49話 届けと願った事もある
シンは姉達と駅前で軽く昼ご飯を食べて
開法学院の文化祭を姉達と回っていた
開法学院に帰ってきた時に寮に行ったのだが
遠目で寮長の所に人が集まっていた
悪い予感しかなかったシンは
着替えを諦めて姉達と文化祭を見て回っていた
姉達も着替えていないので
蠍ちゃん三姉妹が文化祭を練り歩いていた
シンが中学の校舎に行くのを躊躇っていると
姉達が高校の方へと誘ってきたので
まぁ、それならと姉達の後ろを
ノコノコとついて行った事を
シンは後悔していた
「こ‥‥これが蠍ちゃんなの」
「ちっちゃ!」
「こっち向いて!」
「ヤバ!不機嫌だ!」
「三姉妹の写真って!売れそう!」
アキ、サキのクラスがやっている
たこ焼き屋に連れて行かれて
あまり客がいないからと
店員さん総出で接客されていた
シンの目の前には
たこ焼きが一船置かれており
爪楊枝をたこ焼きに突き刺しながら
シンは半眼で食べていた
「いやぁ〜
連れてきてって言われてたからさ」
「シンってば
笑顔を忘れてるよ」
アキ、サキは不機嫌そうに
たこ焼きを食べてる妹を宥めていた
「別に‥‥
美味いから良いけどさ」
ムスッとしながら食べるシンを
アキ、サキが頭を撫でている
それを見ていた周りの生徒が
ブツブツと言いながら
携帯で写真を撮っていた
家帰ったら‥‥妹を撫でくりまわそ
ウチは弟だから、嫌がるだろうな
姉に絡んだら、本気で締めてくるからなぁ
ああ‥‥でも‥‥
なんか嫌がる妹を撫でくりまわしたい
なんか不穏な言葉が出てきたので
シンはたこ焼きを食べて
ご馳走様でしたっと言うと立ち上がって
教室を出ようとしたら
アキ、サキに肩を掴まれた
「「コレとアレ忘れてるよ」」
「コレ?‥‥‥アレってッはぁ?」
シンはアキが持っているプラカードを渡され
サキが指差している方を見ると
列が出来始めていた
「題して!蠍ちゃんと絡んでパシャ!」
「たこ焼きの代金+αで1枚までOK!」
シンは半眼で列の先頭を見ると
さっきまで接客してくれていた店員さん
つまりはアキ、サキのクラスメイトが
携帯を持って並んでおり
最後尾は教室を出て廊下へと続いて
クラスメイトとは違う人達が
列を作り始めていた
「いくらよ!いくらで妹を売ったのよ!」
「ヤダなぁ〜、妹よ‥‥‥」
「妹を売る姉なんてねぇ‥‥‥」
アキ、サキは荒ぶるシンを押さえつけて
教室にある一段高い場所に連れて行く
「私達も一緒に働くからね」
「そぉそぉ、姉妹で頑張りましょう♪」
シンはアキ、サキの言う事に
不機嫌そうなにしながらも
渡されたプラカードを掲げる前に
書かれた文を見て叫ぶ
「アネェ!働く気あんのか!」
「キャ〜!怒った!」
「クラスメイトからは
オプション付きでもらってるから!
やるよん!シン!」
シンが動きにくい服を着ている事をいい事に
アキ、サキはシンをガッチリと捕まえて
一段高い所で2人は獣のポーズをとる
〔たこ焼き+αのお値段で
蠍ちゃんと記念写真
別途料金で姉妹と獣のポーズ〕
シンはプラカードに書かれた文をもう一度見て
次に姉がとるガォーのポーズを見て
「コンセプトは‥‥?」
「無粋な事言わんでいいから」
「楽しめばいいんよ」
シンの疑問にアキ、サキは呆れた様に言って
両脇からシンに軽く体当たりをして
ポーズを促すと
順番待ちをしていたクラスメイトが
シンの後ろから抱きついて
「はぁい!ガォ〜〜ン!」
咄嗟にガォーのポーズをしたシンと
アキ、サキ、クラスメイトは
前に立って掛け声を出したクラスメイトに
写真を撮られた
周りの人も4人を携帯で写真を撮っていた
嫌な予感は‥‥
いや、確信はしたんだよなぁと
シンは正座しながら天井を見る
進学科の教室
中央に置かれているフカフカ座布団の上で
シンは制服姿で正座して
目の前には笑顔のウイ達が立っていた
時間は夕方
シンは、さっきまで寮にいたのに
ウイ、ルカ、エル、ヒルの進学科メンバーに
クラスまで連行されて
今日の品評会が始まった
エル、ヒルがぬいぐるみと
フィギュアを持ってくる
「コッチと」
「コッチが一位を取ったので贈呈します」
シンはエルが持っているぬいぐるみを見る
鋏と尻尾の先からは血が滴ったっていて
目は何かを睨む様に
獲物を探す様に周りを見渡し
まるで戦士の様な装いである
エルが抱き抱えている
大きな蠍のぬいぐるみ
名前はデストロイヤーサソリちゃん
次にヒルが持っているフィギュアを見る
台座から透明な棒で
支えられた蜂と蠍のフィギュア
2体のフィギュアが
空中に浮く様に固定されていた
どういう仕組みか羽が光っていて
喜んでいる顔の蜂光ちゃんが
グッタリとして、目をバツにしている
蠍ちゃんを抱えて飛んでいる
名前は蜂光ちゃんと蠍ちゃんのじゃれ合い
「コレを?どうすんの?」
シンはウイに聞くと
「シンの部屋に飾れそう?」
「勘弁してよ
大きさもだけど
作りが良すぎて夜中に見たら
ビックリするわよ」
ウイの提案をシンは腕をバツにして却下する
「私の所で」
ルカは何かを思いついた様に
けれども嬉しそうにエルから
ぬいぐるみを受け取っていた
「あとはコレだけど‥‥」
「じゃれ合い‥‥っていうよりも」
何人かが言い淀むが
「エサの運び方よね」
ウイがハッキリと言うと
笑いが起きる
「けど、人気が高いの」
「デストロイヤーサソリちゃんと並ぶ程なの」
エル、ヒルが
じっくりとフィギュアを見ながら言う
「最近、討ち取られたよね」
ルカがご機嫌で
デストロイヤーサソリちゃんを抱っこしながら
鋏を掴み、シンに向かってシャーって言う
「コレは討ち取られるっていうより
仕留められてるでしょうが」
「まぁ‥‥そうなんだけどさ
シンの部屋に飾っとく?」
シンがルカの持ってるぬいぐるみの頭に
軽くチョップして言うと
ウイがどうするといった風にシンに聞く
シンは改めてフィギュアを見ると
蠍ちゃんには何もないのに対して
蜂光ちゃんは羽が光るし
少し動くし、針も出し入れ可能と
なんか主役がそっちというか
製作者が蜂光ちゃんが好きな人かもしれない
シンはそう思って
飾る場所をウイ、ルカ、エル、ヒルに告げる
4人は言ったシンを見て
吹き出す様に笑い出した
「ばあちゃん‥‥シンが飾っといてだって」
管理室の一室で
ポーがテーブルの上に
置かれたフィギュアを見ながら
アグラをかいて座っている
「まぁ‥‥飾るぐらいなら良いよ
‥‥あの子は知ってるわけじゃないよね」
「なわけないじゃん
‥‥まぁ、コレが出てきた時に
リン達はわかってたみたいだけどさ」
ポーは祖母に言って
フィギュア部分に注目しながら
慎重に台座の部分に魔力を流し込む
蜂光ちゃんが変形していき
笑顔だったのが、戦闘モードの顔に
蠍ちゃんを持っていない
空いている手に2本の黒い針
羽は金色に光出す
「よく考えるモンだね
ん?‥‥少し足らないんじゃないかい?」
ポーの祖母はフィギュアの台座に触って
ポーと一緒に魔力を流し込むと
〔私の名は蜂光だぁ!〕
蜂光ちゃんが喋り出したので
2人は吹き出して魔力を流し込むのをやめる
「アイツは相変わらずだね
私とポーの波長を持ってる
アイツならできる事だね」
「まぁ‥‥‥‥よくできてんじゃん
蠍ちゃんがこうなのは、許せんけど」
ポーの祖母に同意しながら
鼻声で話すポーの頭を祖母が撫でる
「感想でも良いから送ってやんな」
「気が向いたら‥‥まぁ‥‥そのうち」
ポーの祖母は孫の素直じゃない所が
久々に見れて嬉しくなり
頭をかき混ぜる様に撫でていた
有名な造形師一派がいた
オリジナルのデザイン、イラスト
風景、キャラなどを生み出しては
形にしていく
機械では出せていない
こだわりという名の職技を使い
魔力を流すと変化
変形するという魔技を使い
見る人を
選ぶ人を
悩む人を
買う人を
魅了していった
そんな一派で
空想の空間を作る事で
評価を得ていた造形師が
夫であるイラストレーターに頼んで
デザインしてもらい
一点だけフィギュアを作ったという
どこにも公表していないはずだし
品物もわかっていないはずなのに
造形師が最近入ったファンクラブに
関係があるはずだと盛り上がった
出典されたフィギュアを見た人は
魔力を流して変形する事に驚いたり
造り込みの深さに関心したりしていた
作った人を知らなくとも
造りを評価して投票していった
一派の名は蜂の巣作り
とある界隈では有名な一派だ
〔だからね!お母さん!
聞いてるの?あの子がね!
スッゴイことよね!コレってばさぁね!
やっぱりさ!お母さんとポーの魔力が
合わさった時に反応する様に作って良かった!
正直言って、ダメ元だったし
お母さんかポーに届いて欲しかったんだけど!
でもでもでもね!やって良かった!
でね!ポーがスゴかったって!
あの子が私の作品になんか言うって
初めてなんだよ!聞いてるの!お母さん!〕
ポーの祖母は電話をテーブルの上に置いて
テレビを見ていた
電話から聞こえてくる声は
大きな声なので置いていても聞こえる
「ああ‥‥聞いてるよ」
たまに相槌を打つ時に
電話に顔を近づけて喋るだけ
あとはテレビを見ながら
時折、お菓子を食べている
電話の向こうでは
ポーの祖母の娘
ポーの母親が興奮して話している
何回目かわからない話に
何回も相槌を打つ
ポーの祖母は疲れた様に携帯に話しかける
「もういいかい?寝かしておくれ」
〔駄目よ!お母さん!ここからが良い所なの!〕
娘のポーから
すごかったよと
一言だけ送られた話で
ここから良い所という所までいくのに
3時間もかかるのかいと
ポーの祖母は思いながら
「本当にブンブンと
うるさいったらありゃしない」
〔だから、電話ですましてんじゃない!
一緒にいたら‥考えただけでも恐ろしわよ!〕
文化祭2日目の朝
珍しくアクビをしながら掃除する寮長が
管理室の窓口横に
アクリルケースに入れられた
フィギュアを置いていた
そのフィギュアケースの前には
今日限定と書かれたプレートが置かれていた




