第2章:第37話:朝霧の決意、揺れる境界線
第2章:第37話:朝霧の決意、揺れる境界線
薄紫色の夜明け前。ミーシャは、焚き火の残骸を挟んで少し離れたところで眠る真司とフィリアを、毛布にくるまったまま見つめていた。昨夜、胸をチリつかせたあの鋭い痛み。それは今も消えずに、澱のように底に溜まっている。
(……なんなの、これ。……どうして、二人が仲良くしているのを見ると、息が苦しくなるの……?)
ただ並んで眠っているだけ。それなのに、二人の間に漂う新しい空気感が、どうしても気になってしまう。考えれば考えるほど、迷路に迷い込む。答えが出ないまま、いつの間にか微睡みの中に落ちていった。
そして、朝日が差し込む頃。ミーシャはパチッと目を開けると、勢いよく立ち上がってパンを切り始めた。
「……もう、いいわ! 考えても分からないことは、考えないことに決めたわ!」
彼女は自分に言い聞かせるように、野菜を刻む手元に集中する。真司は、生死を共にしてきた、かけがえのない最高の「相棒」。フィリアは、自分が守ると決めた、助けてあげたい「友達」。
「そうよ、二人とも私にとって大切な人たちなんだから。変なこと考えるなんて、私らしくないわ!」
パンが焼ける香ばしい匂いが漂い始める。起きてきた二人に、ミーシャはいつも通りの、ひまわりのような明るい笑顔を向けた。
「おはよう、二人とも! 今日は山越えの正念場よ。しっかり食べて、気合入れるわよ!」
「……ああ、おはよう、ミーシャ。朝から元気だな」
まだ眠たげな目を擦りながら起き出した真司が、少し驚いたように応える。その笑顔の奥に、ほんの少しだけ残る「ズキリ」とした感覚。彼女はそれを心の奥底に押し込んで、明るい声を響かせた。




