37話 調子に乗ると駄目
宗鳳学院の校舎は山の中腹に建っており
複数のグラウドや体育館は
校舎よりも低い所に転々とあった
そんな体育館へと結ぶ道を
短パンに白シャツ
薄手のパーカーを着たシンは歩いていた
シンは朝早くに目覚めたので
泊まっていた宗鳳学院の宿舎から
朝のランニングも兼ねて
勘を頼りに色々とまわっていた
別に迷子とか言うわけではない
だだの散歩だからと携帯も置きっぱなしにして
いい眺めの山道をサクサクと進んで
帰ろうとしたら、何回も分かれ道があって
どっちから来たかわからなくなり
色々な宿舎の名前が書いた看板を見て混乱したので
大きな建物を目指して歩いているだけである
体育館みたいな建物が近くなり
人が増えてきたので
シンは、ひとまず案内板がないか
ウロウロと体育館の周りを
宗鳳の制服を着た人達に紛れながら
歩いていると
「アンタ‥‥開法学院の‥‥」
シンは正面から来た人に声をかけられる
「‥‥誰?」
「やっぱり!シン・フジムラさんだ!」
宗鳳の制服は着ているが
派手なギャル集団にいた1人が
シンを指差して小走りに近寄ってくる
「私!‥‥あ!わかんないか!
紫尾だよ!宗鳳学院の!」
「は?変わりすぎて、わかるわけないし」
「そういうアンタもオーラ消しすぎだし!
‥‥しっかし、ホントちっさ!」
「ウッサイ!」
紫尾はシンとやり取りをしながら
シンに近づいて頭に手を置こうとするが
シンは頭に手を置こうとする紫尾から離れて
手が届かない様に距離をとる
「んで、アンタってば
何してんの?休みでフラフラしてんの?
あ〜〜!まさか!迷子とか!」
紫尾がシンに近づいて
再度、頭を撫でようと手を伸ばすが
シンに避けられる
「‥‥宿舎って
どこにあんのよ」
姉達と同じで、こういうのは
サッサと離れた方がいいと思ったシンは
知りたい事を聞き出そうとするが
「ええ!ホントに迷子?
ん〜〜っと、開法が泊まってんのは〜
‥‥ねぇ?誰か知らない?」
紫尾が驚きながらも
さっきまで一緒にいた派手なギャル達に聞く
少し離れた所で見ていた派手なギャル達は
紫尾を手招きで呼んでから
小声で紫尾と話して
全員で気合いを入れる様にガッツポーズをした後に
「知ってる子がいたから
連れて行ってくれるって
送ってあげるよ!シンちゃん!」
シンは紫尾が元々高かったテンションを上げて言ってくるのを聞いて不安になるも
早く帰らないと心配されると思い
「ありがとうございます」
礼を言って素直に従う事にした
「どお?美味しいっしょ!」
「まぁ、美味しいけども」
シンは宗鳳学院のデカい食堂で
朝ご飯を紫尾達と一緒に食べていた
紫尾達について行ったシンは
ご飯食べてかない?奢るよ!
ここのは美味しいから!
マジでオススメ!1回でいいからさ!
ホラホラ!コッチで!そのままで!
はい!コレを着て!コッチはしてあげるから!
ホラ!動かない!お姉さん達に任せなって!
優しくしてあげるから!
初対面なので、ほんの少し躊躇していたら
一気にやられてしまい
宗鳳学院の制服を着せられて
その上に着ていたパーカーをおり羽織って
いつもより短くしたスカートを履いて
髪に色々とアクセサリーもつけられて
髪型もギャル風に変えられた姿で
シンは朝ご飯を食べていた
「マジで可愛いじゃん!
ホラ!コレもつけてあげる!」
紫尾はシンの横に座って
ご飯を食べながら、シンのほっぺに
ラメ入りのシールを貼る
「アンタらね!
ご飯食べたら、サッサと連れて行ってよ!」
「わかってるってば
‥‥にしても、宗鳳の制服も似合ってるし
マジで可愛いじゃん!
来年はウチに来たら?」
シンは半眼になり、紫尾を睨むと
周りにいる紫尾の友達がケラケラと笑う
シンは不機嫌そうにするも
ご飯は美味しいので、バクバクと食べていた
ご飯を食べていると
シンのナナメ前に誰かが座ったので見ると
メガネをかけて、キチンと制服を着ている
宗鳳学院の生徒で黄天だった
「この前はすまなかった」
「前も聞いたし
別に何回も謝んなくていいです」
黄天がシンに頭を下げて謝罪してきたので
シンはご飯を食べるのをやめて答える
「しかしだな‥‥」
「あの後、謝ってもらったし
それでいいかなっと思ってるんで」
黄天とシンのやりとりを周りは
ニヤニヤしながら聞いていた
「コイツってば、マジでかたいのよ
昔からさぁ、ねぇ!」
「こういうのは
しっかりしときたいんだ」
紫尾が黄天をおちょくるように言うと
黄天は紫尾に真剣に言う
シンはそんな様子を見ていると
紫尾とは反対の隣に座っているギャルが
2人をガチガチの優等生とユルユルな劣等生と言っていた
「そんな事はいいから
何かできないか?個人的に何かしたいんだ」
「‥‥‥‥なんでもいい?」
「できる範囲ならなんでも」
シンは黄天の言葉に
少しイタズラ心が芽生えた
備え付けの味噌汁をズズっとすすりながら
黄天と紫尾を見る
「アンタらが格好を交換して
今日1日過ごすでどう?」
「は?いや、それは」
「は?なんで私まで!」
シンに黄天と紫尾が抗議した瞬間に
周りにいた派手なギャル達や
その他、話を聞いていた数人が
ガタッと立ち上がる
「待て!やめて!いや!お願い!
ヤダ!そんな格好!
またお父さんとお母さんに怒られるから!」
「ちょ!このメイクに何時間‥‥連れてかないで!
いや!標準って何よ!アタシのポリシーなの!
アンタら!悪ノリすんなぁ!」
黄天と紫尾は色々と叫んで抵抗したものの
何人かに引きづられて行った
シンの横に座っているギャルは
笑顔で、シンの頭を撫でながら
何か食べる?と聞く
「ギュウドン」
シンは笑顔でそう返してギャルと笑い合った
しばらくして
派手なギャル姿で
短いスカートの裾を片手で押さえ
もう片方の手で、半分のハートを作る黄天と
ガチガチの宗鳳学院標準制服を着て
メイク無しのおさげ姿
伊達メガネをかけ、不貞腐れた紫尾が
片手で作った半分のハートを
黄天と合わせてハートを作る
その周りをギャル姿のシンや
派手なギャル、宗鳳の学生、先生達まで
一緒になって、ノリノリでポーズまで決めて
何十枚も写真を撮っていた
「コッチ向いて!」
何回も要求されていたので
シンはノリノリでポーズを決めて笑顔で振り返ると
リン、アヤノ、サリが立っていた
3人とも携帯で写真を撮ると
冷たい目をしながら無言で
どこかへと送信していた
「‥‥あのね
‥‥コレはね」
「帰るわよ」
「シン」
「早くして」
ポーズはそのままに言い訳しようとしたシンを
リン、アヤノ、サリがシンを捕獲して連れて行く
「ちょっと!服!このままって!」
「いいから」
「あんまりだよ!シン!」
「ルカ、カヤ、ウイが爆発してる
エルとヒル、それにポーがヤバいかも」
アヤノの肩に担がれたシンは
宗鳳学院の制服をどうするか聞くが
リン、アヤノは聞く耳を持たず
サリは携帯に送られてくるメッセージを見ながら
うわ〜っとした感じの顔になる
シンは連れ去られながら
さっきまで仲良く写真を撮っていた
宗鳳学院の人達を見るが
シンに向かって手を合わせ
祈っていた
「ちょ!マジ!助けてよ!誰か!」
叫びながら、姿の見えなくなったシンに
「自業自得だし」
紫尾が少しズレたメガネの位置をなおしながら
半眼でそう言った
宿舎に帰ると
正座しているシンの目の前に
通話状態にしてある携帯を
サリに置かれた
モクや主将、部員達は
ギャル風の宗鳳制服姿で
正座するシンの姿を携帯で写真を撮っていた
「どうしたの?シン?」
「ホラ?ポーズ取んないと」
「写真撮られた時はいい笑顔だったじゃない」
リンが腕組みをしながらシンの頭上から言うと
アヤノ、サリはさっき撮った写真をシンに見せてくる
「アレは‥‥」
〔言い訳しないで!〕
〔言語道断〕
〔信じてたのに〕
〔ヤなの〕
〔ヤなの〕
〔ちょっと目を離すとコレなの〕
言い訳というか、説明をしようとしたシンに
携帯の向こうから矢継ぎ早に言葉が飛んでくる
シンが何か言おうとしたら
リンに通話状態にしてあるシンの携帯を目の前に置かれる
どうやってロックを解除したのかという疑問よりも
通話先の相手が問題だった
〔シィーンちゃぁーん〕
〔シンちゃんってば‥‥
悲しいわぁ〕
「なんで‥‥サキ、アキ姉‥‥」
〔こういう格好が好きなら〕
〔言ってくれれば、こんな雑じゃなくて
もっともぉっと可愛くしてあげたのに〕
「違うの!聞いてよ!」
そこから先はシンにとって
逃げ場の無い追求と要求‥‥搾取の時間だった
どんな事を説明しようとも納得してくれず
要求されて、渋々飲んだら
さらに要求される
その繰り返しだった
シンは何度も
「私が何したって言うのよ!」
と言って反論したが
ポッと出の奴らの要求が飲めるなら
私達の要求も飲めるわよね
これからは遠慮しないから
との事だった
シンは何か言おうとしたが
〔因果応報って知ってる?シンちゃん〕
「今の状況で使い方あってんの!それ!」
母親から言われて、そう返すのが精一杯だった




