10限 不安の顔合わせ
前回までのあらすじ
バイトが休みで武本 圭介はついうとうとしてしまった。その間に母さんと加奈が話し合い土曜日に再婚相手と会うことになった。
土曜日。加奈と圭介と母さんは再婚相手と会うためレストランに来た。既に相手は来ていたのかある席に通された。
「お久しぶりです」
母が席にいる、いかにもバリバリ仕事をしてそうなスーツの男性に挨拶をする。続いて圭介と加奈と順番に挨拶をする。加奈は落ち着いているように見えたが横を向いている相手の子どもの方が気になった。
「初めまして、皆里 智 です。こちらにいるのが娘の睦美です」
そう言われて不貞腐れたような感じで横を向いていた小学生が顔を見せる。圭介と睦美の視線が合った瞬間お互い表情を変える。
「あ! あの時のクソ弱い人だ!」
その言葉を聞き、その場にいた圭介を含めた全員が表情を変える。
「え、圭介知り合いなの?」
母さんが最初に口を開く。う、うんと歯切れの悪い返事をする。
「と、とりあえず飲み物を頼みますか」
微妙な雰囲気を変えるためか智さんがメニューを渡してくれた。適当に注文をして話が始まった。
「そんなに緊張してなくて大丈夫だよ」
母さんが優しく加奈と圭介に言い聞かせるが無理があった。店はどこにでもあるチェーン店のファミレスでかしこまった場所ではないが顔が強張ってしまう。それは加奈も睦美も同じようで加奈は下を向き、睦美は横を向いていた。圭介は相手の方は向いていたが視線は外していた。話題は自然と子どもたちの共通のテニスのなる。しかし圭介にとって嫌な話題だった。母さんが余計なことを話す恐れがあったからだ。
「智さんはね、私が海外にいたときに同じチームにいた人よ」
母さんが智さんの紹介をする。智さんは照れ臭そうな様子だった。そんな感じで話は進み話題はテニスのことになった。
「それでこの間話していたテニスの練習のことなんですが圭介やってくれるようです」
すっかり忘れていたテニスの練習のことが話題があがり圭介は母さんのほうを見る。母さんがいいって言ったよね、という表情を見せる。
「え、本当に私とラリーができるの、弱すぎてできないでしょ」
睦美がバカにしたような言い方をする。それが加奈にとって癇に障ったのか口を開く。
「お兄ちゃんはそんなに弱くないよ」
強い口調で加奈が睦美に迫る。その様子を見たお互いの親と圭介が止めに入るが智さんの言葉が火に油を注いだ。
「今度、みんなでテニスしようか話しているからその時でも軽く打ち合おう」
加奈と睦美がその言葉を聞き睨み合う。そうとは知らずお互いの親が謝る。そのままギスギスした感じでお開きとなり土曜日にテニスを行うことになった。