第1章:第6話:共鳴する魂と、始まりの旋律
第1章:第6話:共鳴する魂と、始まりの旋律
「ギギィッ……ギギィッ!」
スライムを一体仕留めたものの、仲間を消されたゴブリンが激昂し、粗末な棍棒を狂ったように振り回す。
真司は防戦一方だった…
借り物の木の盾はすでに表面がボロボロと削れ、衝撃を受け止めるたびに左腕の感覚が麻痺していく。
(……強い。ゲームの序盤の敵だろって、どこかで舐めてた……。これ、一撃でもまともに喰らったら……本当に死ぬ!)
必死に距離を保とうと一歩後退りした拍子に、街道の窪みに足を取られた。
「しまっ……!」
バランスを崩す真司。ゴブリンはその隙を見逃さず、醜悪な笑みを浮かべて棍棒を頭上高くに振り上げた。
「――そこまでよ! 『石飛礫』!」
鋭い声と共に、ミーシャの投げ放った小石が、吸い込まれるようにゴブリンの眉間を射抜いた。
「ギャッ!?」
のけぞるゴブリン。そのわずかな隙を、ミーシャは見逃さなかった。
「シンジ、今よ! 喉元を突き抜いて!!」
ミーシャの鋭い援護、そして迷いを断ち切る的確な指示。 恐怖で凍りつきかけていた真司の思考が、その声に弾かれた。
(……今だっ!!)
女神に与えられた若々しい身体が、バネのように弾ける。
真司は無我夢中で、鉄の剣をゴブリンの胸元へと突き出した。
グシャリ。
剣を通じて伝わる、生々しく、重い抵抗感。 ゴブリンは短く悲鳴を上げると、力なく崩れ落ち、やがて黒い霧のように空気中へ霧散していった。
地面には、小さな金貨が数枚、チャリンと音を立てて残される。
「はぁ、……はぁ、……はぁ……っ!!」
膝をつき、激しく肩で息をする真司。 手の震えが止まらない。生き残った。俺は、本当に戦って……自分の手で未来を掴んだんだ。
その時だった。
――パラパパッパッパー!!
どこからともなく、脳内に直接響くような、軽やかで厳かな「音」が鳴り響いた。
それは空耳などではない。全身の細胞が急激に沸き立ち、筋肉の疲労が心地よい熱に溶けて消えていくような、全能感に満ちた感覚。
「……? なんだ……今のは。急に身体が……」
「ふふっ、おめでとうシンジ! 初めての『階位上昇』ね」
いつの間にか駆け寄っていたミーシャが、真司の背中をバシッと力強く叩いた。
「身体が軽くなったでしょ? それがこの世界で生き抜くってことよ。……あんた、最後の一撃はなかなか勇ましかったわよ?」
真司は自分の掌を見つめる。 確かに、先ほどよりも視界が明るく、指先の感覚が研ぎ澄まされているのが分かる。
レベル2。
かつての世界で、どれだけ身を削って働いても更新されることのなかった自分の「価値」が、この世界でははっきりと、魂の音を立てて更新されたのだ。
「……レベル、アップ……。俺、……強くなれるのか。この世界なら」
夕陽に照らされた真司の瞳に、初めて小さな、けれど決して消えない「希望」という名の火が灯った。
*【ステータス:シンジ】
名前:シンジ(本名:佐藤 真司/転生者)
職業:旅人Lv2
【装備品】
武器:鉄の剣
防具・盾:木の盾、胴体:皮のよろい、頭:無し
アクセサリー:無し
【スキル】無し
【持ち物】無し




