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キミに会えない ラブレター

作者: みし
掲載日:2026/02/17

超ショートショートです。

何かの気分転換に読んでくださると嬉しいです。

【8月17日】

 ゴメン。とにかくゴメン。それ以外の言葉が見つからないくらいゴメン。

 

 実は今、僕は病院にいるんだ。検査とかじゃなくて入院。しかも、医者が言うには、「絶対安静」で、動いちゃいけないらしい。


 この手紙は、ベットで仰向けになりながら書いてるんだ。寝返りとかも打てないから。

 幸い、今のところまだ両方の手は動くから……。

 看護師さんにシャーペンと紙を用意してもらって。

 知らなかったけど、ボールペンって上向きで書こうとするとインクが出ないんだね。


 僕がバカだったんだ。多分、二日前に君に告白して、OKもらって、浮かれてたんだと思う。高校時代の友達と海で遊んでて、君の名前を叫びながら、岩礁から海に飛び込んだら、予想外に海底が浅くてさ……気づいたら、病院のベッドの上にいたんだ。


 診断名は「第七頸椎粉砕骨折」要は、首の骨が折れたってこと。医者が言うには、今は患部が内出血をしていて、精密検査ができないらしいんだ。もしかして、その間に半身麻痺や全身麻痺になる危険性もあるって……。


 身勝手なお願いだけど、もし障害が残るようなら縁を切ってくれていい。でも、結果がハッキリするまで待っててくれないかな……。




【8月23日】

 ありがとう。とにかくありがとう。君の手紙、何度も読んだ。そして、何度も泣いた。


 ここでの生活は、首を引っ張られたまま、ずっと寝っぱなしで、トイレも風呂もままならない苦行の連続だよ。でも、そんな中で、君がくれた手紙の「待ってるからしっかり治して」っていう言葉が、僕に圧倒的な元気をくれた。僕は、もうこれで十分だよ。


 親に電話して、見舞いに来たいって言ってくれたらしいね。でも、君に入院先を伝えないように頼んだのは、僕なんだ。


 もし最悪の事態になったら、君は僕と縁を切らなくちゃいけない。その前に会ってしまったら、君も優しいから、僕のことを切りづらくなってしまうと思うんだ。僕は、君の足枷にだけはなりたくいんだよ。


 「待ってて」て言ったり、「見舞いに来ないで」って言ったり、ホント身勝手でゴメン。でも、ありがとう。手紙、嬉しかったよ。



【9月9日】


 一ミリの差だったよ。今まで、毎日恐怖に震えていたけど、少しだけ心が楽になった。


 頸部の内出血が引き、MRIによる精密検査を受けたんだ。その結果、僕の砕け散った脛骨の一部は、確かに首の後方にも飛んでいた。だけど、骨の破片と、神経の束には、一ミリ弱の隙間があったんだ。僕の脊髄神経は、傷ついていなかった。


 医者は、手術で粉々になった脛骨の破片を除去し、補強すれば、元通りの生活を送ることができるって言ってくれたよ。その手術は、だいたい一か月後くらいに行うって。


 僕の中で、君と手をつないで街を歩いたり、映画を観たり、遊園地に行ったりすることが、すごく現実味を帯びた夢になってきた。


 いつもありがとう。制約の多い、つらく退屈な入院生活の中で、君の手紙や君の言葉が、僕の心を潤し、癒してくれています。


 こんなに嬉しいことはないよ。



【10月17日】


 今日、個室から相部屋に移されたよ。手術が終わって一週間が経ったから。


 経過は良好で、このまま順調に行けば、一か月後には一時帰宅もできるだろうって言われた。後は、様子を見ながらって感じ。


 手術は、九時間近くかかったらしい。粉々になった脛骨を除去した後、腰骨の一部を移植して、金属のプレートで固定したんだって。横方向からのレントゲンを見せてもらったけど、僕の首の骨に打ち込まれている、三本のネジの形が、ハッキリとわかるんだ。


 お蔭様で手も足も何ともない。自由に動く。家族や友達に迷惑をかけたし、病院の人達にもお世話になった。でも、僕は、君の手紙に、何度も励まされたよ。君が待ってくれているって思えたから、頑張ることができたよ。


 今はただ……少しでも早く、君と会って、君の顔を見て、君の声を聞いて、君のことを抱きしめたいよ。自由に動く、この手で。


   FIN

読んでくださり、ありがとうございます。

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