第2章:第39話:連峰の静寂、一歩の重み
第2章:第39話:連峰の静寂、一歩の重み
一つ目の山の頂。
そこには劇的な出会いも、恐ろしい山の主もいなかった。
ただ、吹き抜ける冷たい風が三人の火照った頬をなで、眼下には次なる試練である二つ目の山へと続く、牙のように険しい下り坂がどこまでも伸びているだけだった。
三人は言葉少なく、けれど確実にその険路を踏破していった。
切り立った岩場に指をかけ、膝まで浸かる泥にまみれ、茂みから放たれる魔物の執拗な奇襲を、声を掛け合いながら退けていく…
その単調でいて一瞬の油断も許されない過酷な繰り返しが、彼らの身体を、そして魂を、余分な脂肪を削ぎ落とすように少しずつ研ぎ澄ませていった。
二つ目の山の麓に差し掛かった頃、三人のステータスには確かな変化が刻まれていた。
【真司:盗賊レベル10】 【ミーシャ:商人レベル13】 【フィリア:狩人レベル8】
「……よし、今日はこの辺りで野営にしよう。無理をして夜の山を動くのは得策じゃない」
真司が重いバックパックを下ろし、慣れた手つきで焚き火の準備をしながら淡々と言った。その背中からは、昨夜よりも一回り大きな頼もしさが漂っている。
「本当ね……。でも、不思議と昨日ほど足が重くないわ。三人とも、レベルが上がったおかげかしら。身体のキレが、昨日までとは明らかに違う気がするの」
ミーシャが微笑みながら、水筒の水をフィリアに差し出す。フィリアはそれを両手で受け取り、乾いた喉を潤した。
「ありがとうございます、ミーシャさん。……はい。私も、自分でも驚くくらい、落ち着いて敵を狙えるようになりました。……シンジさんの剣の太刀筋や、ミーシャさんの鞭が描く軌道も、昨日よりずっとはっきり見えるんです。視界が、澄んでいるというか……」
フィリアは、泥のついた顔を袖で無造作に拭いながら、力強く頷いた。
かつての彼女なら、顔に泥がつくことさえ悲鳴を上げていたかもしれない。けれど今の彼女の瞳にあるのは、浮ついた恋心でも、劇的な運命への陶酔でもない。
ただ、共に歩き、共に戦い、共に強くなっていく。
一歩進むごとに重なる呼吸と、背中を預け合うことで生まれる信頼。
そこには、三人の「冒険者」としての、純粋で揺るぎない共鳴が静かに響いていた。
「……明日になれば、山はもっと険しくなる。しっかり食って、精霊さんにも今のうちに礼を言っておけよ」
真司のぶっきらぼうな言葉に、フィリアが「はいっ!」と短く、けれど弾むような声で答える。三人の影が、小さな篝火によって岩壁に大きく映し出されていた。
*【ステータス:シンジ】
名前:シンジ(本名:佐藤 真司/転生者)
職業:盗賊Lv10
【装備品】
武器:盗賊の短刀
防具・盾:木の盾、胴体:皮のよろい、頭:無し
アクセサリー:無し
【スキル】忍び足、フェイントステップ、気配察知、隠密、看破、シャドウストライク、
【持ち物】無し
*【ステータス:ミーシャ】
名前:ミーシャ(人間/女)
職業:商人Lv13、武闘家Lv24
【装備品】
武器:棘のムチ、短剣、棍
防具・盾:無し、胴体:皮のよろい、頭:商人の帽子
アクセサリー:無し
【スキル】
商人:探索、鑑定、交渉術、算術、石つぶて、力溜め
武闘家:飛び膝蹴り、かまいたち、正拳突き、必中拳、足払い、スウィープラッシュ、
【持ち物】薬草
*【ステータス:フィリア】
名前:フィリア(エルフ/女)
職業:狩人Lv8
【装備品】
武器:狩人の弓
防具・盾:無し、胴体:皮のよろい、頭:無し
アクセサリー・無し
【スキル】精霊魔法(追い風、氷結の矢、炎の矢)
【持ち物】




