表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/113

第3章:第50話:母の贈り物

第3章:第50話:母の贈り物


「……ふぅーっ」


ひとしきりおどけて見せたシルフィアは、今度こそ深く、落ち着いた吐息を漏らした。 彼女は居住まいを正すと、穏やかな、だが真摯な瞳でフィリアを見つめる。


「……寂しいのは本当よ、フィリア。あなたはいつまでも私にとっては可愛い子供だもの。でも……私が本当に怒っていたのは、あなたが何も相談せず、黙って里を飛び出したこと。その一点だけよ」


「……お母さん……」


「里を出ることが、絶対に許されない罪だなんて……私は一度も言ったことはないわ。私も、人間の中に素晴らしい人がいることは知っているもの」


その言葉に、真司、ミーシャ、そしてフィリアまでもが「え?」と声を揃えて絶句した。


「……ちょ、ちょっと待ってください。里の掟では、人間は邪悪で、外の世界は魔窟のような場所だと教えられてきましたが……」


真司の困惑した問いに、シルフィアは少し困ったように微笑んだ。


「それは……あの子たちが勝手に外へ行って、危ない目に遭わないようにするための、ちょっとした『躾』のようなものよ。幼い子供に『外は怖い場所よ』と言い聞かせるのは、どの種族も同じでしょう?」


あまりにも現実的な理由に、三人は肩の力が抜けるのを感じた。


「フィリア。あなたは外の世界に興味があり、冒険がしたいのね? ……そして、この人間さんたちと一緒に、眠れる人々を救いたい。その決意は本物かしら?」


「……うん! 私は、シンジたちと一緒に行きたい!」


フィリアの真っ直ぐな返答に、シルフィアは満足げに頷くと、部屋の奥へと消えた。 やがて彼女が抱えて戻ってきたのは、古びているが手入れの行き届いた、美しい武具の数々だった。


「なら、分かったわ。……これは、私たちの里で古くから使われている一般的な装備よ。これをフィリアに授けます」


差し出されたのは、驚くほど軽量で丈夫な**『エルフの鎧』と、小柄なフィリアでも扱いやすく、吸い付くように手に馴染む『エルフの弓』**。


「それから、これがあなたの求めていたもの……」


シルフィアは最後に、透き通るような美しい輝きを放つ小さな笛を取り出し、大切そうにフィリアの手へと預けた。


「……**『目覚めの笛』**よ。これで、あなたの友人たちの村に、朝を届けてあげなさい」


手渡された笛の重みに、フィリアは強く、強く頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ