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第2章:第24話:深淵の合唱、そして静かなる宣戦布告

第2章:第24話:深淵の合唱、それと静かなる宣戦布告


洞窟の奥、広大な空洞は、異様な青白い光に照らされていた。その中心に鎮座していたのは、脈打つ血管のような蔦に覆われた、巨大な「人喰い花」の変異種。大きく裂けた口のような花弁から、村を狂わせたあの甘く、おぞましい歌声が零れ落ちている。


「……あれが、呪いの源か」


真司は『隠密』を使い、気配を完全に殺して物陰から観察する。植物の周囲には、十数体のゴブリンがうっとりと歌に聞き惚れ、無秩序に群がっていた。そして、その中心。歌声の発生源に最も近い場所で、重厚な鎧を纏った「ホブゴブリン・ジェネラル」が深く腰を下ろしている。


「シンジ……あれ、ただのゴブリンじゃないわ。あの大きな個体を筆頭に、みんなあの花に魅了されて群がってる……」


ミーシャが耳元で小さく、熱い吐息と共に囁く。彼女の指先は、新しく手に入れた『棘の鞭』の柄を固く握りしめていた。


真司は一通り状況を確認すると、静かに目を閉じた。脳内では、かつて遊んだ伝説の潜入アクションゲームのUIが展開されている。 (……よし。潜入ミッションの開始だ。ルート、敵の視界、配置……すべて「看破」した)


「ああ。正面から突っ込めば、あの数のゴブリンに囲まれて詰む。……作戦を言おう」


真司の瞳には、かつての弱気な影はない。なりきり半分、本気半分の鋭い視線が、暗闇の中で光る。


「まず、俺が『隠密』でジェネラルの背後に回る。クワイエットは鞭の広範囲攻撃で、周囲の雑魚ゴブリンを一箇所に引きつけてくれ。奴らが混乱した隙に、俺がジェネラルを仕留める。……最後に、二人で一気にあの植物の『喉元』を叩くんだ。……オーバー?」


「…………はぁ? ……う、うん……わ、わかったわ……ボス」


聞き慣れない名指しと、妙に通信機越しのような口調に毒気を抜かれ、ミーシャは反射的にそう答えてしまった。


真司が音もなく、闇に溶けるように移動を開始する。 それを見送りながら、ミーシャは突入の準備に入り、新しい鞭の柄をギュッと握り直した。けれど、ふと先ほどの自分の言葉を思い出し、顔を赤くして小さく呟く。


「…………ボス?」


なんであんな風に呼んじゃったのかしら、と自分でも戸惑いながら。 けれど、静寂と歌声が支配する洞窟の中で、二人の「最高の潜入ミッション」が、今まさに火を噴こうとしていた。



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