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第4章:第99話:サカデウスの門出と新たなる旅立ち

第4章:第99話:サカデウスの門出と新たなる旅立ち


地方都市サカデウスを、眩いばかりの朝の光が包み込んでいた。


その中央大通りを、一台の馬車がゆっくりと進んでいく。


御者台には、しっかりと手綱を握るミーシャ。

その隣には、『ちからの指輪』をはめた右手を膝に置き、前を見つめるシンジが座っていた。



「……いよいよ、出発ね。シンジ、忘れ物はない?」


ミーシャが少しだけ声を弾ませて尋ねる。


「ああ。……サカデウスで得たものは、全部ここにある」


シンジはそう答え、馬車の荷台へと視線を向けた。


そこには、フィリアと、その隣で楽しそうに笑い合うセシリアがいた。二人は昨日の買い物の余韻を楽しむように、睦まじく語り合っている。


馬車が街の正門へと差し掛かった時、四人は息を呑んだ。


門へと続く通りを埋め尽くしていたのは、サカデウスの街を挙げた見送りの群衆だった。


街のお偉いさんたち…


ギルドの関係者…


そして商売を再開できたことを喜ぶ商人たち…



「おい! 赤い鎧の冒険者、気をつけて行けよ!」


「ありがとう! 英雄たちに幸あれッ!」


「あんたたちのおかげで、この街は救われたんだ!」


嵐のような歓声と、惜しみない感謝の言葉が四人に降り注ぐ。


群衆の中には、あの老神父の姿もあった。

彼は慈愛に満ちた表情で、馬車に向かって静かに十字を切っている。


そして、その隣。


「……ガストン! オルデン! ミレーユも!」


シンジが声を上げた。 そこには、シンジたちが命懸けで救い出した三人の冒険者が立っていた。

彼らは簡易的ではあるが、新調したばかりの装備を身に纏い、再起への決意を込めた眼差しで手を振っていた。


「シンジ、恩に着るぜ! 俺たちも、もう一度やり直すつもりだ!」


重戦士ガストンが、逞しい腕を振り上げる。老僧侶のオルデンも、女魔法使いのミレーユも、再起への決意を込めた力強い眼差しで、四人の旅立ちを祝福していた。



「……みんな……っ」


シンジの胸の奥が、かつてないほど熱く波打った。


転生前の孤独、誰からも必要とされなかった過去…

あの日、デスクの隅で味の薄い弁当を食べていた俺が、今、これほどまでに多くの人に『ありがとう』と叫ばれている…


(……俺は、生きているんだ。ここで……この世界で……)


堪えようとしても、視界が滲んでいく…

シンジの頬を、一筋の熱い涙が伝い落ちた。



「……もう、何泣いてんのよ、格好悪いわね……」


隣でミーシャが、呆れたような声を出した。

だが、彼女の声も激しく震えている。


「……あんたが泣くから、私まで……っ。ほら、これでも食ってシャキッとしなさいよ!」


ミーシャは涙を乱暴に拭うと、足元のカゴから真っ赤に熟れたリンゴを取り出し、シンジに向かってひょいと投げた。


「……あ」


シンジが反射的に受け止めたのは、あの日、リーベルの石畳を転がってきたのと同じ、芳醇な香りを放つ『ハニー・レッド』だった…


「……1ゴールド分、たっぷり身体で払ってもらうんだから。……止まってらんないわよ、お兄さん!」


ミーシャもまた、溢れ出す涙を隠そうともせず、泣き笑いの顔で前を見据えた。


あの日、一個のリンゴから始まった二人の旅。それが今、多くの仲間に支えられ、確かな絆となってここにある。



そんな二人を、荷台からフィリアが温かな眼差しで見守っていた。


一方、セシリアは馬車の心地よい揺れに豊満な胸を揺らしながら、一人深く決意していた。


(以前の私は、酷いコミュ障で、こんなに深く人と関わって来なかった……。でも、この三人ならば……。この人たちとなら、私は……)




馬車はついに、サカデウスの巨大な石造りの門を通り抜けた。

背後から聞こえる歓声が、次第に遠ざかっていく。 目の前に広がるのは、まだ見ぬ未知の荒野と、どこまでも続く地平線。




「……よし、行くわよ! 第5章の始まりね!」


ミーシャが力強く手綱を振るった。

シンジは手の中のリンゴを強く握りしめ、前を向いたままポツリと返した。


「……おい、メタ的な事を言うんじゃないよ……」


「な、なによっ! 感動の場面でしょ!」


背後の荷台からは、フィリアの忍び笑いと、馬車の揺れに胸を揺らしながらも幸せそうに微笑むセシリアの気配が伝わってくる。


四人を乗せた馬車は、新たな冒険が待つ地平へと、駆け出していった。

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