第2章:第27話:凱歌の余韻と、深淵の鉄格子
第2章:第27話:凱歌の余韻と、深淵の鉄格子
おぞましい歌声が止み、洞窟にはただ、二人の荒い呼吸の音だけが響いていた。
「……はぁ、はぁ。……やったのね、シンジ……」
ミーシャが震える手で、袋から見るからに苦そうな生の薬草を掴み出した。そして、そのまま隣に倒れ込んでいるシンジの口を無理やりこじ開け、それを力ずくでねじ込む。
「んぐっ!? ……がはっ、苦っ……! ミーシャ、お前……」
「いいから黙って噛みなさい! 出血を止めなきゃ死ぬわよ!」
シンジが涙目になりながら薬草を咀嚼するのを見届けると、ミーシャも自分の処置を始めた。鞭をきつく巻き付けていた腕の傷に、手際よく薬草を塗り込み、余った葉を口に放り込んでもぐもぐと咀嚼する。
「……んー、やっぱり苦いわね、これ……」
顔をしかめ、眉間にシワを寄せながらも、二人はボロボロの体で顔を見合わせた。薬草のあまりの苦味に、かえって生きている実感が湧いてくる。
その時、二人の脳裏に高らかなファンファーレが鳴り響いた。
【シンジ:盗賊 レベル8 → 9】 【ミーシャ:商人 レベル11 → 12】
一歩ずつ、だが着実に、二人はこの世界の過酷さを生き抜く「力」を掴み取っていた。
戦利品を確認すると、ジェネラルの持っていた重いゴールドの袋と、隅に置かれた古びた宝箱が見つかった。だが、シンジの『気配察知』が、さらにその「奥」にある違和感を捉える。
「……待て、ミーシャ。まだ、何かある」
崩れた岩陰の先に、ひっそりと隠された通路。そこを進むと、頑丈な鉄格子で仕切られた、湿った小部屋が現れた。
「……牢屋? なぜ、こんなところに……」
ミーシャが顔を曇らせる。その鉄格子の向こう側、暗がりの奥に、何者かの気配が潜んでいた。




