50話 それでも叶った事もある
広い会議室で
プロジェクターが映し出す動画を
3人の女性が見ていた
とある案件が話し合われた後で
座っている女性2人の前には
机に書類が何枚か置いてあったが
2人は動画をジッと見ていた
もう1人のスーツ姿の女性
カヤの母親が映し出されている動画の横に立ち
満面の笑みで動画を見ていた
動画はシン達が去った後の
喫茶店での出来事を映し出していた
〔カヤちゃ〜ん〕
真っ赤になったラフな格好の女性が
黒い斑点のある白い耳と尻尾を出して
丸くなっているカヤの肩を
片手で押す様にを揺らす
〔私達の事‥‥ねぇねぇ達の事を
カヤちゃんは大好きなんだ〜〕
真っ赤になったメガネの女性も
黒い斑点のある白い耳と尻尾を出して
カヤの前に回り込んで聞く
2人とも雪豹の獣人であった
〔ウッサイ‥‥シンのバァカ〕
姉達が言った事を
肯定も否定もせずに
黒豹の獣人であるカヤが
黒い耳と尻尾を出して真っ赤になって
ウゥ〜っとうめいていた
〔カヤちゅぁ〜ん〕
〔ダイチュキよぉ〜ん〕
ラフな格好の女性とメガネの女性は
カヤに乗っかって
頭や尻尾をカヤにスリスリしていく
〔いや!なにすんのよ!
もう子供じゃないんだから!
それにぃ‥‥シンの匂いがなくなっちゃう!
駄目!それだけはいや!だから離して!〕
カヤを押さえつけて
体を擦り付けてくる姉2人に
カヤは1度も勝てたことはないが
こればっかりは勘弁してと
言わんばかりに逃げようとする
カヤは力一杯抵抗するが
お腹、背中、首に
スリスリしてくる姉達相手には上手くいかない
〔やぁだよぉ〜ん
シンちゃんに負けないから〕
〔ウリウリ!こうなったらぁ〜‥‥
シンちゃんの匂い上書きするし〕
〔ギャ〜!離して!〕
3人のそんな姿を動画に撮りながら
スーツ姿の女性
カヤの母親は何かを思い出して
涙ぐみながら
〔私もするぅ〜‥‥
私も混ぜて〜〕
動画を撮りながら
姉妹達の上から覆い被さる様に
スリスリし出した
「という流れで
さっきも話した様に
CMに起用して良いのと
アチラが認めたデザインを
商品化しても良いという事で話がまとまったわよ」
カヤの母親は2人の女性の前でそう報告した
2人の女性は映し出されている動画を見ながら
「あの子達がこんな事になるなんてね」
髪を後ろでまとめて
少しスーツを着崩している女性は
動画から目を離さずに言う
「あの子達も
色々とあったでいいんじゃない?」
メガネをかけていて
スーツをキチッと着ている女性は柔らかく言う
「デザインはアチラのファンクラブに
所属しているカヤが通しやすいと思うので
社内で募集したものを選別して
送ろうと思うわ」
カヤの母親が言う事を聞き流しながら
「それにしてもあなただけズルいわね〜
私もここにいたかったわ」
髪を後ろでまとめている女性は
動画を指差して
ム〜っとむくれて言う
「話題をズラして
逃げようとしてるけど‥‥
あの子達と私もわちゃわちゃしたかった」
メガネをかけた女性は
ため息を吐きながら
ジト目でカヤの母親を見て言う
「可愛かったわぁ‥‥あぁ‥‥
本当に何もかも」
カヤの母親は
上を向いて、ほぅと息を吐き
恍惚とした表情を浮かべる
「動画だけでは足りない」
「すっごく足らない」
「私も‥‥もっとしたかった」
3人はそれぞれにため息を吐いて
悔しそうにしていたが
動画を戻して
シン、アキ、サキが映っている所で止める
「シンちゃん達が着ている
この服のデザインはカヤちゃんが?」
「作成も含めてしたらしいわ
まぁ、友達に手伝ってもらった所も
少しあるらしいんだけどね」
「それにしても
デザインが姉妹思いねぇ〜‥‥
シンちゃんには教えてなかったのよね?」
メガネをかけた女性は
メガネを外して拭きながら聞くと
カヤの母親が頷いて答える
髪を後ろでまとめている女性は
机に肘をつき、頬に手をついて
ダルそうに話す
「じゃあ‥‥まぁ‥‥
こっちはオッケーって事でいっか」
「そうね‥‥今回は‥‥
カヤちゃんのこういうことは
私達の範疇外だしね」
髪を後ろでまとめている女性は
ヒラヒラと手を振りながら
メガネをかけた女性は
少し納得いかない風にしながら言った
「わかったわよ‥‥
今度はカヤちゃんもいれて
みんなで話す時に動画を見せて‥‥
それでチャラって事でいい?」
カヤの母親は溜息を吐いて言うと
「「今回だけね」」
2人揃って言って
3人は笑い合う
子供達は仲が良かった
3人がまとまって
わちゃわちゃと動いているのは
本当に可愛かった
私達が抱きつくと
きゃ〜とか言いながら逃げるが
すぐに抱きついてくるのが最高!
本当に楽しかった!
そういう事が少なくなっていったのは
姉達が陸上を始めて‥‥
そこらへんからだったような気がする
娘は
カヤは姉達と同じ陸上を始めたが
姉達が残した記録には及ばなかった
姉達が二つ名をもらった時は
周りが勝手に妹であるカヤに期待した
カヤが一生懸命に出した
普通より少しだけ良い記録では
見向きもしなくなった
それがわかったのか
カヤはすぐに陸上を辞めた
飽きたと言っていたが
さぁ‥‥どうだろうか
子どもといえど
考えている事や
感じている事は
大人では計り間違う事もある
私がカヤに抱きついても
愛想笑いに見える顔を見せるようになり
しばらくすると
離してと言うようになっていった
子離れをしていかないといけないと思って
私達、母親は仕事をよくするようになり
娘達にあまり構わないようにしていたが
本当にそれが正しかったのかはわからない
カヤは服やアクセサリーに興味を持って
どこかに買いに行くとかで
話をしてきた時はお金は渡していた
理由は‥‥
なんか毎回誰かの言葉を引用して
しゃべっているような
カヤの言葉なのに
カヤと喋っていない
そんな感じになっていった
少し変わり始めたなと思ったのは去年の夏
小学生最後の年だった
なんか固定で遊ぶ友達ができたのか
負けたくないとか
協力した方がとか言い出して
ウジウジしたり
キッとかしていた
私ができた事といえば
いい友達である事を祈るばかりだった
今年の夏に仕事で煮詰まっている時に
オススメで上がってきた動画を見ると‥‥
最初は合成を疑った
公式から出されているので合成はない
そう思っても、何度も見てしまった
だって!ありえないでしょ!
団体競技で人族が
力解放した状態の原種を受け止めた上に
力解放した状態の原種が打ち出したボールを
打ち返す?平気って?人族なの?
その人族の子が種族違いの二つ名を貰い
グッズも出るとの事だったので
すぐにツテを頼って購入を頼んだ
CMの背景である机や棚とかに
蠍ちゃんのぬいぐるみを置いてみると
複数の俳優さんやカメラマンに
アレをもらえないでしょうかとか聞かれた
人族の子
シンちゃんが通っているのは開法学園で
同じ学年だからとカヤに話してみると
色々と当たりだった
シンちゃんネタで色々と話すと‥‥
ウズウズしながら
獲物を狙う様な目をして話すんで
狙っているとわかった
すべてわかった上で
出来なかったらどうするのかと聞いたら
すぐに
諦めないから!
と返してきたのよね
あの子が!?何かに夢中にね‥‥
内容は置いておくとして‥‥嬉しかった
それでも親としては
やれるだけのサポートはしてやりたいと思って
色々と渡していたけど
しばらくしてから
シンちゃんの母親から
グッズの売上金を使って欲しいと言われたと
カヤからは色々と返された
シンちゃんの母親は
グッズ交渉の時に話したけど
我が子が可愛いけど
旅をして学ぶこともあるから
見守っていると言う感じだった
‥‥見習いたいと思った
だけどTSに関して気付いてないのか
母親としては色々と複雑に思っているのか
色々とあるかな
社内で蠍ちゃんをどうにかできないか
というかスポンサーとして入り込んで
グッズを出さないかという話が出てきたので
カヤに聞いてみると
いいけどさ‥‥かわりに頼みがあるんだけど
と言われた
服の感想を聞いて欲しいと
会わすときに着て行くと思うので
聞き出して欲しいと
頼まれたというか
切実にお願いされた
結果はカヤちゃんが
襖の向こうで真っ赤になって丸くなっていた
シンちゃん達と話をしている最中に
襖を少し開けて
急かさないで欲しかった
笑うのを微笑んで誤魔化すのが
本当に大変だったんだからね
それほど気になっていたのに
デザインとか造りが
良いとか悪いではなく
カヤちゃんの心の内を
バラされたみたいな答えで‥‥
つられて姉達も駄目になっていたみたい
その後の光景は夢を見ている様だった
子供達が昔みたいに
わちゃわちゃしている
昔は普通に見れた光景
そして‥‥どうしても
本当に‥‥‥どうしても‥‥
もう1度だけでいいから
見たかった光景だった
どうか
いつか
お願い
そんな日が
来てほしいです
こんな単語を並べていた毎日
たまらず子供達に抱きつく
キャ〜と言って抱きしめてくれる
子供達が真っ赤な笑顔で!
涙が出る!けどもう1回!
もう1度抱きしめる!何度でも抱きしめる!
もう!大好き!ダイチュキ!
とある通信会社が
CMに起用したのをキッカケに
二つ名『蠍』のスポンサーとなり
会社からも
オリジナルデザイン
【種族ファンクラブ公認】が出る流れとなった
会社からは
蠍ちゃんのぬいぐるみも何種類か出ており
どれも予約分で生産終了となったが
再販を熱望されたのは
蠍ちゃん三姉妹だった
双子の白い蠍と
白い蠍より一回り小さい蠍ちゃんシリーズは
開法学園文化祭に来ていた人達によって
姉妹の存在は確認されている為
ファンクラブからも認められる事となった
再販を熱望された中で1番人気は
叩かれた頭に大きい絆創膏をつけている
涙目の蠍ちゃんを
慰める双子の白い蠍ちゃんのセットは
種族ファンクラブでも検討されていた
通信会社のホームページには
非売品と大きく書かれた札を立て
その横に飾られている
ぬいぐるみの写真が掲載されている
大きな蠍が
胴体の横に大きい尻尾を地に垂らしている
その大きい尻尾を枕に蠍ちゃん三姉妹が
少し重なりながら寝ていた
大きな蠍は母親かもしれない
鋏には写真が挟まれており
母親蠍さんは写真を見ながら笑顔で泣いている
写真を持っていない方の鋏では涙を拭いている
ホームページに掲載されている
写真の角度からは
母親蠍さんが
どんな写真を眺めているかはわからなかった
過去の写真か
それとも最近の写真か
はたまた写真から想像される事を
思っての事なのか
製作者の意図はわからない
そんな作品が
ホームページに掲載されていた




