第2章:第38話:峻険のこだま、重なる呼吸
第2章:第38話:峻険のこだま、重なる呼吸
朝日を背に受けて、三人は一つ目の山の急斜面へと足を踏み入れた。標高が上がるにつれ、空気は冷たく澄み渡り、現れる魔物たちもその鋭さを増していく。
「ギィィィッ!」
岩陰から飛び出してきたのは、硬い甲殻を持つ「ストーンリザード」の群れ。並の刃では弾かれる強敵だが、今の三人には迷いがない。
「フィリア、右の奴の足元を狙え! 動きを止めるんだ!」
「はい! ……『氷結の矢』!」
真司の鋭い指示に、フィリアが即座に応える。レベルが上がった彼女の放つ矢は、青白い冷気を纏ってリザードの関節を凍りつかせた。
「ナイス、フィリアちゃん! ……そこよ、はぁっ!」
動きが鈍った隙を逃さず、ミーシャの鞭がしなり、甲殻の隙間を的確に打ち抜く。トドメは真司の重い一撃。
「……ふぅ。今の連携、完璧だったわね!」
ミーシャが額の汗を拭い、快活に笑ってフィリアの肩を叩く。フィリアもまた、頬を紅潮させて嬉しそうに頷いた。
「はい! ミーシャさんの鞭が、私の矢の軌道をカバーしてくれているのが分かりました……。私、もっと皆さんの動きに合わせられるようになりたいです!」
実戦を重ねるごとに、三人の呼吸は一つの生き物のように重なり始めていた。真司の前衛としての安定感、ミーシャの柔軟なフォロー、そしてフィリアの多彩な援護。
けれど、連携が深まれば深まるほど、ふとした瞬間に視線が交差する。フィリアを頼もしげに見つめる真司。その横顔を見て、一瞬だけ瞳を伏せるミーシャ。澄んだ山の空気の中で、三人の絆は強固になりながらも、その質感を少しずつ変えていく……。




