第4章:第75話:目覚めの一撃と三人の連携
第4章:第75話:目覚めの一撃と三人の連携
空中での凄まじい同志討ちを見て、セシリアはようやく荒い呼吸を整えた。その豊かな胸の激しい上下はまだ収まらないが、眼鏡の奥の瞳には冷静さが戻っている。
「……ま、まだ、魔法に掛かっていない群れがいますっ! 逃がしません……っ、吹き飛んでください!」
セシリアは杖を掲げ、幻惑から逃れた残りの魔物たちへ狙いを定めて、鋭い風の渦を放つ。風の刃が鳥の羽を毟り、群れの突撃を食い止める。
その隙に、フィリアは弾かれたように馬車の荷台へと飛び込んだ。
(どこ……っ、どこにあるの!? 確か薬草の袋の中に、気付けの葉があったはず……!)
必死に荷物をかき分けるフィリアだったが、ふと前方、御者台の近くに目をやって息を呑んだ。 そこでは眠りこけているシンジの体に、数羽の魔物が取り憑いていた。鳥たちは獲物を見つけたかのように、その鋭い嘴で、シンジの顔や首筋を執拗に突き回している。
「シンジ……! やめて、彼から離れてっ!!」
焦燥感で指先が震える。ようやく指先に触れた、鼻を突くような刺激臭のする「眠り覚ましの葉」を掴み出すと、彼女は真っ先に近くで倒れているミーシャの元へ駆け寄った。
「ミーシャさん、起きて! お願いっ!」
フィリアは躊躇うことなく、その超刺激的な葉をミーシャの口の中へ力任せにねじ込んだ。
「…………っ!!」
数秒の静止の後、ミーシャの身体がバネのように跳ね上がった。
「いやあああぁぁぁーーーっ!! なに!? 辛っ! 痛っ! 鼻が、鼻がもげるーーーっ!!」
涙目で絶叫しながら飛び起きたミーシャは、悶絶しながらも瞬時に状況を把握した。シンジを啄む鳥たち、奮闘するフィリアとセシリア。彼女の瞳に、武闘家としての鋭い光が戻る。
「……よくもやってくれたわね、この焼き鳥どもがっ! はぁぁぁっ!」
ミーシャが鋭い踏み込みと共に、両手を薙ぎ払う。彼女の放つ「かまいたち」の真空波が、セシリアの風魔法と共鳴するようにして街道を駆け抜けた。
「今よ、セシリアさん! フィリア!」
「はいっ!」 「……ええ、これで終わりよ!」
セシリアの追い打ちの風、ミーシャの真空波、そしてフィリアが放った三連の矢が、逃げ惑う鳥の群れを次々と撃ち落としていく。 最後の一羽が石畳に転がった時、街道には静寂と、大量の羽根だけが残されていた。




