53話 いつも通りでは無くなった時
シンは
後ろからルカに抱えられ
右手をエル
左手をヒルに握られて
暗い海にダイブした
「どお?シン」
ルカの声に目を開けて
シンはビックリした
魔術をかけれるプールで
結構な回数を
ルカ、エル、ヒルと泳いだが
コレは別格だとわかる
「じいちゃんと
ばあちゃんが作る魔術は特別性」
「魔術が漏れ出すといけないって事で」
「みんなでコーティングしまくったの」
ルカの説明にエル、ヒルが足していく
「ソレにしたってコレは」
シンは驚きながら周りを見ると
視界が100メートルとかでは
効かないくらい透き通ってて
なんかキュイキュイとか色んな音が聞こえる
「ここらへんを自由に泳いでって
言われてるから!
遠慮なく思いっきり行っくよ!」
ルカが言った途端に
ルカ、エル、ヒルは
プールとは違う速さと動きで
深く潜ったり
浅い所をゆっくり泳いだり
少し深い所を速く泳いだりする
「コレってなんの動き?エサ?」
「たぶん」
「ルアーかな」
シンの呟く様な疑問に
エルとヒルが答えてくれた
「エル、ヒルはなんでいるの?」
「凍らせ要員」
「いいのあげるから行ってこいって
おじいちゃんが」
そういえばと思って口にした
シンの疑問に答えながら
エル、ヒルはユラユラと泳ぐ
「シンも上手くいけば
アッツいのが貰えるよ!
パパから!」
ルカは言いながら
色々と動きや速さを変えて泳ぐが
シンに対してなんの負荷も無い
シンはすごいなとか思っていると
「あっ!あれなに?」
「んっ?アレは‥‥沈没船かなぁ
結構深い所にあるけど見えるんだ」
シンの指差した方向を
エルが目を細めて見ながら答える
「色んな人の魔術を
纏っているから混じってるの」
ヒルがシンの前に回って
シンの目を覗き込みながら言った
-1時間後-
「飽きた」
シンはエルに後ろから抱きしめられながら
グッタリして言う
「えっ?もう?
でも、相手が出てくるまで
こんな動きをしながら
泳ぎ続けてって言われてるから」
「あそこにいる魚じゃ駄目なの?」
説明してくるエルに
シンが指差しながら言う
指差している方向には
2、3メートルくらいの魚が群れで泳いでいる
「私としては
あんなのに突撃したくないけど」
「一度でも獲物を諦めたりしたら
癖がつくって
じいちゃんが」
シンはルカのその言葉を聞いて
さらにダラーっとする
「言いそう」
「アツイもんね」
エル、ヒルは笑いながら言う
「なんかさ‥‥緊張してない?」
シンは3人の顔を見回す
「それだけ大物なの!」
ヒルは
フンって気合いを入れて言う
「まさか‥‥戦わないよね
私は水の中では無力で非力な人族なのよ」
シンはちょっと手足をバタつかせて抗議する
「エサは誘うだけ」
「ヤルのは別なの」
エル、ヒルはルカを見ながら言うと
「パパとママが狩るから!」
シンは
私っているの?と思いながら
深い暗い海の底を眺めていた
「俺はよ!今でも反対だぜ!」
ルカの祖父は船の最後尾で海を見ながら
アグラをかいて座り
後ろで椅子に座っている
ルカの祖母にそう告げる
「わかってるよ」
ルカの祖母は
ため息をついて続ける
「アンタもわかってんだろう」
「フン!」
拗ねる旦那を見て
ルカの祖母は言う
「私だってね‥‥
こんな方法は悔しいんだよ」
この方法は私達の中でも
1番弱いものがエサになる
この方法で狩るまでに
幾多の狩り方がある為に
ここに至るまでに
いつもは狩りが終わる
私達が狙う獲物は
どちらかというと強者が多い
逃げの一手のみなんて珍しいが
たとえ相手が逃げようが隠れようが
コチラの全てを覚えるなんて事がある前に
コチラに向かって来るように仕向けて
狩れていたと思う
獲物を取り逃した
そんな事は自然との戦いだ
いくらでもある話だ
狩りの場では
そんな事が無いようにと
自分達を研ぎ澄ましていく
そうすると
獲物を思い通りか
予想通りぐらいの所で
コントロールできるようになっていった
慢心と油断
今回は相手が優れていただけなのだ
それでも、それを認めたく無くて
自分達が悪いように言ってみる
まるで‥‥そうまるで
それさえ無ければ狩れていたみたいに
たらればの話なのに
コチラ側の良いように話してしまう
納得はしていない‥‥違うね
納得ができない為に
今までの知り得た方法を
しつこく全てやった結果
こちら側の全てを
獲物に覚えられてしまった
私達が手を海につけたら
獲物の気配が薄れちまうくらいになってから
ようやく気付いた
ここまでやっても
できないなんて認めたくもない
そう思って
足掻けば足掻く程
自分達では駄目になっていって
結局は関係のない所まで
巻き込むほど意固地になっちまう
アイツらに任せたんだ
見てみようじゃないか
こんな言葉を吐いてみるが
結局は敗北宣言だ
私達ではどうにもならない
けど‥‥だけれどもだ
獲物は逃したくない
それがわかっているのか
旦那も最終的に折れたのだ
「はぁ〜‥‥
この歳になっても
まだ欲が尽きんときてる」
旦那が肩を落として
情けない言い方をする
心配だ!
だが見たい!
我々を超える所を!
私達がいなくても安心って所を見せてくれ!
狩りが危険って事はわかっているが
怪我すらしては駄目だ!
「相手が弱けりゃ
こだわらんのだけどね」
ルカの祖母はそう言って空を見上げる
「ルカ達の尻尾に
齧り付かせでもしてみやがれ!
焦げ付かせてやるからな!」
子共や孫、その周りに任せといて
いや‥‥丸投げしといて
この言い草はないと思いながらも
ルカの祖父は叫ぶ
「そろそろかね」
「今度はどんな方法で逃げるんだろうな」
2人が見る方向が同じになる
船の進行方向に対して
右側の離れた所に小魚が飛び跳ねて
その側をデカい何かが通過する
「あれで子供だからな」
「またデカく‥‥挑発的になってやがるね」
ルカの祖父母は剣呑な目つきになり
歯を食いしばる
「あれが出てきたって事は」
「信じて待つしかないね」
2人は立ち上がり
船の中に入っていく
「狩りの最中にお茶ってのも
オツなモンだね」
「違いね〜な」
そんなやり取りをして
剣呑な空気を少しでも
紛らわしながら
自分達が思い描く結果が出る事を祈った




