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44話 女王の甘い想い

「こう考えると‥‥

私ってさぁ‥‥チョロいのかなぁ」


机に突っ伏しながら、ポーは呟く


「いまさらどうしたんですの?」


突っ伏しているポーを

机の横にだって腕を組みしながら

見ているリンの返しに


「いまさらって何なん?いまさらって」


ポーは顔を上げて、リンの方を睨むが

また机に顔を伏せる


「でも‥‥ねぇ

まぁ、いまさらよね」


いつの事だったか

そんな言い方が当てはまらないほどに

いまさらなのだ


「またきてたんですの?」

「断ってるよ、そっちもでしょう」

「そうですわね」


リンの問いに

ポーは呆れたように答えて

リンが同意すると

2人して溜息をつく


この時期になると

ファミリーへの誘いが偶にくる

特に大会とかで有名になった者には

ファミリーの主である

本人が誘いに来たりする


「まだ2年なのにね」

「もう2年ですのよ

昔からの知り合い同士は

決めてしまう事もある時期ですわね」


リンが肩をすくめて言うと

ポーはリンをチラッと見ながら


「へぇ〜、来たの?」

「断ったら‥‥

色々と問い詰められましたの」

「で?」

「詳しくは話してませんのに

高校で決めなさいと言われましたわ」


リンの顔は少し赤くなっていた

ポーは起き上がって

椅子の背もたれに寄りかかる


「ウチのとこもなんだけどさぁ‥‥

ホント〜にチョロいなぁ〜

私達って」

「いまさらですわよ」

「そうだったぁよっと」


ポーは立ち上がると

教室の出入り口へと向かう

リンもポーの横に並んで歩き出す

2人は廊下をゆっくりと歩きながら


「終わったら、今日はシンの部屋?」

「そうですわね

お風呂に入ってから来ますわよね」


ポーは少し考えて、ニヤッと笑っている


「最近さぁ

嫌がるシンに抱きつくのが

癖になりつつあるなぁ」

「この前は部屋の端に追い詰めて

涙目でイヤイヤって‥‥

まぁわかりますけども

本当に嫌われたらどうしますの?」


リンに言われて

ポーは身震いしながら


「それだけは、それだけは!

マジで嫌だから月1にする

だから一緒にお風呂で我慢する」


何かを決意するようなポーを

リンは呆れながら見て


「なんか、それもおかしくありませんの」

「まぁいいじゃん

それよりも今週末も泊まりに来るんでしょ?」

「恒例にしていきますわ」


2人は廊下で別れる所まで来た


「じゃあね」

「また後で」


ポーはリンと別れると

さっき考えていた事を思い返す



自分の二つ名は嫌だった

憧れの祖母が持つ二つ名

それかそれに似た名前が欲しかった


でも残影

祖母も皆もスゴイって褒めてくれた

なんでかわからないが

落胆はすごかった


そんな気持ちを誰にも言えなかったからか

段々と何かが溜まっていく

そんな気がしていた


つまらなくなった

色々な子とおしゃべりするのも

剣道を頑張るのも

皆は笑ってくれるから、たぶん楽しいはず‥‥


蜂族でも特別な生まれだから

容姿もよく似てて

祖母と母親と同じだから

何をしてても皆によく思われる


そんな立ち回りを

自然としていたかもしれない

でも、なんか色々とバラバラになっていく

気持ちが追いついていない

なんか冷めた自分がいる

そんな感じがした


祖母の前でやる気がない様に演じたら

構ってもらえるとか

元気ないように演じると

周りに構ってもらえるとかで

欲しい物を手に入れるやり方がわかった


そう思うと

そう演じると

自分が、ますますつまらなかった


バレーを見に来てと言われた時も

顔だけ出しておけばいいか

後で話し合わせる時に楽だもんねと

軽く考えて、体育館に行った気がする

たぶん‥‥そうだったはず

そこは思い出せない


シンに会えたから


実在しているか怪しかった

だから、会えた時に体を触りまくった

なんなのかわからない

なんで、自分が

こんな行動をとっているのかもわからない

だからこそ知りたくなった


シンがコッチに来るってなった時は

オシャレとかおしゃべりとか頑張った

もしかして、私に会いに来てくれたとか

こうしたら見てくれるとか

こう話したらコッチを向いてくれるとか


思い違いだったのかも知れない

だけど頑張った、頑張ったのに

あんまり会えなくなっていった


本当になんでかわからないけど

我慢できなくなった

一度だけ、一度だけでもいいから

会いたくて、見たくて

シンの住んでる町に会いに行った


でも‥‥だけど‥‥会えなかった

連絡したら会えたかもしれない

けど、コッチが思ってる事と

相手が思っている事が

違ったらどうしようとか思って

すごく怖くなった


自分がわからなくなって

本当に意味も訳もわからなくなって

帰ったら祖母に泣きついた


「まったく厄介な事になるよ‥‥コレは」


祖母が宥めてくれている中で、口にした言葉

本当に駄目なことをしたんだと思った

メチャクチャ泣いた

諦めきれないけど、駄目なんだと思って

諦めようと思って頑張った


でも無理だった

何が無理かわからないけど


中学1年の剣道全国大会の時

日程が重なって見に行けない予定になった

本当に‥‥気が気でなかった


負けた理由は集中力が無いと監督に怒られた

話半分で駆け出した

体育館に向かった

間に合えば見れる

会える、抱きしめたい、しゃべりたい

私を見てほしい


なんか止まらなくなっていった



思い返せば

ここらへんで引き返せなくなったんだなぁと

廊下から見える中庭の景色を見ながら

ゆっくりとポーは歩く



シンが二つ名を知っていてくれた

スゴイって

二つ名を持っているポーは

スゴイって、言ってくれただけ


ただそれだけなのに

溜まっていた何かが吹き飛んで

駄目な所も全部肯定された気がして

抱きついた、抱きしめていた


全部この為に溜めてたんだとか

誰と話してても

絶対に1番楽しいのはシンとか

部活終わりにシンに抱きつくと

嫌がって逃げるシンを見て

ゾクゾクする気持ちを楽しんだり

追い詰めて涙目になるシンが

楽しくなったり

その後で笑いあって抱きつくのが

本当に嬉しくて、楽しい


誰がなんて言おうと気にしないけど

シンにだけはよく思われたいとか

シンが絡むと全部良くなって

シンが絡まないと楽しくないとか

思う様になっていった

いやぁ〜‥‥なっちゃったなぁ


「マジで‥‥本当にチョロいなぁ〜」


そんな言葉を使う様になってしまった

今から部活して

シンに抱きつくと嫌がるけど

その後に寮のお風呂に一緒に入るので

なんか部活を頑張って

いっぱい汗をかいてやろうとか

思えてしまう


「一目惚れなのか‥‥

好き好き症候群なのか」


祖母が厄介な事になると言っていた事に

名前をつけるとこんな感じになる


なんにせよ

ダントツの1位が決まってしまった

それ以外には

何にも感じなくなってしまったけど

最近ではダントツの2位も出来た


「厄介な女なんだからさぁ〜

本当に気をつけてよ、シン」


中庭を知らない子達と

歩いているシンを見ながらポーは言う


最近はTSを起こそうと誓いあった子達以外と

何かをしているシンを見ただけでイラッとくる


自分でもおかしいとは思う

思うけども、シンに嫌われない程度に

この気持ちをぶつけていきたい


でもね、シンなら‥‥シンだからこそ

絶対!全部を受けとめてくれるよね!


「今日は防具を着て

ランニングだけしよっと」


暑い季節の終わりが近づき

秋が始まろうとしている


そんな時に開法学園中等部の3階廊下では

笑顔で寒気を振り撒く残影が

部活に向かって行った

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