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第2章:第28話:檻の中の残り火、そして白きエルフ
第2章:第28話:檻の中の残り火、そして白きエルフ
鉄格子の奥、湿った床に横たわっていたのは、ボロボロの布を纏った一人の少女だった。細い手首には重々しい手枷が嵌められ、その肌は透き通るように白い。
「シンジ! 見て、あの子……死んじゃいそうよ!」
ミーシャが叫び、鉄格子の隙間から必死に手を伸ばす。シンジはすぐさま『解錠』のスキルを使い、錆びついた扉を蹴り開けた。
「……ひどいな、これじゃあまるで……」
シンジが少女を抱き上げると、その体温は驚くほど低かった。ミーシャは迷わず、手持ちの薬草をすり潰して少女の唇に当て、さらに残りの体力を振り絞るように、その身体を懸命に温める。
「お願い……届いて……っ!」
二人の必死な介抱により、少女の頬に微かな赤みが差し、ゆっくりと、だが確実に命の火が灯り始める。ふと、少女の銀色の髪の間から覗いたのは、天を指すように細長く尖った耳だった。
「シンジ、見て……この耳……。本物なの? お伽話に出てくる、エルフ……?」
「……ああ、間違いない。でも、どうしてエルフがこんな場所に……。あの植物が歌っていた歌と、彼女には何か関係があるのか……?」
少女はまだ深い眠りの中だが、その睫毛が微かに震え、小さな唇から漏れたのは、おぞましい歌声とは違う、掠れた吐息だった。




