33話 ゆっくりと刻み進む時
8月の中頃となって、全国大会が近づいてきた
開法中学バレー部は地区大会を勝ち抜いて
全国大会が近づき
全国大会のトーナメント表が発表されると
気合いがめっちゃ入っていた
1回戦の相手は去年3回戦で負け
その後優勝したチーム
去年は開法学園で決勝だったので
優勝するのをバレー部全員が目の前で見ていた
相手チームの名前は宗鳳学園
開法学園と対をなす学園だった
ひと足先に行われていた剣道の全国大会で
ポーは優勝した
そのお祝いとバレー部員達のプチ壮行会を行うという事で
お出掛けと買い物、カフェでのお茶会に行く計画が
立てられていた
プレゼントとかを送り合うという提案もあったが
友達同士では誕生日が毎月のようにくるので
誕生日やお祝いは誰かの部屋でお茶会とかになっていた
ほぼ毎日のように誰かの部屋に入り浸ってはいたが
その時には時間を決めていたが
誰かの誕生日があった週末は無制限にしていた
駅での待ち合わせの為
変な像から水が出る噴水の近くの影がある所で
シンは携帯を見ながら待っていた
「毎回、待ち合わせなのは何でなのかなぁ」
外で遊ぶ時はいつもこうなる
早めにくるシンが
みんなを迎えるという事ばかりのような気がする
シンは呟きながら
携帯から視線を上げると少し離れた所に
アロハシャツにハーフパンツ姿
サンダルを履いて、グラサンをかけた2人の男性が
マッチョマンがよくやるポーズをとっている
まぁ、夏だしそういうもんかとシンは思いながらも
もう一度携帯を見て
ふと周りに人の姿がない事に気づいた
なんとなく、シンは振り返って歩き出した
歩き出した先に人がいる事がわかったので
携帯から視線を上げて、避けようとするが
避けようとした人物の姿に立ち止まってしまう
年配の女性なんだが
アロハシャツに柄物のスカート
サンダル履いてグラサンをかけていた
シンはとてつもなく悪い予感がしたので
右を向き小走りに走ろうとした先に人が立っていた
若い女性なんだけど
アロハシャツにホットパンツ姿
サンダルを履いてグラサンをかけて
髪型は頭の上で結んで
パイナップルみたいになっているので
ファンキーな見た目に仕上がっている
スタイルは、かなり良いので
なんかある意味で迫力がある女性が
シンの目の前で腕を組んで立っていた
何で?って、思いながら立ち尽くすシンに背後から
ルカが話しかけてきた
「シン!」
助け船がきたと思い
シンは、声がした方を振り返って
シンは絶望感がジワリとやってくるのを感じた
「宴の時がきたのよ!」
ルカは
アロハシャツにホットパンツ姿
サンダル履いてグラサンをかけていた
立ち姿も腕組みをしていて
なんかテンションMAXに仕上がっている
シンの背後からは
マッチョマンポーズをとっていた男性2人も
いつの間にか近づいてきており
またマッチョマンポーズをとっている
シンは、かなりヤバイと思い
年配の女性の横を素早く走り抜けようとするが
「思い切りはいいがね」
シンは1歩目で
正面から柔らかく年配の女性に抱きしめられて捕獲される
「1番来ちゃいけない所に来たね」
「何で?ちょっと!説明してよ!」
シンは年配の女性に抱きしめられ
もがきながらルカの方を向いて抗議したら
「ばあちゃん!
私達のなんだから駄目って言ったのに!」
シンは後ろからルカに抱きつかれ
サンドイッチにされたので、クエッ!と声を上げる
「これがシンちゃんか!小せえなぁ!オイ!」
「お母さんに突撃って、アンタ!熱いわね!」
マッチョマンポーズをとっていた若い男性が
大きな声でシンに話しかけてくる
ファンキーな女性は腕組みをしながら胸を張って続けて喋る
シンは意味がわからずパニックになっていると
マッチョマンポーズをとっていたもう1人の年配の男性が
上から覗き込んでくる
「シンちゃんよぉ!」
「なによ!」
「オメェは熱さが足りねぇ!
だから!宴だぁ!」
言い返すシンに年配の男性は
マッチョマンポーズを取って叫ぶ
「ウッサイ!!暑いのよ!」
「はっはっはっ!いいねぇ!熱いぜ!」
シンに叫び返されて
年配の男性は筋肉を揺らしながら笑った
「紹介するわ!シン!
ばあちゃんにじいちゃん!
そして!パパとママよ!」
ルカに紹介された4人は
それぞれが得意とするマッチョマンポーズを取る
ルカのおじいちゃんは
シンを肩車していたので、少し控えめな感じになっている
「おろしてって言ってんの」
「熱くなったらな!
そしたら、おろしてもいいぜ!シンちゃん!」
シンが頼むも
ルカのじいちゃんから訳がわからない返しが
何度も来る為にシンは諦めかけている
少し人通りが戻り始める噴水の近くで
あの後すぐに友達全員が集まったから
ルカが紹介する
皆んなは、久しぶりですとか
お元気そうでなによりですとか話していた
シンの状態は置いといて
「アンタ!どうよ!あの子は?」
「ちっさいがやるって聞いてるぜ!」
ルカの両親はそんなやり取りをしている
「アンタらね!ここは陸だよ!
もう少し静かにできないのかい!」
ルカのばあちゃんがそう言うと
「かあさん!宴なのよ!」
「そうだ!前夜祭なんだぜ!」
ルカの両親は抗議した
「前夜祭でこんな調子って
本祭はどんな事になるのよ」
シンは言いながらふと思いつく
「そういえば
ここらへんでお祭りってあったっけ?」
シンは肩車されているので
下の方に見える友達に聞くと
ルカが、とびっきりの笑顔で答える
「もうすぐアッツいのが来るわ!シン!」
「え?ホントに?」
期待を込めて聞き返すシンは
皆んながシンを向いてニヤついてるのを見て
首を傾げた
「「「「「「「「「バレーの全国大会よ!」」」」」」」」」
一瞬、シンは呆気にとられるが
「お祭りを聞いたのに、何でよ!!」
「いいね!アンタら全員!熱いよ!」
ルカのばあちゃんは、全員を見て、笑顔で返してきた
「久しぶりだな!」
「まったくだ」
「元気にしてるんなら
まぁいいがよ」
ルカのじいちゃんが
笑いながらアヤノの祖父の背中をバシバシと叩く
そんな光景を見ながらキセルを咥えて
ウイの祖父も笑っている
「もうちょっと連絡が取れないのかい
半年に1回くらいでもさ」
「まぁ、そう言わんでものぉ
久方ぶりに会えたんじゃ祝おうじゃないかのぉ」
「お!その話し方!いつぶりだ!」
リンのお爺様の肩を持ちながら
双子の祖父は笑う
ルカのおじいちゃんが言うと
全員が笑いながら、そう思ったと言い
杯を掲げて打ち鳴らす
「うめぇな!オイ!そうだオメェの孫だ!
今年は熱かったぜ!」
杯を空にして
ルカのじいちゃんは叫ぶ
視線の先には寮長がいた
寮長
ポーの祖母は杯をルカのじいちゃんに向けて少しあげて
酒を飲む
「ったく、あの娘は去年はヤル気がなかったのに
今年はコレだよ」
「それもそうだ!でも今年は熱かったよ!
それで‥‥アンタの現役とどうだい?」
ルカのばあちゃんは、ポーの祖母を見て聞く
「さてね、昔の記憶はよく見えるし、それにさ」
ポーの祖母は、杯に入った酒を見ながら
フッと笑い
「あんまりね
覚えてないってのが正直な感想かね」
皆は笑い、私達もそういう歳になったと笑い合う
「しかし生きてる内に集まれるとはな」
アヤノの祖父、リンのお爺様は
ルカのじいちゃんが持っている空の杯に酒を注ぎ込む
「しっかしのぉ
お前が来るとワシらの娘達が不機嫌になるからのぉ」
「まったく、今日はシンちゃんが怒っていましたよ」
双子の祖父母は困った顔をして
ルカの祖父母に抗議する
「そのシンちゃんだけどね‥‥
ルカちゃんから送ってもらった動画を見た時は
良かったんだがね」
ルカのばあちゃんが溜息を吐く
ルカのじいちゃんも溜息を吐いて続ける
「やる気も無ければて‥‥熱さもねー!
ホントに同じ人族か?と疑うレベルだったぜ!」
ハタと、そこにいた全員の動きが止まる
「そう見えるわよね」
リンのお婆様が答える
「やる気もそうだが
‥‥牙も無いように見えるしな」
アヤノの祖父もふぅと溜息を漏らす
「目標だったものが目の前から
消えて無くなりましたからね」
アヤノの祖母は、ん〜と思い悩む
「まぁまぁ
双璧も選ばれなかったレギュラーにはいるんだろう」
「ベンチにはいるらしいんですが
ボッ〜としているらしいですよ」
リンのお爺様が持ち上げようとしても
ウイの祖母がやれやれと言った感じで話す
「人族の限界か
それとも、目標だったものが
なくなっちまったせいかぁ」
「話には聞いたが、二つ名かい?
そんなものにこだわって、この有様じゃね」
ウイの祖父が言う事に
ルカのばあちゃんが厳しく言い放つ
「小学生までとはいえよ!
人族がワシらに混じって良くやった方だ!
だが!最後がよくねぇ!」
ルカのじいちゃんが
両腕を掲げてムンッと筋肉を盛り上げながら続ける
「勝ってこそだ!
勝ってこそ、人生は熱くなるってもんだ!」
ルカのじいちゃんは、はっはっはっ!と笑う
「お前は変わらんのぉ」
「お前は変わりすぎだろ!」
ルカのじいちゃんと双子の祖父が言い合って笑うと
ずっと静かに飲んでいる年配のエルフ族に皆の視線が集まる
「なんだ?」
「変わらんと言えばオメェさんも変わらんみてぇでよ!安心したぜ!」
「久しぶりの顔が揃うと聞いたから
急いで、駆けつけたんだぞ」
ウイの祖父に言われて
ムッとした感じで
年配のエルフ
サリの祖父は言い返した
「アンタの娘も孫もそんな感じだし
よく似てるね」
ポーの祖母は呆れている感じだが
嫌な気はしていない、そんな感じだった
「それで、クラブに所属したんだろ」
「サリちゃんからお願いされたら
入るしかなかろう」
アヤノの祖父に言われて
サリの祖父はそう返すと
アヤノの祖父は、相変わらずの娘、孫バカめと
笑いながら酒を煽る
「んで!会員の番号は何番なんだ?」
「会長だ!当たり前だろが!」
「懐かしいな!生徒会長!」
「本当にお似合い」
ルカのじいちゃんに問われ
したり顔でサリの祖父は答えると全員が
イヨッ!会長!と笑う
そうやって、全員は何年振りかの再会を喜んで笑い合い
宴は盛り上がった
昔はこうだったとか、いやいや若い時はとか
同じ時間を過ごした者にしかわからない話をする
そんな合間に、こそっと誰かが
「それでもね
期待はしているのよ
シンちゃん」
店の奥の棚をみて、何人かは笑った




