表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/72

70話 姫の日記帳

今日は色々とあったわねと

自分の部屋で座椅子に座りながらお茶をすする


来週から始まる学期末テストの為に

机の上には教科書が何冊か置いてあり

ノートも広げてある

スポーツ科である為に

進学科と比べるとそんなにしてこなかった


シンの影響なのか

最近ずっと何かをしている

前は忙しいとか、時間が無いとかで

してこなかった勉強や家の事があった


やり始めて思う

真剣にやってなかったのかなと

違うわね

なんかこの言葉は違う様な気がする


でも、当てはめる言葉があるとするなら

自分が知っている言葉を当てはめるとするなら

この言葉の様な気がする


人族であるシンが

自分より基本的な身体能力が劣る人族のシンが

あんなにもやっている

バレーの練習が終わった後に

1人で同じ事を何度も何度も何度も

繰り返してやっている


心配になる程の練習をした後に

勉強をして、私達にも付き合ってくれている


他の人族を見てきたせいか

比べてしまう所がある


シンなんだから仕方がない


最近ずっと

この言葉を当てはめている様な気がする

今日の事だってそうだ



お婆様とお爺様に話をした

シンがトウカを連れてくると

テストがある前の部活がない期間

部活がない分できた時間を

シンは勉強してるか

自主練をしているかなのに


1日をトウカの為に使って

私の家にトウカを連れてきたのだ


お婆様とお爺様

それにトウカまで困惑していたが

結果的に

夏休みからトウカがお爺様の弟子として

工房に入る事が決まった


トウカは泣いて喜んでいたが

信じられない思いで聞いていた

お爺様がトウカが見習いで働いている所と

家の方に連絡を入れて弟子にしたと

夕食の時に話していた


お婆様やお母様も納得していたけど

少し‥‥いや、結構怒ってもいた

あんな子を雑に扱うなんてって


今まで弟子入りに来る事はあっても

お爺様が認めて弟子にするなんて

私の知る限りではなかった筈だ


いつの事だろうか

私がシンに対して

こんな事があっても

シンなんだから仕方ないと

思う様になったのは


最初は憎かった筈なのに

ケンカまで売る程までに

初めてそこまで思うような相手だったのに


チョロいなぁ‥‥私って


ポーが言っていた言葉が浮かぶ


顔が赤くなっている自覚がある

シンにリンちゃんなんて呼ばれたら

むず痒くなって、頭を叩きたくなる


「はぁ‥‥なんてチョロいんですの」


初めてのケンカ相手

初めて負けたと思った相手

初めての思いをぶつけた相手

初めて名前を教えた相手

初めての気持ちを抱いた相手


こんなに簡単なモノなのか

もっと複雑で甘いモノじゃなかったのか


何度も気持ちにブレーキをかけた

でも、それよりも強く駆け出してしまった


気付かないふりをして

気持ちよく駆け出してみて

何度も振り返ってみて

駄目なんじゃないかと思いながらも

さらに強く、何度も、何回も

それこそ落ちる様に駆け出した


両親や祖父母が認めてくれてるのも

原因の1つかもしれない


シンが仮に‥‥そう仮に‥‥

本当に仮に嫌な奴だったとして

両親も祖父母も認めてくれない奴だったら

止まれた筈だ


それは自信がある

尊敬している祖父母

敬愛している両親が

大反対したら、それ程の事だと思い留まる


全員が背中を思いっきり押すのだ

踏み止まった一線を前にして

足踏みした理由を前にして

信じて進んでみろと


わかっているけど

踏み越えてしまって

駄目だった時に立ち直れなくなる


不安があった筈なのに

今は不思議と自信しかない


必ず上手くいく

シンなら絶対にやってくれる

あの子達となら絶対にやれる


「あぁ〜‥‥ホントにチョロいですわね」


どんなに考えても

どんなに思っても

どんなに時間をかけても

この言葉が当てはまる


開いているノートを見ながら

お茶をすすってから、ため息を吐く


シャーペンを持って

ノートに書いてみる


シンの馬鹿


一旦止まって、書いた字を見る

シャーペンを置いて

深呼吸をしてから、書いた字を見る


絶対コレじゃない感があるけど

コレしか書きたくない感がある


当てはまるんだろうか

この気持ちが、この言葉に


言葉の意味が違うと言ってしまったら

何かを認めてしまう事になる


この言葉で蓋をして

気持ちが溢れない様にしていたのに

自覚しない様に

意味が全く違う言葉を無理矢理に

はめ込んでいたのに


去年の全国大会1回戦

結界が無くなった時に

シンなら受け止めてくれると思って

慎重に全力で出したボールを

シンが打ち込んでくれた


お母様も褒めてくれた

本当に嬉しかったんだよ

あんな気持ちは初めてだったんだから


リンはシャーペンをゆっくりと持って

書いた字の横に何かを書こうとして

悩んで悩んでやめて

書いた字を消しゴムで消す


まだだけど

こんなになってもまだだけど

いつか素直な気持ちに

当てはまる言葉を書こうと思っている


「書く言葉は決まってるんですのにね‥‥

あぁぁ‥‥もういい!」


教科書を開いて勉強を始める

ノートに書こうとして

さっき書いて消した文字の跡を見る


誰かに1日を使うなら

私にも使ってもらってもいいですわよね


気分良く勉強をしながら

何をしてもらうか

どこに連れて行ってもらうか

何を食べに行こうかと

色々と思いついては

ノートに書き出していった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ