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幕間:第54.1話:シンジの再出発(リーベルにて)

幕間:第54.1話:シンジの再出発リーベルにて


かつてミーシャと出会った、地方都市リーベル。 街道を行き交う馬車の音と、市場の喧騒。ムサカ村の静寂とは対照的なその活気が、これからの旅の始まりを予感させていた。


シンジは宿の部屋で、一人静かに旅の支度を整えていた。 ベッドの上に並べた装備品を、一つひとつ手に取って確認していく。


(……これだけで、よくここまで来れたもんだな)


転生前、34歳の「佐藤真司」だった頃の自分を思い出す。 人付き合いが苦手で、目立たないように、波風を立てないように生きてきた。あのまま、何者にもなれずに終わるはずだった人生。それがどうだ。今、俺の手には、かつて画面の中でしか見たことのなかった本物の「盾」や「鎧」がある。


使い込まれて少し傷のついた『皮の帽子』。 幾度も窮地を守ってくれた『皮の鎧』。 そして、左手には無骨な『木の盾』。


防御力としては決して高くはない。けれど、この装備の重みは、この世界で泥臭く生き延びてきた証そのものだった。


シンジは腰のベルトに、このリーベルで新調したばかりの武器を差し込んだ。 『影縫いの短剣』。 それまでの『盗賊の短剣』よりも一回り重く、刃は鈍く黒光りしている。攻撃力がわずかに上がっただけでなく、急所を突けば相手の動きを封じることもあるという、搦め手を好む盗賊にはうってつけの武器だ。


そして、服の襟元から覗く銀色の鎖をそっと指でなぞる。 フィリアの姉、リリアーヌから託された首飾り――『エルフの守り』。 守備力を底上げしてくれるだけでなく、状態異常から身を守ってくれるこの首飾りは、あの隠れ里で彼らを信じてくれたエルフたちの想いが詰まっている。


今の自分の状態を、頭の中で反芻してみる。


【シンジ】 職業:盗賊Lv.11、装備:影縫いの短剣、木の盾、皮の帽子、皮の鎧、エルフの守り 習得スキル:


『索敵』:周囲の気配を敏感に察知する。

『鍵開け』:閉ざされた扉や宝箱を解除する。

『不意打ち』:気づかれていない状態からの攻撃で大ダメージを与える。

(レベル11……。あっちの世界じゃ、ただの数字に見えたかもしれない。でも、この世界でのレベル1は、俺が必死に積み上げてきた経験値の塊だ)


最初の頃は、魔物一匹に震えていた。 けれど今は、背中を預けられる仲間がいる。ミーシャがいて、フィリアがいる。 自分一人が生き残るためじゃなく、彼女たちと一緒に目的地にたどり着くために、俺はこのスキルを磨き、この短剣を振るうんだ。


鏡に映る自分を見る。 34歳の記憶を持ったまま、20代前半の若々しい肉体を得た今の自分。 かつての自分なら、未知の王都なんて面倒で避けて通っただろう。けれど今は、その未知の景色をこの目で見たいと、心の底から思っている。


「……よし。行こうか」


シンジは影縫いの短剣の柄を一度だけ強く握ると、二人の待つ広場へと向かうべく、部屋の扉を開けた。

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