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第4章:第70話:最後の晩餐と、禁断の味

第4章:第70話:最後の晩餐と、禁断の味


馬車の改修を終え、村の市場で買い込んだ色鮮やかな名産の果物を荷台の隙間に詰め込むと、ようやく旅の準備はすべて整った。 シンジ、ミーシャ、フィリアの3人は、井戸水で泥や油汚れをさっぱりと洗い流し、神父の案内で教会の奥にある居住スペースへと足を踏み入れた。


「さあ、どうぞ。ちょうど準備が整ったところです」


リビングに入った瞬間、3人の足が止まった。 木のテーブルの上には、決して豪華な宮廷料理ではないが、湯気を立てる肉厚のシチュー、香ばしく焼けた川魚、そしてハーブの香りが食欲をそそる温野菜など、驚くほど手の込んだ料理が所狭しと並んでいたのだ。


「どうぞ、お座りください。……セシリア、お前も早くおいで」


神父がキッチンの奥に向かって声をかける。 すると、大きな丸メガネをかけたシスター姿にエプロンをつけたセシリアが、少し慌てた様子で手を拭きながら姿を現した。


「は、はい、お父さん……っ」


彼女はシンジたちと視線が合うのを避けるように、恥ずかしそうにエプロンを脱いで脇に置くと、所在なさげに自分の席に着いた。


(……ひえっ。男の人と……こんな近くで、一緒にご飯を食べるなんて……っ)


セシリアが密かに指先を震わせる中、神父が手を組み、穏やかに目を閉じる。


「それでは、神の恵みに感謝して……さあ、どうぞお食べ下さ……」


「「「いただきまーす!!」」」


神父の言葉が最後まで終わる前に、3人の手が同時に動いた。 まずは腹が減っていたから、というのもあった。だが、それ以上に、目の前の料理が放つ芳醇な香りに抗えなかったのだ。


「……っ、う、うまい!! なんだこれ、最高だ!」 「美味しい……! 味付けがすごく繊細で、体が温まるわ……」 「お、お兄さん! このシチュー、野菜の甘みがすごいです!」


シンジはピンク色の鎧を揺らしながら、大きなスプーンでシチューを口へ運び、パンで皿を拭うようにして次々と料理を平らげていく。ミーシャもフィリアも、普段の淑やかさを忘れたかのように、夢中でフォークを動かしていた。


「……お、美味しいですか?」 セシリアが、蚊の鳴くような声で尋ねる。


「ああ、めちゃくちゃ美味いよ! セシリアさん、あんた天才だな!」


シンジが口の周りにソースをつけたまま、満面の笑みで親指を立てた。 その、太陽のように明るく、それでいて飢えた獣のような力強い食べっぷり。


それを見た瞬間、セシリアの丸メガネの奥の瞳が、怪しく、そして熱く潤んだ。


(……ああ。あんなに大きな口で、私の作ったものを……。あんなに激しく、飲み込んで……っ。あんなに情熱的に、一滴も残さず……)


シンジが豪快に肉を噛みちぎる姿を見て、彼女の脳内では不謹慎極まりない変換が瞬時に行われる。


(……あああ、もう……っ。私も、私もあんなふうに……。あの人の喉の奥へ、あんなに乱暴に……食べられたい……っ!!)


「ひ、ひえぇっ……!」 突然、セシリアが顔を真っ赤にして自分の肩を抱き、ガタガタと椅子を鳴らして震え出した。


「どうした、セシリア? どこか具合でも悪いのか?」 心配する神父の問いも、今の彼女には届かない。


(あんなピンクの鎧を着るような男の人に……全部食べ尽くされて、骨まで……あああぁっ! じゅわっ!)


シンジはそんな彼女の様子に一瞬首を傾げたが、すぐに「……まあ、いいか。美味いし」と、再び残りの肉料理に襲いかかった。 静かな教会の夜に、食器のぶつかる音と、一人のシスターの荒い鼻息だけが響いていた。


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