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54話 誰に懸けた命

シンはルカに抱かれながら

眼下に広がっている

あんまり見たく無い光景を

半眼でジッと見ていた


海の深くて暗い方に

なんか大きい魚が

群れでグルグル回っている


偶に何匹かが海面近くに行って

なんか食べている


「あれって‥‥ブリでいいの?」


シンは聞いてみるが

ルカ、エル、ヒルは答えない


3人は怒りを抑えきれないって感じで

大きな魚達を睨みつけている


「なに?どうしたの?」

「アイツら‥‥挑発してんのよ」


シンの疑問にルカが答えると

エル、ヒルは頷きながら


「狩りから逃れて

ここらへんを好き放題に食べて」

「私達以外出てこないとなったら

手の届く距離で遊び始めたの」


シンは遊んでるとか

そういう風に見えるんだと思いながら

右を何気に向いて


「ルカ!逃げて!」


シンがルカの名前を叫ぶと同時に

ルカは横からの不意打ちを

ギリギリ回避するが

巻き起こった海流に

4人は揉まれる


右から来た大きい魚は

確実に4人を狙っていた


「デカくなかった今の」


シンは襲ってきた魚が

去っていった方を見ながら言うが

答えは返ってこなかった


エル、ヒルは種族特性である角や尻尾

ルカは目の下の模様が

怪しく発光し始めて

殺気が感じられるぐらいになる


3人は不意打ちもそうだが

お前達では無理だとばかりに

今まで姿すら見せなかったのに

今はルカ達を試すように

避けれるギリギリの攻撃をしてきた

生き死にの現場で?限度を超えてない?

舐めてんの?獲物の癖に!


3人が我を忘れかけた時に

ルカには後頭部ヘッドバット

右手でエルの顔面を

左手ではヒルの顔面を

シンはそれぞれを

ぶっ叩いていた


シンの攻撃は痛くはなかったが

ビックリして

3人は一旦正気を保つ


「‥‥何?シン」

「‥‥こんな時に」

「‥‥冗談はやめて欲しいの」

「アレに勝てんの?」


ルカ、エル、ヒルは

怒りを隠しきれない様子でシンに言う

シンは段々と自分達の所まできて

周りをグルグル回っている群れを見ながら

3人に言った


「さっきのヤツも大きいだけで

あんまり大した事ない」

「デカいやつも含めて」

「全部やってやるの」


シンは

そうじゃなくてと言わんばかりに

スッと視線を深い海底にむけながら


「私は呼ばれた理由がエサだから

エサになりきりたいんだけど

アレに食べられるのだけは

勘弁して欲しいわ」


シンの言葉に3人は下を見る


沈没船がある深さより

もっと深い所に何かいる


「早く逃げた方がいいかも

本当にエサだけになる」


シンが言った瞬間に

3人はシンを挟むように抱きしめて

全速力で魚の輪を脱出した瞬間に

4人がいた場所をデカい何かが通過した


どうやったのかは知らないが

デカい何かは海面まで突き抜けずに

また深い場所へと潜っていく


「アレがそうなの?」

「あんなのは無理!」

「ここら一体を

食い尽くして大きくなったの?」

「む〜〜!」

「「「ごめん!」」」


ルカ、エル、ヒルは

焦りながら喋っていたが

挟まっていたシンの抗議に謝罪して

シンへの拘束を緩める


4人は一塊になって

全速力で泳いだ


「誘い出しは‥‥何?」


喋り出そうとしたヒルをシンは見て


「追ってきてる!たぶん全部!」


シンは進行方向とは逆

足の方を見ながら答えるが

3人には見えない


「シンはどこまで見えてるの!」


そう言って3人は速度を上げる



シンは

後方から襲いくる魚を3人が見える前に

ルカ、エル、ヒルへと合図を送る


3人はシンからの合図があるから

回避は間に合っているが

3人が見えた瞬間に回避行動を取っていたら

ギリギリ避けれるかもしれないが

巻き起こった海流に揉まれ

動きが制限されている時に

別方向からくるヤツらに

やられているだろうと思う


「この方法って‥‥」

「知ってるの?」


ヒルがルカに聞き返すも

ルカは剣呑な目付きになって

歯を剥き出しにする


「じいちゃんと

ばあちゃんが得意とする狩りの方法だ!」


ルカは回避行動をとりながら

なんとか攻撃しようとするも

相手は手の届く範囲からは遠ざかる


それとすぐに

シンが合図を送ってくるので

3人は懸命に回避する

何回か相手から繰り返される行動に


「マネすんな!」


手が届かない

回避しかできない


「なんでよ!こんなヤツらに!

イヤだ!こんなの!悔しくてたまんないよ!」


ルカは水の中で泣いている自覚があった

こんなヤツらにマネされる程度だったの

そんなに私の憧れは安かったの

早くパパとママの所へ行って

コイツらを狩ってもらいたい


「へぇ‥‥あのアツイ夫婦って‥‥

こんなに弱いんだ?」


シンは足の方向を見ながら言って

3人に合図を送る


3人が回避行動を行うと

デカい何かが通過して

海流が乱された所に

少し小さい奴らが襲いかかってくる


「なに‥‥なんて言ったの?」


ルカはシンを強く抱きしめながら聞き返す


「アンタのじいちゃんと

ばあちゃんって

こんなのに負けるほど弱いの?

って聞いたのよ!」


エル、ヒルは

ルカがシンに対して

怒りの感情を向けているのが

ハッキリと見てとれたので


「シン!今は喋んないで」

「かなり行先をずらされてるから」


シンは足の方向を見ているので

ルカ、エル、ヒルからは

シンの顔は見えなかった


「シン‥‥意味がわからない!」

「アイツらは

アツイ夫婦の狩りをマネしてんのに

私達はまだ生きてるよ」


ルカの言葉に対してのシンの言葉に

ルカ、エル、ヒルは

アッ!って感じになる


「わかんないけどさ

確かにマネしてんのは

スゴイんだろうけど

人族のハンデ付きを狩れてないわよ‥‥

あのアツイ夫婦はこんなにヌルいの?」


シンは足の方を見ながら言うと

3人の動きが直線的から上下左右に

揺れるような動きに変わっていったので


「ちょっと‥‥なんの動き?

後ろのデッカいのが見えにくくなるわよ」

「いいんじゃない」

「いいのいいの」


エル、ヒルはのんびりと答える

同時にデカい魚が横を通過していく

魚だったんだとシンは思う


さっきのより少し小さい魚を

ルカが主導でフラフラと泳いでかわしていく


「大雑把には似てるけど

じいちゃんと

ばあちゃんは

こんな簡単に逃がしてくれないもんね」


ルカは言いながら

動きの主導権を握って

速度を少し落としたり速めたり

深く潜ろうとして

急に浮上したりしている


「シン!次来る時教えてね」

「タイミングを外したら駄目なの」


しばらくフラフラと泳いでいると

エル、ヒルからシンに要望がくる


シンは足の方向を見て


「少し遠くから速度上げてくるかも」


シンが言った瞬間に

3人は真っ直ぐに加速する

まるでフラフラと泳いで

弱った小魚が最後の力を振り絞って

逃げ出すように


「速い!」

「2秒待つ!」

「飛び上がりな!」


シンがデカい魚の速度が

今まで以上である事を報告しようとした時に

2つの何かから

すれ違い様にハッキリと

聞こえるように言われた


4人は少し潜って

垂直に水面を目指す


シンは水面から飛び出る時に

衝突音を聞いた気がするが

飛び上がって見た海の景色に

心を奪われて忘れてしまった


「わぉ‥‥」


暗い海面が広範囲に一瞬白く光り

次に紅く光って

光が一点に収束していき明滅した



「完敗だね」

「次からはお前らでやれ!」


ルカの祖父母がルカの両親に声をかける


「やってやるわ!」

「今回で自信がワイてきたぜ!」


ルカの両親は船の後方を見ると

3隻の応援の船が来てくれて

獲物を港まで運ぶのを手伝ってくれている


4隻の船で

氷漬けにされたデカい魚4匹を

引っ張っていた


3匹は船より

少し小さいぐらいのブリ

これでも記録に残せるくらいだが

1番デカいヤツは船よりもかなり大きかった


「ここら一体も静かになるな!」

「優秀なエサ達はどうしたんだい?」


ルカの祖父が笑いながら言って

ルカの祖母が船の中に目をやると

着替えてベットに横たわる4人がいた


「明日?もう今日ね

やり直しの初詣する事になったんですって」

「あたしらより多忙な奴らだね」


ルカの母親の言葉に

ルカの祖母は豪快に笑った



「お腹空いた〜」


まだ真っ暗な港をシンは歩いていた

色々なお店はあり

雑貨屋さんはやっているが

ご飯屋さんはまだやっていない


港はお祭り騒ぎで

獲れた魚を港に上げようとしていた


「かと言って‥‥

これ食べたら怒られるしなぁ」


雑貨屋さんに

置いてあるカップラーメンを見て

シンはむ〜っとなる


「じゃあよ!シンちゃん!釣りはどうだ!」


シンが後ろを振り返ると

ルカの祖父が長い釣竿を持って立っていた


「釣ってその場で食べるってのも

いいもんだぜ!」


ルカの祖父が

アゴをクイっとした先を見ると

テトラポッドが海の方に長く道を作っている


「あんな事の後だ!

のんびりとしようぜ」

「りょ」

「なんだそりゃ?」

「了解って意味です」

「ハハッ!わからん!」


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