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第4章:第86話:闇の収穫と復活の祈り

第4章:第86話:闇の収穫と復活の祈り


シンジは単身、砦の深部へと潜り込んでいた。 青白く光る広間を離れると、そこは湿った岩肌が剥き出しの、複雑に入り組んだ迷宮となっていた。足元には時折、魔物の骨らしきものが転がり、ここが「赤いトロル」の支配する死の領域であることを無言で告げている。


(……っ、いたな)


前方の暗がりに、単体の魔物の気配を察知する。 シンジは極限まで息を殺し、忍び足で背後へと回り込んだ。赤い皮の鎧は、本来ならこの闇で浮いてしまうはずだが、彼は壁の凹凸や影の濃淡を巧みに利用し、あたかも闇そのものに溶け込むように動く。


(……そこだ!)


一閃。影縫いの短剣が魔物の急所を音もなく貫いた。 その瞬間、静まり返った洞窟の奥底から、シンジの魂を震わせるような勇壮な旋律が鳴り響いた。


【パラパパッパッパー!!】


(……上がったか)


孤独な狩りの果て、シンジのレベルがまた一つ、高みに達した。彼は慣れた手つきで、消滅した魔物が残したゴールドを拾い上げ、腰袋に収めた。 その直後、シンジは雑多な資材が積み上げられた倉庫のような場所で、異様な存在感を放つ重厚な「棺桶」を発見し、足を止めた。


「……なんだこれ? 棺桶か……?」


一瞬、嫌な予感がよぎる。だが、シンジは思い出した。ギルドで耳にした話を。一週間前、この橋の魔物討伐に向かったまま、行方が分からなくなっている冒険者たちがいたはずだ。


「……まさか…。一週間も経ってこんな所に……。だが、魔物に弄ばれるままにしておくわけにはいかねえな。……よし、持っていくか…」


シンジは覚悟を決めると、巨大な木箱に手をかけ、拠点へと引きずり始めた。




一方、青白い光が満ちる広間。


シンジが偵察に向かっている間、食事の準備をしていた残された三人と神父もまた、絶え間ない緊張の中にいた。


「……っ、また奥から来たわよ! セシリア、援護を!」


ミーシャが鞭を振るい、迫り来る魔物を牽制する。


「はいっ、聖なる加護を……! 皆さんの傷を癒やします!」


セシリアも懸命に杖を掲げ、光のヴェールで仲間を包み込む。その乱戦の最中、フィリアを眩い聖なる光が貫いた。


【パラパパッパッパー!!】


「……精霊の声が、もっと鮮明に聞こえる……」


フィリアのレベルが上がり、『狩人Lv11』へと到達した。その瞬間、彼女の脳裏に、古の時代に失われた秘術――『還魂の祈り』の知識が鮮烈に刻まれる。



そこへ、汗を流し、肩で息をしながらシンジが棺桶を引きずって戻ってきた。


「シンジ! 無事だったのね。……でも、その棺桶は……?」


ミーシャが駆け寄る中、シンジは重い木箱を岩陰に置き、答えた。


「……一週間前にここへ向かった冒険者たちかもしれない。放置できなくてな。……すまない、俺はまだ偵察を続ける。あと二つ、同じものがあったんだ」


シンジはそれだけ告げると、再び闇の中へと消えていった。


フィリアは決意を秘めた瞳で、運ばれてきた棺桶の前に膝をついた。


「私……新しい力を授かりました。……やってみます。精霊様、彷徨える魂に再び宿り木を!……『ソウル・リバイブ』!!」


祈りを込めた呪文を唱えるが、棺桶は沈黙したままだ。成功率は絶望的に低い。


「……っ、まだ、諦めません……!」


フィリアは何度か呪文を唱えるが、MPが無くなるとすぐに立ち上がり、青白く光る回復ポイントへと走った。光に包まれ、一瞬でMPを満たすと、再び棺桶の前へ戻って膝をつき、祈りを捧げる…


その間も、シンジは魔物を抹殺しながら、二つ目、そして三つ目の棺桶を命がけで運び続けていた。 フィリアが「回復ポイント」と「棺桶」を何度も往復し、汗を拭いながら必死に蘇生を試み続ける横で、シンジの連れてくる棺桶が一つ、また一つと増えていった…


洞窟に漂うスープの温かな匂いと、死の冷たさを湛えた棺桶。 そして、仲間のために、見知らぬ冒険者のために全力を尽くす二人の執念だった。


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