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47話 こんな事もある

明日から文化祭が開催される

準備の終えた進学科の教室は

蠍と蜂のぬいぐるみで溢れていた

数的優位は蠍だったが

蜂と対立している蠍は涙目が多かった


進学科の展示会では

展示物に対して投票が行われる事となり

そこで1番になった物はシンに贈呈され

その後はファンクラブでグッズ化される

ファンクラブ限定ではあるが

ネットにて販売するらしい


シンはそんなに買う人がいるのかと思ったが

会員の総人数は恐ろしくて聞けなかった



ファンクラブには

公式である学校のファンクラブと

昔からある種族ファンクラブがある


学校の方は本人が学生の時だけ

活動して卒業と同時に解散する


種族の方は本人が卒業後に

段々と規模を縮小していき

大半は形だけを残して活動を停止するが

人気のあるファンクラブは

毎年いくらか買われているグッズの金銭で

運営されていた


種族ファンクラブができる前は

有名な二つ名にファンがついても

グッズ化されないという事あったらしく

大会や選手がいる学校に

クレームが相次いだこともあった


現在のファンクラブは

ルールの下に整備されており

本人への交渉や

色々な物が欲しいかどうかのアンケート

グッズ化できない場合の告知等も行っていた



今回の人気は蠍だけではなく

伝説の蜂光グッズが復刻して

蠍と一緒に出るからとの事だった


蠍ちゃんへの異様な盛り上がりは

昔、憧れていたのに手に入らなかった

二つ名のグッズが復刻したので買いたい

そういう年配の層が盛り上がったり


蠍ちゃんを最初に作り

ファンクラブに提供した老舗呉服屋が

お店のホームページの端に掲載したり


とある通信会社が

独自に作ったCMに

蠍ちゃん(食事中ご機嫌バージョン)が

一瞬ではあるが映り込んで

話題になったりと

色々な事が短期間で重なり合って

盛り上がってしまった


期間限定であるのと

本人の許可が必要という事だったのだが

全国大会の表彰式の後に

蜂光が公認していると

種族ファンクラブと公表した事で

年配の層が、また盛り上がってしまった



シンはお風呂に入って

寮の部屋で机に向かいながら本を読みながら

どうにかして明日休む方法を

ぼやっと考えていると

ドアがノックされる


返事すると

カヤがドアを開けて入ってきて

シンが何か言う前にカヤが抱きついてきた


「離して、カヤ」


カヤは無言で椅子に座った状態のシンに

腕を回して椅子に拘束すると

シンのお腹に顔をくっつけてスリスリとする


「何?カヤ、どうしたん?」


シンはカヤの背中に腕を回して

優しい感じで背中をポンポンと叩く


「ねぇ‥‥シン‥‥

お願いを聞いてほしい」

「絶対嫌よ!離して!」


シンは途端に暴れ始めて

カヤの腕から逃れようとするが

カヤは拘束を解かずに話を続ける


「なんで!なんでよ!シン!

ここは優しい感じでぇ〜

頭とか背中を撫でながらぁ〜

私をたっぷりと甘やかしながらぁ〜

『うん、いいよ‥‥カヤちゃん』

って、言うとこじゃないのぉ〜?」

「アンタらの行いを

ちゃんと思い出してから言う事ね!」


シンは、カヤの腕の中でもがくが


「いいもぉ〜んねぇ〜

シンがお願いを聞いてくれるまで

スリスリしちゃうんだからねぇ〜んと」

「この!離せ!」


カヤはシンをギュッと抱きしめながら

お腹に埋めた顔をゆっくりと動かし始める


「シン‥‥いい匂い‥‥安心する‥‥

お返しに私の匂いをつけるから

シンの匂いを私につけちゃっていいよね」


カヤの力が強くなり

顔というか体を擦り付けるような動きに

シンは、くすぐったくなって


「ちょ‥‥やめてよ

カヤ‥‥くすぐったいってば」


段々と鼻息が荒くなっていくカヤに

抗議しながらシンは

ふと視線を感じて、ドアの方を見る

ドアの隙間から4人が覗いて‥‥

5人‥8人と積み重なり増えていく


どういう仕組みになっているのかわからない

シンが不思議そうに見ていると

ドアが開いて、見知った顔が入ってきた


「なんで、全員いるのよ」


思っている事を、そのままシンが言うと

シンにしがみついて離れないカヤが

ブルブルと震えて怯えていた


「あのね‥‥あの‥‥違うのですのよ‥‥

そう、手違いですの‥‥

本当はね‥‥本当は‥‥

途中から違うかなと思ったのです」


カヤが変な事を言い出すと


「おいでよ、カヤ」

「お約束通りにしてあげるから」


ウイ、ポーがシンからカヤを引き剥がして

首根っこを持って引きずっていき

その後をエル、ヒルがついていく


「少し我慢してね」

「私達も我慢したの」


エル、ヒルが不敵に笑いながら言うのを

聞きながら、シンはサリとリンに


「何が始まるのよ、一体」


と聞くと、2人は首を横に振りながら


「要求だけを伝えると言ったから許したのよ」

「仲間内の裏切りは悲惨な末路を辿りますわ」

「いや、わからんって」


少ししてから

カヤの声になっていない断末魔が寮に響く

そんな断末魔を聞きながら

シンは呆れ顔になっていた



「いや、あのね、シン

明日さぁ、母親と会って欲しくてさぁ」


カヤはアグラをかいて座り

おそらく叩かれたのであろう頭の部分を

尻尾で撫でながら言う


「いつぐらい?」

「朝の10時に

駅近くの喫茶店らしい」


カヤは携帯をいじって地図をシンに見せる

シンは明日から始まる文化祭に

行きたくはなかったので


「いいよ、別に」


シンが軽く言ったのを聞いてカヤは


「本当に?やった!」

「ただ話すだけでしょ?」

「挨拶したいんだって」


それぐらいなら

すぐ終わるだろうし

ゆっくり帰ってくれば、文化祭をサッと回って

楽しい雰囲気だけ味わえるだろう

進学科に近づかなければの話だがと

シンは考えていると


「そういえばシンは

文化祭は誰かと回ったりしないの?」


ヒルがそんな事を聞く


「別にないわよ、ヒルは?」

「私達は展示会で色々とやる事があるの」


シンはそんなに忙しいのは

なんか申し訳なく思って聞いてみる


「ファンクラブの幹部かなんかなの?」

「言ってなかったっけ?」

「創設メンバーだよ」


ポー、ウイがフンッと胸を張る


「広告とか、交渉とかもやってるんだ」

「色々とお婆様とも話もしていますの」


アヤノ、リンが言うと

エル、ヒルまで胸を張る


「なんかすごいわね」

「今回は特に

ポーのおばあちゃんが関わってるからね」

「復刻は人にもよるけど、今回はスゴイから」


シンが褒めるとサリ、カヤも胸を張って言う


「それに他の種族名は稀だから」


ルカは言いながら

シンの後ろから抱きついた


その後は文化祭が終わったら

どうするとかを適当に話しながら解散となった



文化祭当日の朝早くに

シンはベットに誰かが乗った感触で目を覚ます


「シィ〜ン、鈍ったんじゃない?」


うつ伏せでベットに寝ていたシンは

ガバッと起きようとして

上からの重みで再び布団にうつ伏せになる

アキがシンの上に乗っていた


「アキネェ、なんでここに」

「実家にいる頃は部屋に入ったら

すぐに起きてたのにねぇ

悲しいねぇ妹よ」


サキはシンに話しかけながら

机に着ていた上着を置いて、シンを見る


「サキネェも‥‥何‥‥なんで」


アキはシンの上に乗りながら

シンを身動きできない状態にする

シンは脇を固めて防御姿勢になる


「今日はね、良い知らせを持ってきたの」

「この体制で言う事なのソレ?」

「良い口をキクようになったわね〜」


アキはシンの背中に指で

のの字を書きながら不敵に笑う


「お小遣いがアップします

とある条件を聞いてくれたらだけど」

「本当に!‥‥って条件があんの?」


サキは椅子に座ってシンに語りかけた

シンは一瞬喜ぶものの

半眼になって姉達を見る


「私達がお母さんにお願いしたのよ

でもね、タダは駄目って話になったのよね」

「お友達にお昼を作ってもらっているのも

いくらか材料費を出そうって

話になったのよね」


サキ、アキは続けて話す


シンは考えていた

確かにそうだ

皆に材料費出せないから

何も出せていないから、いらないって

何度言っても作ってくる

みんなで集まって食べるお菓子とかも

家から持ってきたとか言って

お金を受け取らない


気兼ねなしに

変な罪悪感みたいな気持ち無しで

エル、ヒル、ルカ、ポー、アヤノが

作ってくれたご飯を食べたい!

だって!美味しいもん!

お菓子も遠慮なく食べたい!



「何をすればいいの」


シンはいい話に飛びつきたい気持ちを

グッと抑えて言うと

アキ、サキは頷いて


「まぁ、これは私達のワガママなんだけど」

「今日は私達と同じ格好をして

遊んで欲しいのよ」

「同じ‥‥カッコ‥‥ウ」


ゴスロリの事だ

だが、ここですぐにうんと言ってしまって

要求を上乗せされた事など何回もある


「お小遣いはいくらまで上がるの?」

「5,000円!

それ以上は交渉と今日の態度だって」


5,000円!今の2倍以上!

駄目だ!いきなり喜ばないで

ちゃんと段階を踏まないと

とシンは思いながら

ゆっくりとう〜んと考える振りをする


「わかった、今日はアネェ達に合わすよ」

「「さすが!我が妹!可愛いよん!」」


アキ、サキは言いながら

寝転んでいるシンに抱きつく


「ちょ‥‥やめてってば」


シンはニヤついていたが

アキ、サキはさらにニヤついていた

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