第4章:第79話:賑わいのサカデウス
第4章:第79話:賑わいのサカデウス
活気に満ちたサカデウスの街並みを、ミーシャが操る馬車がゆっくりと進んでいく。 軒を連ねる色鮮やかな看板や、多種多様な種族が行き交う賑やかな光景に、4人は圧倒されながらも、今夜の拠点となる宿屋の近くに馬車を停めた。
「よし、到着! ここからは二手に分かれて動きましょう」
ミーシャがキビキビとした口調で指示を飛ばす。
「私は商業ギルドに行って、これからの手続きと情報の整理をしてくるわ。フィリア、貴女は宿屋のチェックインをお願い。人数分の部屋の確保と、馬車の預かり場所の確認も忘れないでね」
「わかったわ、任せて」
フィリアは頷くと、足早に大きな暖簾の掛かった宿屋の中へと入っていった。
「シンジ、アンタはセシリアと一緒に馬車の後片付けをしておいて。いい?」
「ああ、了解した」
シンジは馬車の荷台から飛び降りると、愛馬シンボリルドルフの繋ぎを解き始めた。 隣に立つセシリアは、リーベル以上の人混みと、街中に溢れる騒がしい熱気に圧倒されたのか、シスター服の裾をぎゅっと握りしめてオドオドと周囲を伺っている。
「……セシリアさん、大丈夫か? 人が多いからな、迷子にならないように気をつけて」
「……はい、シンジさん。すみません、少し……この街の勢いに飲まれてしまって」
不安げな彼女を気遣いながら、シンジは手慣れた様子でルドルフを馬車から外し、近くの繋ぎ場へと誘導する。
「よしよし、ルドルフ。お前も今日は頑張ったな」
シンジが新しいカイバを桶いっぱいに与えると、ルドルフは満足げに鼻を鳴らした。
馬の世話を終え、荷物の整理をしながら待つことしばし。 宿屋へ向かっていたフィリアが、少し複雑そうな表情で戻ってきた。
「シンジ、セシリアさん。宿の確保、できたわ。……ただ、その」
「何かあったのか?」
シンジの問いに、フィリアは少し頬を染めて答える。
「この街、想像以上に混んでいて……空いているのが、4人部屋の相部屋一つしかなかったの。だから、今夜は4人全員、同じ部屋で過ごすことになるわ」
「えっ、4人で……同じお部屋に、ですか……?」
セシリアが驚き、顔を赤くして狼狽する。シンジも一瞬言葉に詰まったが、努めて冷静に頷いた。
「まあ、今の俺たちのチームワークなら問題ないだろ。変な宿に分かれるよりは安心だしな」
そこへ、商業ギルドでの手続きを終えたミーシャが颯爽と合流した。
「みんな、お待たせ! ……あら、何よその微妙な空気。まあいいわ、詳しい話はご飯を食べながらにしましょう。お腹ペコペコよ!」
ミーシャの音頭で、一行は宿の一階にある賑やかな酒場へと向かった。 サカデウス特産の豪快な肉料理とエールがテーブルに並び、4人はようやく一息つく。だが、ミーシャの表情はどこか晴れない。
「……でね、さっき商業ギルドでいろいろと情報を仕入れてきたんだけど」
ミーシャがエールを一口飲み、声を潜めて話し始めた。
「サカデウスの街、表向きは賑やかだけど……実はちょっと困ったことが起きているみたいなの」
彼女の真剣な眼差しに、シンジたちは食べる手を止め、その言葉の続きを待った。




