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第2章:第36話:篝火と、芽生えた「切なさ」

第2章:第36話:篝火と、芽生えた「切なさ」


一つ目の山の麓、大きな岩の陰で三人は野営を始めた。 今日の戦いの中で、フィリアは確かな成長を遂げていた。人間で言えば百歳をゆうに超える年月を、里の「狩人」として過ごしてきた彼女だったが、その長い生涯で今日が初めての実戦だった。百二十年かけてようやく「レベル6」に達していた彼女の経験値は、この一日の死闘によって、ついに一線を越える。


【フィリア:狩人レベル6 → 7】


「フィリア、さっきの『追い風』をかけるタイミング、悪くなかったぞ。おかげで俺の踏み込みが一歩早くなった」


真司が焚き火で肉を焼きながら、無骨に、けれど確かな称賛を口にする。


「……本当ですか!? 私、必死で……でも、シンジさんの動きを見ていたら、今だ!って思える瞬間があって……。私、もっと役に立ちたいです!」


そう答えるフィリアの瞳は、炎を反射して宝石のようにキラキラと輝いている。里にいた頃の怯えた表情は消え、初めて「自分の居場所」を見つけようとする少女の、眩しいほどの前向きさが溢れていた。


「……あ、ああ……そうか。……なら、いいんだけどな」


真司がふい、と顔を背ける。けれど、その耳の付け根が赤く染まっているのを、隣にいたミーシャは見逃さなかった。……彼が、あんなふうに女の子を真っ直ぐに見つめられなくなるなんて。


(……あれ? なんだろう、この感じ……)


ミーシャの胸の中に、チリッとした小さな痛みが走る。 二人の会話に入れないわけじゃない。フィリアが成長して、前向きになってくれたのは心から嬉しいはずなのに。


(……胸が、苦しい……。喉の奥に、何か冷たい塊があるみたい。……私、どうしちゃったの……?)


ミーシャは、スープを口に運ぶフリをして視線を落とした。真司がフィリアに向ける眼差し。それが、今まで自分だけに向けられていた信頼とは少し違う、もっと「異性」を意識した熱を含んでいるように見えて……。


この感情の名前を、まだ彼女は知らない。

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