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幕間:第99.4話:ギルド長の失態と、聖母の『お願い』

幕間:第99.4話:ギルド長の失態と、聖母の『お願い』



「………」


何事もなかったかのように、若い女ドワーフが部屋の奥へと音もなく消えていく。


後に残されたのは、咳払いを一つして、必死に威厳を取り繕おうとする白髭の老ドワーフ―


職人ギルド長、バルドだった。


彼は「ギルド長」と記された重厚な名札のある机に腰を下ろすと、眼前の二人をジロリと睨みつけ、精一杯の虚勢を込めて毒づいた。



「……で、何の用だ? 銀髪の悪魔め……。ここは貴様の遊び場ではないぞ」


「ひ、ひぇぇ……っ」


隣でリリアーヌが、ドワーフ特有の野太い殺気に震えてたじろぐ。


だが、シルフィアはどこ吹く風。


何事もなかったかのように高級なソファーへ深く腰を下ろすと、足を組み、妖艶な微笑みを浮かべて口を開いた。



「……ねえ、バルド。あんなに若い子と……グレッタは知ってるのかしら?」


その瞬間。 バルドの顔から血の気が引き、持っていた羽根ペンが指先から滑り落ちた。

ガタガタと、椅子が鳴るほどに彼の全身がブルブルと震え出す。



「す、すまん……! それだけは、それだけは……グレッタにだけは、許してくれ……っ!!」


ドォォン!! と床が鳴るほどの勢いで、ギルド長が床に額を擦り付けた。

首都の職人たちを束ねる重鎮の、あまりにも見事な土下座だった…



「あ〜ら、バルド。貴方、昔と違って随分と素直ねぇ……? うふふっ☆」


シルフィアはニヤリと口角を上げ、獲物を追い詰めた捕食者のような目を細める。


それを見ていたリリアーヌは、顔をこれ以上ないほどに引き攣らせ、母の背中を見つめて戦慄した。


(お、お母さん……。マジでえげつない……。この人、本当に里の『聖母』なの!?)


だが、シルフィアは次の瞬間、まるで魔法を解いたかのように、ふんわりと柔らかく、慈愛に満ちた「母親の顔」へと豹変した。



「……あのね、バルド。お願いがあるの。 多分、近いうちに私の娘がこの街に来ると思うのよ。その時、もしあの子たちが困っていたら……優しく手を貸してあげて欲しいの。……いいかしら?(はぁと)」


首を少し傾げ、小首をかしげて「可愛く」お願いするシルフィア。


だが、その背後には「断ればグレッタに全てをバラす」という、逃げ場のない死の宣告が黒々と渦巻いている。



「は、はい……承知いたしました……。全力で、命に代えても、お力添えさせていただきます……っ!」


土下座したまま、震える声で答えるバルド。


リリアーヌは、母のあざとさと恐ろしさが同居したその光景に、ただただ『ひ、ひぇぇ……』と情けない声を漏らして立ち尽くすしかなかった。


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