表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/72

68話 何かを期待する季節

シンは廊下というより

校舎から何度も響いてくるニブイ打撃音を

聞きながら、ソナの祖母と話していた


「先輩って言ってたから

ソナさんとトウカさんになるのかな?」

「そんなに距離取ったら泣いちゃうわよ

あの子達もね

悪気があったわけじゃないから」

「そのさ、ソナとトウカって

もう働いてるんだ」

「まぁ、ソナは中学の時は

手伝いだけだったんだけどね

高校の専攻科ってのに、はいれてね」

「専攻科?そんなのがあるの?」

「まぁ、色々と狭き門だし

それに厳しい約束事もあるから

人気ないのよね

それにメリットっていってもねぇ」

「専攻科に行くと働けるんだ」

「言うて‥‥じゃないわね

あの子達は去年からだけど

専攻科に行ってるのなんて

その前とその前、その後もいないから

この頃は全然いないのよね」

「別に言葉遣いは気にしてないし」

「そお?でもまぁ、勤務中だからね」


そんな事をダラダラと話していると

校舎に響いていた音と

窓を叩いていた雨が止む


少しすると保健室に

ポー、ルカ、エル、ヒル、ウイ、カヤが

入ってきて、その後に

ドレッドヘアーがしんなりとしたソナと

着物がはだけて、下に着ているジャージが

露わになっているトウカが入ってきた


「アカンやん‥‥手加減なしは」

「数の暴力もアカンて」


ソナとトウカはメソメソと泣いて

呟きながら丸椅子に座る

トウカは痛かったのか

頭頂部あたりを両手でおさえていた


「まぁ、一応の禊ぎは終わったから

それに仕方ない事だし」


ポーは腕組みをしながら言うとシンを睨む

まるで、次はお前だと言わんばかりだった

シンは、なんでなのよと思うが

全員がシンを睨んでいたので

話題を変えるためにも気になっていた事を聞く


「トウカ先輩の「トウカでええ」‥‥

トウカの着ているのって

雷姫の所で買ったの?」

「‥‥なんでそう思うん?」

「え?いや‥‥なんとなく」

「なんでや?聞かせて」


シンは、なんとなく聞いた事に

トウカが真剣になって聞き返してきたので少し焦る


別に着物の見る目があるわけでもなく

ただ単に気になった事があるから聞いただけで

肯定か否定だけで良かったんだけどと

思いながら、立ち上がってトウカに近づく


「触っていい?」

「え?うん‥‥いや、ちょい待って!」


シンに言われて返事をしたトウカだが

自分の着物が着崩れているのを見て

ある程度直してから

シンの方を向いて、どうぞと両手を広げる


シンはトウカが着ている着物の

袖あたりや足元の端を触って

ん〜っと唸りながら

ベッドに戻って座る


「雷姫の所で買ったんじゃないんだ」

「触ったら、わかるんや」

「着た事あるからわかるんだけど

着心地というか手触りがこうなんていうか」

「まぁ‥‥そうやろうなぁ」

「触ったらわかるんだけど

見る分には似てるというか‥‥うーん

ポー、カヤはどう思う?」


シンに言われて

ポーとカヤはトウカの着ている着物を

そういえばと改めて見て

トウカに断ってから

着物の袖あたりを触る


「確かにリンのお爺様が作った物と

似ているわね」

「細かい所まではわかんないけど‥‥

シンが着てるのと似てるかな」


シンは気を使って、雷姫と言ったのに

ポーがリンの名前を出したので

言っていいのと思ってポーを見ていると

不意に両手を広げて立っていたトウカに

思い切り抱きしめられた


「くる‥‥くるし」

「うぅうぅ‥‥シンはホンマに!

ホンマにサキドリッコやったんやな!」

「なに?なんで?サキドリ?」


シンはトウカを腕を掴んで

なんとか空間を作り出しながら

シンが聞くと

トウカはシンを抱きしめながら

着物の袖から取り出した紙を広げる


「コレや!コレ!シンやねんやろ!」


紙には去年と今年の正月に撮られた

着物姿のシン達の写真が載せられていた


「直に見たんは1度だけ

今年の正月だけやったから

何度も思い出しながら作ってみたんやけど

全然似てへんって

下手くそって言われて‥‥」


段々と言葉の勢いも無くなって

トウカの抱きつく力も少し弱くなる


「あんな‥‥ホンマに似とるかな」

「あのね、トウカ

私は着物っていっても

あれだけしか知らないし

見た事あるのなんて」

「着とるだけで充分やし‥‥

ホンマに思うとる事だけでええから」


シンは困った様に周りを見渡すと

ルカ、エル、ヒル、ウイは

なに?って感じでシンを見返しており

ポー、カヤ、ソナは

こういう事は言葉を選びなさいよと

いった感じで見返してきた


ソナの祖母は

用意したお茶を飲んで

頭の蛇達と一緒に煎餅を食べながら

ノンビリとしている


「失礼な事を言うかもしんないわよ」

「それでもええから」

「まぁ‥‥あれはあれで初めての着物だったし

すごく良かったんだけどさ」


シンは生地を確かめる様に

トウカの背中あたりをゆっくりと撫でる


「なんか凄すぎて1年に1回でいいやって

思っちゃうんだよね

多分、その為に作られてるから

そうなんだろうけど

でも、なんだろう

トウカのって、毎日着るというより

真冬のお布団みたいに感じるかなぁ

なんか包まれてたいみたいな?」


トウカはシンの言葉を聞いた時に

目が段々と黒くなっていき

息が荒くなっていくが

シンが何気にポンポンと

トウカの頭を何度も撫でていく


トウカの目がトロンとして

顔をシンの首元に埋めていき

息も穏やかになっていった


ポーとソナはトウカの目が黒くなった時に

焦った様にシンとトウカに近づいたが

頭を撫でられて、息も穏やかになっていく

トウカに驚きながら2人はジト目になる


「離れなさいよ」

「もうええやろ」

「や!もうちょ‥‥もっと!まだ!」


渋るトウカをシンから引き剥がして

丸椅子に座らせるとポーとソナは

一息ついてシンを睨む様にして腕を組む


「これぐらいで」

「そうやな、説明終わりやな」

「後はシンにお仕置きかな」

「は?なんで?」


ポー、ソナ、カヤが何かを納得した様に

頷きながら言うと

シンとシンの頭の上にいた小さな蛇が驚く


「私はいいわ

何度も天候が変わると苦情がくるから」

「じゃあ!私達がやるの!」

「久しぶりにやってやるの!」

「これ以上の増加は無理」

「なんでノリ気なのよ!」


ウイ、エル、ヒル、ルカが

軽いノリでシンを抱きしめる


「ちょっと!説明してくるんじゃないの!」


シンは思い出した様に

お煎餅を咥えているソナの祖母に聞くが

笑顔で手を振られて

後は自分で考えてねと

お煎餅をモゴモゴしながら言っていた


「ウチもやっとく!」


トウカが笑顔でシンに抱きつく


「ノリと勢いでくんなや!」


シンは叫びながら廊下へと連れ出され

体育館の方へと運ばれていった



シンの頭に乗っていた小さな蛇は

ソナの祖母に小さくしてもらったお煎餅を

パクパクと食べていた


「アンタはシンちゃんと違うて

ずいぶんと世渡り上手なんやね

ホンマに‥‥ういやっちゃなぁ」


ソナの祖母が小さな蛇に笑いかけると

小さな蛇はピーっと鳴いて

少し大きめなお煎餅にカブリついた


ソナの祖母は窓の外から

強い日差しが入ってくるのを見て


「今年もまた

えらい暑くなりそうやなぁ」


そう呟いた


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ