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第1章:第11話:影の胎動、そして不穏な呼び声

第1章:第11話:影の胎動、そして不穏な呼び声


「はぁ、……はぁ、……今の、見たか!?」


村外れの草原。夕闇が急速に色を濃くしていく中、真司は手にしたナイフを鋭く振り、鞘に収めた。 足元には、数匹のスライムと、今しがた仕留めたばかりの大鴉おおからすが横たわっている。


「ええ、バッチリ見てたわよ! シンジ、動きが旅人の時よりずっとキレてるじゃない!」


馬車からミーシャが大きな拍手を送る。 ポニーテールを揺らしながら、10代後半らしい愛くるしい笑顔を向けてくる彼女を見ていると、不思議と疲れも吹き飛ぶ。だが、その華奢で明るい外見のせいで、彼女が「元・武闘家」であることを知る者は少ない。いつも「舐められやすい」ことを気にしている彼女だが、その実力は折り紙付きだ。


一方の真司も、女神の加護で若返った20代前半の青年らしい瑞々しさを保ちつつ、盗賊としての「身体のことわり」を急速に吸収していた。転身してステータスが半分になったとはいえ、無駄な挙動が削ぎ落とされ、敵の予備動作や死角が、意識せずとも直感的に「視える」ようになっている。


――パラパパッパッパー!!


本日二度目の、魂に響くファンファーレ。階位レベルは3へと上がった。 戦える商人であるミーシャとの連携が、驚くほどの効率を生んでいる。その瞬間、真司の脳裏には、ある『術』の使い道が鮮明に浮かび上がった。


「(……これが、盗賊の初歩スキル――『忍び足』か……!)」


足裏の感覚が地面の起伏と同化し、体重が消えるような、不思議な静寂。 レベルアップの確かな手応えに浸りながら、二人は夕闇に包まれた村へと戻った。


「ふふ、今日は一段とエールが美味そうね! 荷物を置いたら、昨日の酒場に直行よ、シンジ!」


ミーシャは意気揚々と宿の階段を駆け上がっていく。 真司も、心地よい疲労感と共に自分の部屋へ荷物を置き、彼女と合流しようと一階の酒場へ向かった……その時だ。


「……おい、そこのアンタ。少しツラを貸せよ」


酒場の入り口、ランプの光が届かない柱の陰から、低く濁った声が真司を呼び止めた。 振り返ると、そこには数人の男たちが佇んでいた。 一見、旅の冒険者風の装いだが、その瞳には獲物を狙うハイエナのような、薄汚れた光が宿っている。


「……あんた、確か……今朝、転身してたよな?」


中心にいる髭面の男が、ニヤリと下品な笑みを浮かべた。 彼の目には、目の前の「20代前半の若造」が、転身直後の無防備なレベル1にしか見えていないのだろう。彼らの慢心が、その歪な笑みに透けて見えた。


男たちの視線は、真司の腰にある新品の道具袋、そして、二階へと消えていったミーシャの残り香を追うように動いた。


「あのポニーテールの女……若くて、随分と景気が良さそうじゃねえか。盗賊なら、話は早えだろ? いいモン持ってるはずだよなぁ?」


若く見える真司を侮り、男たちが囲むように距離を詰めてくる。 だが、その時。真司の脳内では、レベル3になったばかりの感覚が、冷徹に男たちの「隙」を数え始めていた…

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