表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/121

第2章:第42話:繋がれた体温、夜明けの誓い

第2章:第42話:繋がれた体温、夜明けの誓い


焚き火の爆ぜる音が、フィリアの切実な告白の余韻を優しく包み込んでいく。 夜の冷気が岩棚を撫でる中、三人の間にあるのは、もう言葉による説明を必要としないほどの濃密な信頼だった。


「……里の掟なんて、私たちには関係ないわ。フィリアちゃんが守りたいものを、一緒に守るって決めたんだもの。……ね、シンジ?」


ミーシャが力強く、一点の曇りもない声で言い切った。その言葉に、真司は少し照れくさそうに視線を泳がせた後、焚き火を見つめたまま静かに口を開いた。


「ああ。……今さら、一人で行かせるなんて選択肢、俺の中にはないよ。俺たちはずっと二人で旅をしてきたけど、お前が加わってくれた今のこの空気が、俺は……すごく気に入ってるんだ」


一瞬、言葉を切り、真司は自分の手のひらを見つめた。 「……俺、元々あんまり人付き合いが得意な方じゃなくてさ。どこにいても、ずっと一人でいるのが当たり前だと思ってたんだ。だから、最初にミーシャに会って、一緒に旅をすることになって……。そこにさらにお前が加わって、こうして飯を食って背中を預けてるのが、なんていうか……人生で初めて『仲間』ってものができた実感が湧いてるんだよ」


34年間の孤独な記憶を「昔からの性格」として濁しながらも、その言葉には嘘偽りのない実感がこもっていた。 「レベルも10まで上がったし、エルフの守護者相手でも、必死に食い下がれば道は開けるはずだ。だから、その……。心配すんな。俺たちが、お前を一人になんてさせないから」


かつての彼なら、自分の安全だけを考えて逃げ出していただろう。けれど、ミーシャという最高の相棒に支えられ、フィリアという守るべき仲間を得たことで、彼の臆病な殻は、内側から熱く突き破られていた。


その不器用で、けれど魂がこもった温かい言葉に、フィリアの瞳が大きく揺れ、やがて溜め込んでいた感情が一筋の涙となって頬を伝い落ちた。


「……ありがとうございます。……本当に、ありがとうございます……っ」


やがて夜も更け、三人は寄り添うように横たわった。 真ん中にフィリアを挟み、両脇を固めるように真司とミーシャが陣取る。けれど、フィリアの眉間にはまだ、消し去れない不安の影が深く落ちていた。


暗闇の中でその微かな震えを察知したのは、常に周囲の気配を、そして何より仲間を大切に想ってきたミーシャだった。


(……まだ、震えてる。……怖いのは、当たり前よね……)


ミーシャはそっと毛布の中で、探るように手を伸ばした。そして、冷たくなって震えていたフィリアの小さな手を、自分の両手で包み込むようにギュッと握りしめる。


「……大丈夫よ、フィリアちゃん。……私たちが、ずっとそばにいるんだから。……ね?」


耳元で羽毛のように優しく囁かれたその言葉。フィリアの強張っていた身体が、雪解けのようにふっと解けていった。


「……はい、ミーシャさん。……おやすみなさい……」


繋がれた手の温もりを道標みちしるべにするように、フィリアは深い、安らかな眠りへと落ちていった。


それを見届けてから、ミーシャもまた、反対側に感じる真司の静かな寝息を……自分を「最初に会った相棒」として特別に扱い、今の時間を「気に入っている」と言ってくれた男の背中の広さを感じながら、静かに、そして満たされた気持ちで目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ