崎が驚きのあまり動けないでいたため圭介は笑いを我慢できなかった。
「池波さん、最初から飛ばしすぎだよ、ラリーだよ」
「ごめん、ごめん」
と池波さんも笑っていた。しかし唐崎、斉木にとっては気を引き締めるきっかけになった。特に試合という感じではなかったがその場には緊張感が漂う。ボールを取りに行った唐崎がファーストサーブを池波さん目掛けて打つ。流石テニス部の上位、重い打球が池波さんを襲う。池波さんはその打球をしっかりラケットの面の中心で捉えて打つ。しばらく池波と唐崎のクラスラリーが続く。その間に斉木と圭介は前に詰める。軽いラリーが試合形式の練習になる。何回か続いたところで池波さんが仕掛ける。池波さんが圭介の左側を抜こうとしたのだ。圭介は咄嗟にラケットを左手で握りラケットの面で壁をつくりボールが面に当たった瞬間にラケットを押し出し、ボレーを打つ。ボールは相手のコートラインギリギリに弾んだ。
「相変わらず、嫌なとこに打ってくるな」
斉木がボヤく。
「え、僕今、左で打っていた?」
咄嗟のことでどう打ったのか分からない圭介。それは池波さんも同じで混乱しているようだった。
「武本くん、今まで右手で打ってたよね?小学生と戦った時も」
少し落ち着いた池波さんが圭介のところに詰め寄る。唐崎、斉木がやらかしたことに気づき顔を顰める。
「もしかして武本君って本当は左利きなの?」
圭介は何と言えば良いのか困ってしまった。
[加奈と圭介のテニス講座]
加奈「お久しぶり! テニスの話が出てこなかった
ためコーナーが出来なかったよ」
圭介 「そーだね、今日はボレーを教えるね」
加奈 「はーい!」
圭介 「バレーはネットの近くでノーバウンドで打つ
ことだよ」
加奈 「前にでたりして打つんだね」
圭介 「そうだよ、利き手側で利き手で打つことを
フォアボレー、利き手で利き手と逆側で
打つことをバックボレーって言うんだよ」
加奈 「そうなんだ! 」
圭介 「次回は出番あると良いな」
加奈 「また、次回で!」