第1話 アイドルは家事分担制
工藤家の日常
「あの、彗月さん、これ、なんですか」
唐突だが、工藤神風はアイドルシェアホーム「工藤家」に住まう最年少の人間である。
本人申告上の年齢は一応、4歳である。実年齢は不明である。本人に年齢を聞くと指は3本立てられ、口は「よん」と言うのである。無情。
「家事決めルーレット」
「家事決めルーレット?」
そんな彼には父親みたいな存在がいる。それはアイドルシェアホーム「工藤家」の家主「工藤明仁」である。
明仁と神風の間には血縁上の繋がりは一切、ない。戸籍上の繋がりもなかったが、神風が「オレはアイドルになりたい。アイドルになって、かぞくをみかえしたい」と言いながら、1人で工藤家に転がり込んできた日に明仁は仕方なく、神風と養子縁組をした。
「そう。料理、食器洗い、掃除、風呂掃除、子守、洗濯干し、洗濯畳み、買い物、臨時の9つの家事。臨時は色々に対応する。それ以外は名前の通り」
「なるほど。ちなみにここの住人は12人いたはずなんですが。何故に家事は9つなんですか?」
「あー、それについては、まあ、うん」
「あと何故ここに明仁さんと、彗月さん、私、神風くんの4人しかいないんですか?」
そして、神風にはさらに伯父みたいな存在がいた。それが今、神風を抱っこしているアイドル「彗月」である。彼はアイドルでありながら、あるアイドルの生粋のファンでもある。
神風にとっての伯母のような人間もいる。それが今、神風のほっぺたをもちもちとイジっているアイドル「マナ」である。マナは神風のほっぺたをもちもちしながら、明仁が準備しているルーレットを見ている。
「祐馬くんと未来ちゃんは中学生なんで2人で1人扱いなんすよ。2人1組的な。だから、9つの家事に9人で間違いないっす。明仁さんと神風くんは除外。家主は家主ってだけで一つの仕事みたいなもんなんで。幼児は家事できないので換算されてないっす」
「なるほど納得カタツムリ。じゃあ、ここに私含めて4人しかいない理由は? 舞華さんとかはいても問題ないと思うんですけど」
ちなみに神風には兄姉的存在もいる。それは訳あり家族を持つアイドル「舞華」の妹弟である「祐馬」と「未来」の2人である。2人は二卵性双生児で異父兄妹の15歳の双子である。アイドルは別に目指してないとのこと。
なお、2人の姉「舞華」は神風にとっては母親みたいな存在である、年齢が。
ここまででも相当な数の人物が工藤家に住んでいるが、まだ続く。
「マナさん含めて、ここに4人しかいないのは家事争奪戦になるからっす」
「家事争奪戦って、」
「最初は全員で全部の家事をしてたんすけど、5人越えたあたりから分担を始めて、神風くんが来たときに全員参加で家事決めルーレットしたら、子守と洗濯畳み争奪戦になって」
「あー、」
「それ以来、明仁さんと子守担当だけがルーレット参加権あるかたちになったっす。そのときの子守は颯さんっした」
神風には叔父的存在もいる。それはリアル男性アイドルの「颯」である。アイドルとしては「そう」と呼ばれるが本名での読み方「はやて」らしく、工藤家では「はやて」と呼ばれている。
「なーる。醜すぎるアイドル達の争奪戦。特に美月さんと遙さん、舞華さんが争奪戦に参加しているのが酷すぎる」
「分かるっす。高校生のユズリとかゆかりんが家事選びたいってのは2人のアイドルのやり方もあるんで分かるんすけど、そこの3人はね」
ちなみに神風の自称許嫁もいる。自称許嫁は学校のアイドル「ゆかりん」である。とある高校のアイドル枠の女子学生である。つまり、美少女普通学生である。
あと、神風にとっての自称推し的存在もいる。引きこもり系Vtuber「ユズリ」がそれを自称している。神風から公認は得ていない。
「あ、マナさんが今回いるのは家事決めルーレットに初めて名前入ったからっすね。この家事決めルーレット、1か月に1回しかないんで。マナさん、ここに来たの2週間前っすから今回が初めてのルーレット参加っすね」
なお、神風には叔母的存在「達」もいる。それは殺人鬼を友人に持つアイドル「美月」と大手芸能事務所社長の妹「遙」である。
「うれしくないな」
「分かるっすよ、マナさん」
「おい、神風、ルーレット回せ」
「あい」
「あいって可愛くない?」
「可愛い」
「そこ、黙って見てろ、見学者2人」
「「はい」」
そして、今日も工藤家ではアイドル達の家事分担のための家事決めルーレットが火花を散らしていた。
「ってか、どうしてルーレットなの」
「くじ引きだと明仁さんが細工できるからダメだって苦情が出たことがあったんすよ」
「うーん、そう言われたら全ての運で決めるものが細工できるのでは」
「同意っすね」
工藤家の全ては幼児に託されている。
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