第5章:第102話:反省と復習の夜営
第5章:第102話:反省と復習の夜営
中央領の夜は、南部に比べてどこか冷たく、鋭い静寂に包まれていた。
街道から外れた高台。
焚き火の爆ぜる音だけが、疲れ果てた四人の間に流れていた。
簡易的なスープと干し肉の食事を終えた彼らの顔には、拭いきれない疲労の色が滲んでいる。
「……今日は、本当に危なかったわね」
ミーシャが、痺れが残っているかのように自身の右腕をさすりながら口火を切った。
「あんなにまとめて、嫌な攻撃をしてくるなんて……。あの『痺れ』、一気に体が動かなくなる感覚……南部とはまるで別物だわ」
「ああ。眠り攻撃に痺れ、それにあの幻影……。単体でも厄介な奴らが、パワー系や素早さ系と組んで襲ってくる。あれが中央領の戦い方の基本なんだな」
シンジが焚き火を見つめながら、静かに今日の戦いを反省する。
「まず、優先順位をはっきりさせよう。どんなに目の前のデカいのが威圧感を出していても、まずは空を飛んで鱗粉を撒く奴や、搦め手を使う妨害系を先に仕留める。飛んでる敵には、フィリアの弓、俺のブーメランやウイングブロウ……それにミーシャ、お前の飛び膝蹴りや石つぶて、かまいたちも効果大だ」
「わかってるわ。次は、あの羽音を聴いた瞬間に叩き落としてやるわよ」
ミーシャが力強く頷く。すると、セシリアが少しだけ頬を赤らめ、一生懸命に言葉を紡いだ。
「……は、はいっ……わかりました! シンジさん! 次からは、私とフィリアさんで、隙を見て幻影魔法を掛けます。パワー系の魔物を幻惑している間に、皆様が妨害系を叩けるように……!」
「助かるよ、セシリア。それと、君の素早さを上げる魔法で、接敵する前に俺たちのスピードを底上げしてくれ。上から先に叩ければ、奴らに妨害の隙を与えない。……それに、君には眠りを覚ます魔法もある。その安心感があるから、俺たちは前を向けるんだ」
シンジの言葉に、セシリアは「……ひゃいっ!」と短く、けれど嬉しそうに返事をして、丸メガネの奥の瞳を輝かせた。
フィリアも、胸に抱いた絵本を一度置き、真剣な表情で頷く。
「エルフの伝承にも、感覚を狂わせる魔物の話がありました。……次は、私の精密射撃であの羽音を止めます。シンジさん、私たちなら、もっと上手くやれます」
焚き火の明かりに照らされた四人の顔から、項垂れたような暗さは消えていた。
今日の敗北に近い勝利を、明日への確かな「復習」へと変えていく。
中央領という厳しい土地で生き残るための、泥臭くも結束の固い戦略会議は、夜が更けるまで静かに続いた。




