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第4章:第65話:再会の女神と、七回裏の攻防

第4章:第65話:再会の女神と、七回裏の攻防


シンジが目を覚ました時、そこは上下も左右もない、どこまでも透き通った純白の空間だった。


かつて、佐藤真司がトラックに跳ねられ、異世界へ転生する直前に訪れた場所。 そして目の前には、現実のどんなモデルも足元に及ばないほど、神々しい美しさを湛えた女神がいる――はずだった。


「……あー、もう! ここで村上かぁ……大丈夫かなぁ?」


そこには、神々しさのかけらもない光景が広がっていた。 深い青色の髪を無造作にタオルで巻き、パジャマ姿でコタツに入ってカップアイスを舐めながら、宙に浮いた大型モニターのWBCワールド・ベースボール・クラシックに釘付けになっている女神の姿が。


シンジは、ごく自然にその横へしゃがみ込んだ。


「……どっちが勝ってるの?」 「今、日本が負けてるのよ……」 「何回?」 「七回裏よ。……って、ちょっと! フォアボールで満塁じゃない! 胃が痛いわぁ……」


女神はシンジの方を向き、同意を求めるように視線を送った。 そして、一瞬の間。


「……ええっー! ちょ、ちょっと待って! なんであんたがここにいるのよ!!」


女神の絶叫が純白の空間に響き渡る。 自分がタオル頭のコタツスタイルであることを思い出した彼女は、顔を真っ赤にしてパニックに陥った。


「あわわわ! 見たわね!? 今の完璧にオフだった私を見たわね!?」


だが、彼女の『取り繕い』は驚異的な速さだった。 女神が左手を上げ、まるで本のページを捲るように空を切る。


一瞬にして景色が塗り替えられた。 コタツもテレビもアイスも消え去り、そこは無機質な『市役所の受付カウンター』のような場所へと変貌した。 同時に、彼女の格好もパジャマ姿ではなく、タイトなスーツに身を包んだ、仕事の出来そうなオフィスレディ風に変わっている。


女神は、鼻眼鏡をくいっと指先で押し上げた。


「……で、なに?」


「(……いや、なに? じゃないだろ!!)」


シンジの喉元まで出かかったツッコミを無視し、女神は冷徹な受付嬢のフリを決め込むのだった。

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