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第2章:第32話:篝火の告白、そして若きエルフの罪

第2章:第32話:篝火の告白、そして若きエルフの罪


村の広場に焚かれた、小さくも温かな篝火。その灯りの傍らには、二人の旅を支えてきた馬車が引き入れられていた。


シンジは夕餉を済ませると、担いで帰ってきた「おおきづち」や道具を手に、馬車の車輪や荷台の繋ぎ目を丹念に調べ、何やら改造を始めていた。パチパチと爆ぜる火の粉の音と、シンジが時折立てる鈍い木槌の音が響く中、フィリアは揺れる炎を見つめて静かに語り始めた。


「……私の里では、人間は魔物と同じ……恐ろしく、関わってはならない種族だと教えられてきました。里の外に出ることも決して許されず、何百年も変わらない平穏の中で、ただ静かに、何もしないで生きる。それがエルフの正義……」


フィリアの銀色の瞳に、篝火が映る。馬車の下に潜り込み、車軸の具合を確かめていたシンジの手が、一瞬だけ止まった。


「でも、私にはそれが……耐えがたいほど、退屈だった。外の世界が見たかった。誰かと出会い、何かが起きる、そんな時間を生きてみたかったの……。だから、掟を破って里を抜け出しました。……でも、現実は甘くなかった」


彼女の震える指が、空になったスープ皿の縁をなぞる。シンジは黙ったまま、今度は荷台の補強板に重い槌を打ち下ろした。ゴン、という重厚な音が夜の広場に響く。


「……外に出てすぐに、あの恐ろしい魔物たちに捕まりました。彼らは私の歌声に宿る魔力に目をつけ、増幅させ、呪いへと作り変えた……。私のせいで、この村の皆さんは……。ごめんなさい、シンジ、ミーシャ。私は……助けられる資格なんてない、罪人なの……」


大きな雫が、彼女の白い頬を伝って落ちる。小さな肩を震わせるエルフの少女を、ミーシャは痛ましげに見つめ、シンジは馬車の陰から顔を出すと、汚れた手を拭いもせずにただ静かに、その告白を聞き届けていた。

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