第1章:第14話:夢の続きは、彼女の腕の中で
第1章:第14話:夢の続きは、彼女の腕の中で
唇が離れた瞬間、ミーシャの頭の中は真っ白になっていた。 耳元まで真っ赤になり、心臓の音が酒場の喧騒よりも大きく響いている。
「……っ、……シン、ジ……?」
掠れた声で名前を呼ぶ。 けれど、返ってきたのは、言葉ではなく「重み」だった。
――ドサッ!!
「えっ……!? ちょ、ちょっと、シンジ!?」
あんなに情熱的に自分を求めてきたはずの男が、次の瞬間にはテーブルに突っ伏して、規則正しい寝息を立て始めていた。 慣れない世界での転職の緊張、必死なレベル上げの疲労、そして初めて経験した対人戦(喧嘩)……。それらすべてが、ミーシャという唯一の安らぎとアルコールの回った身体によって、一気に解けてしまったのだろう。
「……もう。かっこいいところ見せたと思ったら、これだもん……」
ミーシャは呆れたようにため息をついた。 けれど、起こそうと差し出した手は、彼の肩を揺らす代わりに、そっとその無防備な髪をなでた。
さっき、彼は確かに私のことだけを見ていた。 「似合ってる」と言って、あんなに熱く……。
「……バカ。……私の方が、ずっとドキドキしてるじゃない……」
ミーシャは、真司がさっき褒めてくれた自分の髪をそっと指先で触り、それから幸せそうに目を細めた。 いびきをかいて眠る真司の寝顔。それは、他の誰にも見せない、自分だけが知っている**「新米盗賊」**の、本当の素顔。
彼女はエールの残りを飲み干すと、頬杖をついて、赤くなった顔でいつまでも、いつまでも、愛しい相棒の寝顔を見つめ続けていた…
第1章 ―― 完




