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64話 色褪せてくれないモノ

アヤノの家で宴会が行われた


ウイが行った飛行テストの点数は

成人の部で合格が認められて

何段階かを飛ばしての資格取得となった


身内だけの採点とはなったが

ポーが撮影した動画の提出と

リンの父親とサリの父親が提出した

飛行記録と天候の記録

それにウイが天候を操った事が

加味されての事だった


「うっわぁ‥‥ベロベロじゃない」


シンはカウンターの専用席に座りながら

とある夫婦を見て呆れていた

陽気に食べて飲んで

泣きながら周りに絡んで

今は2人とも寝転がっている

ウイは自分の両親を真っ赤になりながら

介抱していた


「にしてもだ!シンちゃん!」

「そうだぞ!シンちゃん!」


シンの両脇に座る酔っぱらい

左側には優しげな顔を真っ赤にして

語りかけてくるリンの父親

右側にはキリッとしているが

真っ赤な顔のサリの父親

2人ともカッターシャツのボタンを

何個が外し、ズボンからシャツが少し出た

ダラけた状態でシンに話しかける


「人族の君がね

あんな状態で空に飛び出して」

「まったくだ!

どうにかなったからよかったではなく

飛び出した事が問題なんだ!わかるか!」


ペシペシと2人から頭を叩かれながら

シンはアヤノの祖父が焼いてくれた肉を

無言で黙々と食べていた


「本当に今回は良い結果が出ただけ

今日は賭けのような物だったんだよ」

「そうだぞ!確かにテストで

そういう側面もあったかもしれない

だが、ああいうのは駄目だ!」


2人はその後も色々とシンに言っていると

シンは箸を皿の上に置いて

口の中にある肉を飲み込んでから

両脇の2人を順に半眼で見てから

もう一度箸を持って言う


「ウッサイ!肉が不味くなる!」


シンが言った瞬間に静かになり

肉の焼く音とアヤノの祖父から

グキュと変な音だけが響いて

アヤノの祖父と祖母が爆笑する


周りから笑い声が響く中で

アヤノの祖父が両手で持ったコテを

リンの父親とサリの父親に

それぞれに向けて言い放つ


「なっとらん!ここは焼きモン屋だ!

変な気持ち〔モノ〕を妬くんじゃねぇ!

この未熟モンどもが!」


周りから笑い声が響いて

カウンターに座っている2人は

真っ赤になりながら

持っていた杯の酒を一気に飲み干した



「あら?起きたの」

「あの子達は?」

「上がって行ったわよ」


ウイの母親が起きるとウイの祖母が

水の入ったコップを渡す

ウイの母親は水を飲みながら

まだまだ続いている宴会を見ていた


「ウイがお母さんとお父さん

2人の力を受け継いでるなんて思わなかった」

「まだまだコントロールが危ういですけどね」


荒天と蒼天

破天と呼ばれた2人は

孫が飛べなくなってからは

2人とも飛ばなくなっていた


「お母さんとお父さんが1番ウイを

信じていたのね

私は心配で仕方なかったのに」

「私も心配で仕方なかったのに

あの人が言ったのよ

俺達の羽に憧れた子を

俺達が信じてやらんでどうする

ってね」


ウイの母親は水を少し飲んで下を向く


「自慢の孫でしょ」

「そうね」

「ごめんね

私はなれなかったから」

「あら?自分の娘に嫉妬?」


拗ねたようにウイの母親はウイの祖母を見ると

コロコロと笑うウイの祖母がいた


かつて憧れた破天の両翼

自分達が飛びやすいように天候を操り

2人が飛ぶ空は2人だけの物と言われた


何度も追いつく為に飛び

憧れて、追いかけて、追い縋って

願って、悔しくて、やがて諦めた


「自慢の娘じゃなかったから」


コロコロと笑っていたウイの祖母は

ウイの母親を優しく見ながら言う


「自慢の娘が産んだ子よ

あの人の前では絶対に間違えないでね」

「でも、私はお母さんとお父さんみたいに

なれなかった

今日だって慌てるだけで

感情のコントロールとかもできてなかった」

「ウイが産まれた時にね

少しの間だけど、いい天気だったでしょ」


ウイの祖母が急に話題を変えると

いつのまにか

周りが静かになっていた


「たったあれだけの期間でも苦情が来たのよ

またか!とか、本当にこりん奴だ!とか

昔馴染みの鬼、麒麟、蛇、蜂、龍、鯱、狼に

エルフの原種達が揃いも揃って

その他が色々と総出で

お祝いを持って来たのよ」

「あれって、苦情だったの

お祝いに来てくれたんだと」

「本当はお祝いよ

ただね、アナタが産まれた時に比べて

マシ‥‥というか小規模過ぎだったから

からかいついでの苦情かしらね」

「おい!あんましッ‥‥なにしやがる!」


ウイの祖父が話を遮ろうとするのを

周りにいた昔馴染みがニヤニヤしながら

ウイの祖父を黙らせる


「大変だったのよ

産まれる2週間前から晴天!

産まれて3ヶ月間連続で晴天!

雨乞いを頼まれた神主が調べたら

すぐにわかって駆けつけて来たんだから」

「まったくのぉ

その時だけは、なんとかなったんじゃがのぉ」

「アナタが笑ったり、泣いたりしたら晴天!

抱いている時なんかね

本人は歩いているつもりで

足を動かしてるんだけど

少し浮いて移動してるしね」

「お主も似たようなモンじゃったろうに

娘を叱りつけるたびに嵐になって

瞬時に止むとかのぉ」

「あら?そうだったかしらね」


ウイの母親は初めて見る光景だった

周りからああだったこうだったと言われ

狼狽えながら答える両親を見ながら

少し納得したように笑う


「お母さんもお父さんも

私にあんなに厳しかったのに」

「なんだ!知らんかったのか!

いつまで経っても、ええ格好しぃめ!」

「お前達だって、そうじゃろうが!」


そこやかしこで

子供のような大人の言い合いが始まる

ウイの祖母は笑いながら

ウイの母親に問いかける


「こんな親だったのよ

どう?幻滅した?」

「なんだかわからないけど

でも、やっと追いついたって

感じがするだけかな」

「そうね

本当にわからないわね」


母娘は笑いあい

宴会は続いていく


次の日に全員が二日酔いになり

自慢の孫達から呆れられるくらいに

宴会は続いていった

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