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第3章:第51話:夜明けの誓い、新たなる旅路

第3章:第51話:夜明けの誓い、新たなる旅路


その日の夜、真司たちはフィリアの屋敷に招かれ、エルフの里ならではの贅沢なもてなしを受けた。 テーブルには色鮮やかな森の果実、芳醇な香りの木の実、そして里特製の強い果実酒が並び、賑やかな宴が始まった。


「さあ、飲みなさい! 人間の街のお酒には負けないわよ!」 シルフィアが豪快に笑いながら真司の杯を満たし、リリアーヌもまた、ミーシャと競うように杯を重ねる。 「……エルフって、もっと静かに食事するイメージだったんだけどな」 苦笑いする真司だったが、里の者たちと語り合い、笑い合う時間は、これまでの緊張を解きほぐす最高の薬となった。


宴もたけなわの頃、リリアーヌがふらりとフィリアの横へ移動した。 「……フィリア」 「あ、お姉ちゃん」 リリアーヌは妹の少し大人びた横顔をじっと見つめると、乱暴に、けれど慈しむようにその頭を撫でた。


「いい面構えになったわね。……これを、あんたに預けるわ」 差し出されたのは、素朴ながらも丁寧に手入れされた一振りの短剣だった。 「これ、お姉ちゃんが大事にしてた……」 「私には外の世界なんて興味ないけど……あんたは、存分に楽しんで来なさいな」


さらにリリアーヌは、柔らかな革紐に通された三つの不思議な小石のアクセサリーを取り出した。 「それと、これ。……『エルフの守り』よ。あんたたちの分も用意したわ。……その男と女にも、後で渡しなさい」


夜が更け、フィリアはリリアーヌから託された『エルフの守り』を真司とミーシャに手渡した。 「……お姉ちゃんから。私たち三人の、お守りだって」 「へぇ、綺麗だな……。ありがたく使わせてもらうよ」 真司は首にかけ、ミーシャも嬉しそうに胸元に飾った。フィリアも自分の首元にそれを寄せ、三人は顔を見合わせて微笑んだ。お揃いの守りが、暗い部屋の中で静かに光を放っている。


フィリアが自室で横になろうとした時、扉が静かに開いた。 入ってきたのはシルフィアだった。彼女はベッドの端に腰を下ろし、娘の柔らかな髪を優しく梳く。


「……本当に、あなたは私に似ているのかしらね。……いいえ、私以上に頑固で、真っ直ぐだわ」 シルフィアは微笑み、一通の手紙をフィリアに手渡した。 「もし困ったことがあったら、これを私の古い知り合いに渡して。……どうせ行くなら、精一杯楽しんでいらっしゃい。あなたは、私の自慢の娘なんだから」


そして翌朝。 朝露に濡れる森の中、出発の準備を整えた三人は里の入り口に立っていた。 フィリアは真司とミーシャに向き直り、少し緊張した面持ちで口を開く。


「……ねえ。私を、二人の……本当の『仲間』にしてくれる?」


その言葉が終わる前に、ミーシャが叫んでフィリアに飛びついた。 「当たり前でしょ! もう、何言ってるのよ!」 真司も笑いながら、フィリアの整えられた髪をくしゃくしゃに撫で回す。 「何を今更。もうとっくに、俺たちの仲間だろう?」


「わ、わっ! やめてよシンジ、せっかく綺麗にしたのにーっ!」 怒ったふりをして笑うフィリア。三人の胸元には、朝日に輝く『エルフの守り』が誇らしげに揺れていた。


シルフィアとリリアーヌに見守られながら、三人は再び歩き出す。 目指すは、深い眠りに閉ざされたムサカ村。 彼らの手には、明日を切り拓く『目覚めの笛』が握られていた。

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