第4章:第85話:砦の聖域と揺れる癒やし
第4章:第85話:砦の聖域と揺れる癒やし
シンジを先頭に、四人は息を殺して砦の内部へと足を踏み入れた。 外の荒々しい作りとは打って変わり、内部は巨大な岩を丁寧にくくり抜いたような構造になっていた。
「……っ、あそこ、見て」
フィリアが指差した先。洞窟の奥に少し開けた場所があり、そこだけが幻想的に、明るく青白く光り輝いていた。 だが、四人が驚いたのはその光だけではない。その光の傍らに、およそこの場には不釣り合いな、一人の老神父が静かに佇んでいたのだ。
「……えっ、人? なんでこんな所に……」
シンジたちが思わず駆け寄ると、神父は穏やかな顔で振り返り、至極当然といった風に声をかけてきた。
「おやおや、なんのご用ですかな?」
「ど、どうしてこんな所にいるんですか!? 魔物の砦ですよ、ここ!」
シンジが驚愕して問い詰めると、神父は困ったように微笑んだ。
「いやはや……。橋を渡っていた時に魔物に捕まりましてな。ここで神父としての務めを果たせ、と言われまして。……して、なんのご用ですかな?」
あまりに世俗離れした神父の態度に、シンジが考え込んでいた、その時だった。
「……ふあぁぁ……っ、この光、とっても……温かいです……」
横でセシリアが、吸い寄せられるように青白い光へと手を伸ばしていた。
「おい、セシリア! 危ないぞ!」
シンジが慌てて制止しようとしたが、セシリアの身体は眩い光に包み込まれた。
光が収まると、そこには頬を上気させたセシリアが立っていた。彼女は自分の身体を抱きしめるようにして、恥ずかしそうに視線を泳がせながら、その豊かな胸をたゆんと揺らして言った。
「……や、やっぱり……か、回復ポイント……ですよ。……えへへ、MPも、すっかり元通り……回復しましたっ」
その言葉を聞いて、シンジ、ミーシャ、フィリアも次々と光に触れた。全身に漲るエネルギー。HPとMPが完全に全回復した。
「……まぁ、メタ的なことを言ってもしょうがないか」
シンジは心の中で自分を納得させると、一応神父にも話しかけ、四人で深々とお祈りを捧げた。
「よし、もう一回作戦を徹底するぞ。俺とミーシャとフィリアは、ボス戦までなるべくMPを温存する。セシリアは、皆のHP回復を優先。いいな?」
三人が力強く頷くのを確認すると、シンジは砦の奥を見据えた。
「一旦ここで腰を据えよう。三人は、ここで夕飯の支度を頼む。俺はその間に、砦内を偵察してくるよ」
「わかったわ、シンジ。気をつけてね」
ミーシャの返事を聞き、シンジは気配を殺して奥へと消えていった。
残された三人と神父は、焚き火を囲んで晩御飯の準備を始めた。
「……あの、神父さん。お水はどちらに?」
フィリアが尋ねると、神父は「こっちじゃよ」と、岩の隙間から湧き出す清らかな水汲み場を教えてくれた。
魔物の砦のど真ん中とは思えない、どこか奇妙で、けれど穏やかな時間が流れ始めた。




