表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/125

第2章:第35話:震える弦(いと)、初めての戦場

第2章:第35話:震えるいと、初めての戦場


村の境界を越え、道なき道を進む三人の足取りは、西の山脈が近づくにつれ慎重なものになっていった。


「……はぁ、はぁっ……。山登りって、こんなに……体力が要るものなのね……」


新調した皮の防具の重さに、フィリアが額の汗を拭う。里でのんびりと暮らしていた彼女にとって、道なき荒野を歩くこと自体が大きな挑戦だった。


「フィリアちゃん、大丈夫? 少し休みましょうか」


ミーシャが気遣うが、その時。前方、うっそうと茂る草むらが激しく揺れた。


「ギギャギャッ!」


飛び出してきたのは、鋭い鉤爪を持つ三匹の「ハイエナウルフ」。獲物を見つけた飢えた瞳が、最後尾のフィリアに狙いを定める。


「敵だ! フィリア、弓を構えろ!」


シンジが瞬時に抜刀し、先頭のウルフの突進を受け止める。 フィリアは慌てて背中の弓を手に取った。けれど、いざ獣を目の前にすると指先が小刻みに震え、矢をつがえる手が思うように動かない。


(えっと……まず重心を下げて、魔力を指先に……。でも、どの魔法を先に? 補助魔法? それとも直接……っ!?)


頭の中には知識が溢れているのに、目の前の獣の咆哮がそれを真っ白に塗りつぶしていく。


「……あ、……あわわ……っ」


「フィリア! 落ち着いて、一匹に集中して!」


ミーシャの鞭が空を裂き、フィリアに飛びかかろうとした一匹を弾き飛ばす。その凛とした声に、フィリアはハッと我に返った。


「……っ、……はい! ……お願い、火の精霊さん、当たって! 『火炎の矢』!」


放たれた一本の矢が、不器用ながらも魔力の軌跡を描き、ウルフの足元で弾ける。直撃は免れたものの、炎に驚いた獣が怯んだ隙を逃さず、シンジの刃がその首を狩り取った。


「……はぁ、……はぁ……。……ごめんなさい、私……」


「気にするな。最初はそんなもんだ。……次はもっと、早く動けるようになる」


シンジがぶっきらぼうに、けれど彼女の勇気を認めるように呟く。フィリアはまだ震える手で弓を握りしめ、自分に言い聞かせるように力強く頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ