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第4章:第67話:復活の食欲と新たな約束

第4章:第67話:復活の食欲と新たな約束


…暗闇の中を漂っていた。


目の前に立ち上る、まばゆいばかりの光の渦…


(……オーラロードか、それともサイコフレームの輝きか?)

そんな、前世の記憶をなぞるような場違いな思考が頭をよぎる。光に飲み込まれ、意識が急激に現実へと引き戻された。


「……ん、っ……」


重い瞼を押し上げる。 まず目に入ったのは、疲労困憊といった様子で肩で息をする神父の姿。そして、視界を塞ぐように、涙を流しながら叫ぶ少女の姿だった。


「シンジさん……っ、シンジさん! 良かった、良かったよぉぉ……!」


半泣きで抱きついてくるフィリア。棺桶の中にいた時の、あの冷たい哀愁を知っている彼女は、その温もりに縋るように泣きじゃくった。


シンジはゆっくりと体を起こした。以前あったはずの脇腹の激痛も、骨が砕ける軋みもまったくない。神父の奇跡によって、体は完璧に修復されていた。 だが、その傍らに置かれた皮の鎧は、あの『黒い巨人』の一撃によってズタズタに裂かれ、修理不能なほど無残な残骸と化していた。


シンジは周囲を見回し、ここが教会の祭壇であることを理解した。 すべてを悟った彼は、傍らで一人、複雑な表情で腕を組んでいるミーシャを見上げる。


「……どうしたんだよ、ミーシャ。そんなに困った顔して」


シンジの問いかけに、ミーシャは答えず、ただ深く長い溜息をついて視線を逸らした。その瞳には、安堵だけでは片付けられない複雑な影が落ちている。


それから、少しの時間が流れた。 神父は役目を終えた安堵感からか近くの椅子に座り込み、お茶をすすっている。フィリアはシンジの無事を何度も確かめるように、その手を握り続けていた。シンジはズタズタに裂けた皮の鎧を脱ぎ捨て、教会の奥から借りた清潔な服へと着替えた。


教会の奥にある古びた木製のテーブルには、湯気を立てる素朴なスープと焼きたてのパンが並び、4人は遅い昼食を囲んでいた。


そこで、ミーシャは端的にこれまでの経緯を説明した。 シンジの蘇生費用110ゴールドの代わりに、神父の個人的な願いを渋々ながら聞き入れたこと。そしてその内容は、首都マルシェリアにある「レオーナの酒場」まで、神父の娘を送り届けるというものだった。


「……というわけなの。勝手に決めちゃって悪かったけど、あの状況じゃああするしかなかったわ。あなたの命には代えられないもの」


ミーシャが少し申し訳なさそうに説明を終える。 だが、当のシンジはそんな彼女の様子などどこ吹く風で、空腹に突き動かされるまま、猛烈な勢いでパンをスープに浸しては口へ放り込んでいた。


「(モグモグ、ハフッ)……ムグッ、……(ゴクンッ)」


シンジは、口いっぱいにパンを詰め込んだまま、咀嚼する音を響かせながら顔を上げた。


「(モグモグ)……っん、分かったよ。その神父さんの娘を(ムグッ)、首都のマルシェリアまで連れて行けばいいんだろ?」


頬を膨らませ、パンを飲み込みきれないまま喋るシンジ。 その、死んでいたとは思えないほどの旺盛な食欲と、あまりにも軽い確認に、神父は震える手でお茶の器を置き、フィリアは驚きつつも希望に満ちた目でシンジを見つめた。


「ええ、そうよ。……本当にいいの?」


呆れを通り越して感心するミーシャに、シンジは喉に詰まりかけたパンをスープで流し込み、事もなげに言い返した。


「何言ってんだよ。元々、俺たちの目的地も首都マルシェリアだろ。ついでに送り届けるだけだろ? 何の問題もないじゃないか」


「……はぁ。そうね、理屈ではそうなんだけどさ……」


シンジのあまりに実利的な回答に、ミーシャは再び小さな溜息をついた。彼女の「困り顔」の本当の理由は、どうやらシンジにはまだ伝わりそうになかった。

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