30話 聞こえる変化
シンはリン、アヤノ、サリに連れられて
寮の前まで来た時に
モクと見知った顔の6人が追いついて来た
「シン、ちょっと話をいいだろうか?」
後ろから抱きついていたサリの腕から解放されながら
「何ですか」
シンはブスっとして、半眼で聞き返す
言葉使いは、やや戻っていた
「バレーをやってみないか?」
「よくこの状況で、それを聞きますね」
シンは、モクを見て次の言葉を待ってそうなので続ける
「私はエンジョイ勢で遊びでやるって決めてます
人族ですし、わかるでしょう?」
「しかし、今日の入部選考会ではトップで通過している」
「入部選考会?」
シンはグリンと首を回して周りを見るが
誰とも目が合わなかった
「知らなかったで、お願いします」
シンはモクに向かって頭を下げて、パッと上げると
「それにゼッケン捨ててからの点数は無しだと思います
では、失礼します」
サッと言い切ると、寮に入っていった
シンの後をリン以外が追って寮に入って行った
「たぶん、入部しますわ」
「エッ」
モクは、驚いてリンを見る
「ここまで来て、ここまでされて
あの子達が許す訳がありませんから
私も含めてですが」
リンはモクにサッと頭を下げて、寮に入っていく
モクは、どうしようか迷うが体育館の方に足を向ける
「‥‥それにしても、悪の組織を倒したら
次は身内か」
そんな言葉を笑いながら言って、走っていった
シンは、晴れやかに自分の部屋に入って
後ろから押されて、コケそうになる
「何?どうしたの」
「座って」
後ろから押してきたルカが
神妙に言ってくるので言われた通りに
シンは部屋の真ん中あたりに座る
「あれは何?」
「ああいうのはやめて」
エル、ヒルに言われるもシンはわからない
「なんの話よ」
「デレデレしてた」
「あれはやめてよ」
ポー、ウイまでわからない事を言ってくる
「なんで!許しちゃうかな!」
カヤは怒気を含ませている
「だから!なんなのよ!」
本当に身に覚えのないシンは
逆に怒ってどうにかしてこの場を乗り越えようと考え始める
「シンはわかってない」
そう言いながら
ルカはシンの正面から抱きついて
シンを抱きしめたまま後ろに寝転がる
ちょうどシンはルカの上にうつ伏せで寝るような形になる
「何これ?汗かいてるからやめてよ」
シンが、ルカから離れようともがくが、ビクともしなかった
「えい!」
「この!」
エル、ヒルがシンの横方向から覆い被さる様に飛び乗る
エルはシンの背中あたりに
ヒルはお尻から足あたりの上に乗って
シンの動きを封じ始める
「くっ、なんなのよ」
「シン?バレーはやってくれる」
もがいているシンに対して、ルカが静かに聞く
「え?なんで今?」
疑問に疑問が重なってわからなくなっていると
「はいと言うまで積み重なります」
「ドンドンと重く、苦しくなるよ」
エル、ヒルが笑いながらシンに言ってくる
2人の笑顔も怖いけど、声も怖い
それに何を言ってくれてんの
私は、やらないったら、やらないわよ
‥‥でも‥‥待って
次がアイツらだったら
「嘘‥‥‥」
シンは目だけを動かして
次に乗ろうと準備をしている2人を見てしまった
「ねぇ、シン」
「何が嘘?なの
わからないわ‥‥教えてよ」
双璧
中学生としては高身長なアヤノ
中学生としては高身長なサリ
質量がデカい2人が飛び込む準備をしている
「何かシンにとって不都合でもあるの?」
「黙ってないで、答えてよ」
駄目だ‥‥黙って!動いては駄目!
シンは、必死になって脱出の糸口を探る
「もしかして、太いとか」
アヤノが言った言葉にもシンは動かない
「重いとか思わないわよね、シン」
サリが言った言葉にどう答えようかと
「‥‥‥‥‥ちがッッッぐん」
ビターンと双璧が覆い被さってくる
「「間が!嫌!」」
シンは、フッーフッーと息をする
鍛えた身体で耐えていると双璧はグネグネと動き出す
「怒ってんの」
「さらに増したわ」
なんでこんな目にあわなければならないの
理不尽よ!でも私は耐える!
耐えて自由をっと上を
天井を見上げるとリンがいた
「シン、私も嫌ですのよ
あんなにデレデレするシンは」
笑顔でワキワキと指を動かし始める
「私もなのよ」
「これからああいうのは無し
じゃないともっともっとするから」
シンからは双璧が邪魔で見えないが
靴下を脱がしているのはカヤ
脇腹はウイ
上からリンが
シンの脇に目掛けて手を入れてくる
「くうぅっっっっ!はぁ!ひっく!」
強制笑顔の拷問が始まった
息を吸うために力を緩めると涙が出る
涙を我慢するために力を入れると息が出来なくなる
そして常に全てを邪魔する笑いがやってくる
もう駄目だ‥‥
嫌だ‥‥認めて楽になりたいよ‥‥
何もやっていないのに!
何にも悪いことしてないのに!
こんな辛いのは嫌だよ!
バレーをやると言えば、要求を飲めば‥‥‥
駄目!ここを!ここさえ!
乗り越えれば明るい未来が‥‥‥
霞む視線の先に自分の手を匂うポーがいた
「シン、私は急いで来たの
‥‥あなたに会いたくて
それなのに‥‥それなのにアレは許せない!」
アレは駄目だ
今呼吸は絶対にしなくてはならないのに
ポーの今だけは駄目だとシンは思った
「剣道の後に急いで来た私の感想を聞かして欲しいの」
ポーの手がシンの顔にゆっくり向かい始める
「3ヶ月よ!」
シンが叫んだ言葉にポーの手が止まる
「へぇ‥‥3年の間違いじゃなく?」
「譲歩!慈悲を!」
シンからは、ポーの手は禍々しい何かに見えた
それがまたゆっくりと動き出す
期間が短すぎたのか
シンは、フッーフッーという息の間を縫って
「4ヶ月!」
「残念よ、シン」
ポーはそう言いながら、手の速度を早める
「半年」
「まぁ、こんなところか
いい子ね、シン」
許されたのかとシンは安堵してポーを見ると
笑顔でシンを見るポーがいた
シンの上に乗っていた
アヤノ、サリ、エル、ヒルも順に退いていき
リン、ウイ、カヤも手を引いていく
シンは助かったと思っていると
ポーの手がシンに向かい始める
「いや!いや!なん!
‥‥駄目!この距離でもう駄目よ!」
シンが逃げようとしても
ルカにガッチリと捕まえられて身動きが取れない
「ルカ離して!あなたも‥‥」
「シンとならいいよ」
シンがルカに抗議すると
笑顔のルカがポーの右手に口と鼻を押さえつけられて
クッサ!と叫ぶ
シンは顔の前にきた禍々しいポーの左手を
顔を振って拒むも捕まえられて
クッサ!っと断末魔を残した
「それにしても我ながらくっさーい」
ポーは、自分の手の匂いを嗅いでみんなで笑い合った
「マジでヒドイ目にあった」
シンはそんな事を言いながら
寮の部屋にある備え付けの机に並べてある本や文具を見る
昨日のうちに並べたものだ
「ヨシッ」
気合を入れてダンボールからコルクボードを取り出した
向こうでも使っていて
何枚か貼ったけど結局は剥がして
しまっておいた物
「ここがいいかな」
机に座って、よく見える壁を見たら
小さな穴が開いていた
前の人が画鋲を刺した跡が残っている
シンは、その小さい穴に画鋲を強く刺して
コルクボードのヒモを引っ掛けて吊るす
真っ直ぐになるように微調整を終えた後に
コルクボードを指差しながら
「うん‥‥次は満杯にするのが目標かな」
そう呟くと携帯にメッセージが届く音がした
シンは部屋にある姿見の前で服装をチェックする
備え付けの鏡
古く汚れて見える鏡に
新しい制服を着た自分が映る
シンは髪をいじって、制服の裾を払う
もう一度、携帯にメッセージが届く音がして
「ハイハァイ、急ぎます」
机にあった携帯を持って
画面を見ながら部屋を出ていく
今から皆んなで行う制服の撮影会
コルクボードに飾る写真が決まった気がした




