表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/113

第4章:第83話:レガリアの大河と巨大な橋

第4章:第83話:レガリアの大河と巨大な橋


巨大な石造りの橋。一歩足を踏み出すと、足元から伝わる重厚な石の感触と共に、視界いっぱいに広がる水の輝きが四人を迎えた。


「に、しても……川幅が半端ないな」


シンジは足を止め、対岸の方を眺めながら思わず声を漏らした。


(これ、向こう岸まで1km以上あるんじゃないか……? 橋というより、海の上を歩いているみたいだ)


その驚きに、隣を歩くミーシャが誇らしげに、けれど警戒を解かずに口を開いた。


「驚くのも無理ないわ。ここはレガリア王国で一番大きな川なのよ。王国の南部大陸を東西に横切るように流れている、母なる大河……」


彼女は右手を上げ、遥か彼方にそびえる山々を指差した。


「右手に見えるでしょう? あの東の連峰から雪解け水が流れ込んできてるのよ。だから、南部から首都を目指すなら、この川を渡るか、険しい山を越えるしかない。まさにここは生命線なの」


シンジは感心したように、足元の橋を軽く踏みしめた。


「……で、この橋も凄いな。これだけの川幅に、こんなに強固に石を組み上げるなんて。一体誰がどうやって作ったんだ?」


ミーシャも少し不思議そうな顔をして首を傾げた。


「そうなのよね……。実は誰がいつ、どうやって作ったのかは分かってないのよ。ただ、記録にも残らないくらい大昔からここにあるらしくて……」


すると、足元の石畳をじっと見つめていたフィリアが、思い出したように口を開いた。


「……たしか、お母さんが言っていたわ。自分が小さい頃に、この橋を造る手伝いをしたって。エルフとドワーフが協力して造り上げたんだって、そう聞いた気がする」


「フィリアのお母さん……シルフィアさんが?」


驚く一同をよそに、フィリアは地面に這いつくばるようにして、石の表面を指でなぞった。


「ほら、ここを見て。多分、造った人の名前が彫ってあるわ。……これ、古代エルフ語ね」


フィリアは一つ一つの文字を解読していくが、ある一点でピタリと指を止め、その顔を一気に林檎のように真っ赤に染めた。


「……っ!? ……うそ……信じられない……」


「どうしたの、フィリア? 何て書いてあるんだ?」


シンジが覗き込むと、そこには力強い筆致で、現代のエルフ語とは一線を画す荒々しい文字列が刻まれていた。


フィリアは震える声で、消え入りそうなほど小さな声で読み上げた。


「……『エフル族シルフィア参上! 夜露死苦』……って、書いてあるわ。お母さん、昔、何してたのよ……っ!」


清楚な司祭である母の、あまりにも「やんちゃ」すぎる過去の遺物。 フィリアが頭を抱えて赤面したその直後、橋を囲む空気が一変した。


「……っ、みんな! 来るわよ!」


ミーシャが叫び、棘の鞭をしならせる。


川面が激しく波立ち、そこから水飛沫と共に数体のアクア・リザードが飛び出してきた。同時に、上空からは鋭い鳴き声と共に、翼を持つ魔物ストーム・ホークが急降下してくる。


「フィリア、上を頼む! ミーシャ、足元を!」


シンジが影縫いの短剣を抜き放ち、前衛に躍り出た。


「精密射撃……っ!」


フィリアは赤面を振り払い、エルフの弓をキリリと引き絞る。放たれた矢はストーム・ホークの翼を正確に射抜き、墜落させる。そこへシンジが飛び込んだ。


「食らえ……ウイングブロウ!」


風の魔力を纏った短剣が、空中の魔物に倍加した威力を叩き込む。


一方、橋の上に這い上がってきたリザードたちには、ミーシャの棍が唸りを上げた。


「石つぶて!」


バラ撒かれた礫が魔物の勢いを削ぎ、そこへセシリアの魔法が飛ぶ。


「風よ、吹き荒れなさい!」


僧侶の杖から放たれた風魔法が、怯んだリザードたちをまとめて川へと突き落とした。


数分後。橋の上には静寂が戻り、消滅していく魔物の残滓だけが漂っていた。


「……ふぅ。今のは雑魚だったみたいだけど、結構数はいたわね」


ミーシャが棍の汚れを払いながら、シンジたちを見た。


「ああ。でも、みんなの動きは悪くない」


シンジは自分の手を見つめ、短剣の重さを確かめる。


「影縫いの効果も出てる。それに、フィリアの援護があれば、空からの奇襲も怖くないな」


「ええ……。でも、今の戦い、なんだか追い払ったっていうより『試された』ような気がしませんか?」


セシリアが不安げに周囲を見渡す。


「そうね……。ボスの赤いトロルは、この先にいる。今の連中は、ただの門番に過ぎないわ。……でも、私たちの連携なら、いける。そう確信したわ」


ミーシャの力強い言葉に、シンジは対岸へと続く長い石道を睨みつけた。


「……ああ。本番はこれからだ。行こう!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ