第2章:第34話:新緑のトライアングル
第2章:第34話:新緑のトライアングル
朝霧の立ち込める村の広場で、三人は装備の感触を確かめ合いながら、これからの戦い方について言葉を交わした。
「……いいか、フィリア。俺が前線で敵を引きつける。ミーシャは俺の死角をカバーしながら、中距離から鞭で援護してくれ」
シンジが鋭い眼差しで、地面に図を描きながら指示を出す。
「わかったわ。フィリアちゃんは、私たちの少し後ろから弓で狙撃をお願い。……それと、無理に前に出なくていいから、危なくなったら自分を守ることを一番に考えて。……いいわね?」
ミーシャが優しくフィリアの肩に手を置く。 彼女が身につけている皮の防具と、その手に握られた弓は、今朝、神父様が教会の奥から出してきてくれたものだ。 「かつて里を訪れた者が残していったものですが……今のあなたにはこれが必要でしょう」 そう言って託された装備は、彼女の細い身体にはまだ少し重そうだが、弓を引く構えを見せれば、そこにはエルフとしての筋の良さがはっきりと現れていた。
「……はい。私、矢に魔力を乗せて後方から援護します。……それに、皆さんの身体を硬く守る『土の加護』や、身のこなしを軽くする『風の追い風』……少しだけですが、精霊さんにお願いしてみます。……皆さんの背中は、私が守ります!」
フィリアの口から出た言葉に、シンジとミーシャは思わず顔を見合わせた。 エルフが精霊と対話し、その力を借りる種族だとは聞いていたが、まさか自分たちの守りや動きまで補助できるとは思っていなかったのだ。
「……精霊の加護か。へへっ、そいつは頼もしいな」
シンジが不敵に笑い、ミーシャも目を輝かせて頷いた。 前衛のシンジ、変幻自在な鞭を操るミーシャ、そして後方から精霊の助力を引き出すフィリア。三人の役割が明確になり、一つの「絆」として噛み合っていく。
打ち合わせを終えると、三人はそれぞれ用意した荷物を手に取った。 シンジは野営道具や食料が詰まった大きめのバックパックを背負い、その重みを肩で馴染ませる。ミーシャは動きやすさを重視した標準的なサイズのバックパックを、さらにフィリアは、咄嗟の時に弓の邪魔にならないよう、小ぶりな肩掛けバッグを身に付けた。
馬車という「家」を置いて、自らの足だけで道なき道を行く。その覚悟を確かめるように、三人は互いに頷き合った。
「よし。……行くぞ、西の連峰へ!」
シンジの号令とともに、三人は霧の向こうにそびえる険しい山脈へと足を踏み出した。




