3話 夢中になる①
携帯の画面に通知が出てくる
携帯の持ち主である女の子は、あまり気にした風もなく本に書かれた問題の答えをノートに書いていく
場所は図書室で勉強している
机の対面の席には
携帯の持ち主と髪の色が違うだけで、そっくりな女の子が座っていた
「見ないの?」
赤い髪の方がたずねる
「ただのアラームだから」
手を止めずに白い髪の子が答えた
「休憩?なんか買いに行こうか?」
赤い髪の子が提案すると白い髪の子は手を止めて赤い髪の子へと視線を向け
「忘れたの?バレーの試合の応援に来てって言われてたでしょ」
「あー‥‥って!もう3回戦始まってるんじゃない?休憩がてら行ってみない?」
白い髪の子は少し考えて
「今日の分は終わってるし、少しだけ覗きに行こうか」
そう言い終わると2人で同時に伸びをして、机にある教科書やノートを片付けて、椅子から立ち上がる
「どうせ4連覇もするでしょうから」
「応援の意味あるのかな」
そう言いながら、2人だけの図書室を後にした
「あっ!可愛い」
寮の玄関脇で金髪ショートの少女は髪先をいじり携帯を見ながらそう呟く
画面はネットショップの服が映し出されている
「でもなぁ、はぁ〜」
携帯をポケットに入れ空を見上げる
「何してんだい?とっとと行っておいで!」
視線を声のした方に向けると玄関前を掃き掃除している女性と視線がぶつかる
「はぁいはい‥‥わかりま「ハイは一回!」」
掃き掃除をしている女性に注意され、少し拗ねた顔をしながら
「はい‥‥」
返事をすると、金髪ショートの少女はゆっくりと歩き出していく
「そんなんじゃ終わってしまうよ」
「たぶん、もう終わってるよ」
空を見上げながら頭の後ろで手を組み
速度を変えずに体育館の方に歩いて行く
「どーする」
「別に」
「行くなら行くわよ」
少女達は3人で歩きながらお互いに
どうするかを聞いている
「て言うか、体育館の方に向かってない?」
ギャル風の少女が2人の前に出て
振り返って、後ろ歩きで話しかける
「別に」
無表情で黒髪の美少女は同じ答えを口にする
「あなたが誘ったんでしょ」
銀髪の美少女が言うとため息を吐く
3人は容姿が整っており
すれ違う異性、同性が振り返る
「まぁまぁいーじゃん」
歩く方向を変えずに3人は体育館に歩いて行く
少女達6人は体育館の2階応援席入り口で出会う
「来たんだ」
「まぁねー」
ギャル風の子が声を掛けてると
金髪ショートの子は答える
6人は同じ小学校で顔見知りではある為
軽い会釈程度の挨拶をすますと
黒髪の子がデカい扉を開ける
開けた扉の向こうは異様に盛り上がっており
歓声が上がっている
「なに?」
銀髪の子が2階の応援席から見えるコートを見ると選手は各々のベンチに集まって汗を拭いたり、ジュースを飲んでいる
「得点」
黒髪の子が指差しながら言うと
5人は指の先を視線で追う
「セット取られてるし、デュースっていうのかな、多くない?」
ギャル風の子は首を傾げながら
5人に問いかける
白髪と赤髪の子はカバンからワイヤーレスイヤホンを取り出して携帯を操作する
他の4人も同じ行動をして耳にイヤホンを付けた瞬間に少しだけ顔をしかめる
【さぁ!どうした事だ!二つ名持ちが3人も
いて4連覇までまっしぐら!に待ったがかかったのか?】
音量を上げてもないのに大音量で流れる
それほど熱量がすごかった
【次が泣いても笑っても最後のセット!
開法小学がストレートに勝てない!セットを取られる!こんな事はもう3年以上無かった事です!しかも取ったセットは彼女を避けて取ったセットです!】
ブザー音が鳴り、6人はコートを見ると
選手達がコートに戻り始めていた
【さぁ!王者開法が追い詰められる!
今年で1番と言っても過言ではない面白い試合も終わりの時が近づく!咲川小からのサーブですね】
肩で息をしている子がボールを下から打ち
高いボールが開法小のコートに飛んでいく
【咲川小の得点パターンから始まったぞ!
さぁ、開法!打つのは雷姫か双璧か?
相手コートで彼女がリズムを取って待っているぞ!】
開法小がボールを受けて
ネット際の子がトスを上げる
6人は実況の言葉につられて咲川小のコートを見ると、コートの真ん中後ろ辺りで小さい子が髪を紐みたいな物で縛った姿で左右に揺れてリズムを取っている
髪のボリュームがすごいのか団子が四つ繋がっているみたいに見え、それが左右に揺れている
【トスが雷姫の方へ上がる!打った!
受けたシン選手が吹っ飛ぶもこの光景は
何度も見た光景!構えた!行くか?やるか?】
シンと呼ばれた小さい子は自コートの後ろ側外へと飛ばされるが、ボールはネット際の選手の頭上に浮かび上がっている
シンは吹っ飛ばされながら空中で一回転し
少し滑りながら着地する
姿勢を低くし両手を前の床に着き獣が飛びかかる前の姿勢に似た格好をすると、オーと観客席から声が上がり、手拍子まで起こる
トスされたボールが高く上がって落ち始めるくらいにシンが駆け出す
6人はこの時の実況を聞いていたが覚えていない
小さい子、シンと呼ばれた少女が低い姿勢で走り出し、その速度も飛ぶタイミングも早すぎると思った次の瞬間
「たっかっ!」
誰かが呟いていた
ゴッと音が鳴り、ブロックに入った双璧が届かない高さから開法小コートに叩き込まれた
打ったシンは着地の時に前回りをしながら床を転がって、立ち上がり自分のチームとタッチしている
歓声が上がり拍手が起こる
亜人達は強い者には等しく称賛を贈る
特に強者に挑む挑戦者には尊敬すら抱く
誰かのイヤホンが落ちた
6人は小さい、おそらくは人族の少女シンから目が離せなくなっていた




