表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/47

28話 続けさせたい物語

「ふーむ」


犬の獣族女性は

75番のゼッケンを付けている小さい選手をみて

考え込んでいた


「印象が違うけど、格好はそうなんだな」


雷姫から入部選考会でのお願いをされた

選考会をする時に来る選手で

どうしても入れたい子がいると頭を下げられた

原種である雷姫に頭を下げられたのだ

その姿を周りの部員達は驚いて見ていた


だからと言って、コネとかでは入部させられない

ある程度の実力が無いとダメだと言うと

雷姫は動画を持ってきた

その後、みんなで動画を見てわかった

初等部全国大会で

去年、一昨年の台風の目と言われた子だった


「しかし、本当にやる気がないんだな」


前の全国大会、確かにあれは環境が悪かった

もしくは

突飛な実力をひけらかした彼女が悪かったとも言える

極端に、そう言うしかない程の結果だった


ウチに入ればあんな事はとさえ思ったが

このまま辞めても仕方ないとも思った

そんな折に雷姫からの頼みだったが

雷姫は当日、騙して連れてくる

でも、その先が思いつかない

彼女はエンジョイでやるつもりでいると


「どう転ぶかは知らんが、許可はしたよ」


私達が興味を持ったのは

人族の中でも小柄な子が

力を解放した雷姫のボールを受けた事だ

みんなで動画を何回も見たが、信じられないと今でも思う


犬の獣人女性は

視線をコートに戻すと信頼のおけるバレー部主将と目が合う

お互いに頷き合うと

主将は75番の選手の方へボールを持って向かって行った


「‥‥なんだろうな

なんか、悪の組織って感じで‥‥アガるね!」


犬の獣人女性は機嫌良く呟くと


「そこ!よそ見すんな!集中!」


コートの選手に檄を飛ばした



「おい!75番!聞こえてんのか!75!」


シンは、呼ばれてるぞ!75!って思いながら

自分のゼッケンを見て

よしっ!と思い、声のした方向に


「ありがとうございました」


と、適当に頭を下げてコートを出て行こうと

小走りになった瞬間に、後ろから頭にボールを当てられた


「いっ、なんなの」

「なんなのじゃねぇ!

気合いどうこうより、なんだその態度は!」


シンはデジャヴ?とか思いながら

ボールを投げた相手を見ると

背の高い女性

バレー部主将がシンを睨んでいた


「ここにいるヤツは、真剣にやってんだ!

なんだ!オマエは!気の抜けた事しやがって!」

「‥‥すいません」

「すいませんじゃないんだよ!

今年は全国制覇目指してんだ!

お前はなんなんだ!」

「‥‥‥‥すいません」


シンは皆の注目を集める中で、ずっと頭を下げていた

真っ当な意見だ

至極真っ当な意見だとシンは思った


ガチ勢にエンジョイ勢が混じり

しかも早く脱落したいと言わんばかりの態度

シンが逆の立場だったら、どうした?


絶対にキレる


そう思いながらもシンは頭を下げて

みんなが注目して恥ずかしいから

早く終われ

終わったら自由だとも思っていた


「だいたいだ!

去年は雷姫が来ても駄目だったから

双璧に期待したんだがな

とんだ期待外れだ!

この私程度さえ止めれないんだからな!」


シンは頭を下げて、ジッとしていた

もういいから、もういいんだから

ジッとしてれば終わるからと思いながら


「アンタの動画も見たよ!

なんだい?あれは?あの様は?

こんなヤツらと互角だったからって

テングにでもなったかい?

なんだそりゃ?私達だってね!

雷姫程度のボールだったら取れるさ!」


シンは頭を下げながら

段々と考えるのがメンドーになってきていた


「双璧だって?あんなヤワな壁!初めてだね!こんな大した事ないヤツらに勝っても

なぁんの自慢にもなりゃしないね!

‥‥へぇ、なんだい?」


シンは頭を上げて

半眼で睨みつけるようにバレー部主将を見てから

もう一度頭を下げて


「すいませんでした」


と言い、75と書かれたゼッケンを取って、床に捨てる

そして

すぐに頭に当てられたボールの方へ小走りに走って行った

シンはボールを拾って

立っていた場所に戻ると

叫んでいたバレー部主将にボールを渡す


「なんなんですか?

そういう喧嘩したいなら買いますよ」


そう言って、シンは笑顔になる


「へぇ、どうするね」


バレー部主将も笑顔で応えると

シンは、リンの方を見ながら


「本当に止めれますか?雷姫を」

「楽勝だね」

「じゃあ、止めてみてください」


シンとバレー部主将が睨み合うと

近くまで来ていた犬の獣人女性が

2人に近寄ってきて


「いいね、こういうのは!

スポーツって感じだよ!」


シンが半眼で犬の獣人女性を睨みつけるようにしながら叫ぶ


「ウッサイ!アンタは誰よ!」

「これはすまない

監督でモクと言うんだ

しかし、喧嘩というが勝負の方法はあるかい?」


シンはバレー部主将とリンを順に指差しながら


「コイツのを取って、雷姫が入れりゃ

文句ないんでしょ」

「アンタもだよ、シン・フジムラ!」


バレー部主将が

シンを見下すように笑いながら言ってきたので

シンは半眼から睨む様に目付きに変えて


「取れるなら取ってみなさいよ

今日は調子いいんだから覚悟しなさいよ」


バレー部主将にそう言うと

シンはリンの方に歩いていった

モクとバレー部主将はシンに背中を向けて歩き出し

小声で話し合う


「満点だ!よくやってくれた」

「初めて喧嘩売ってみたけど

‥‥本当にもう嫌ですよ、あんなの」


バレー部主将はリンの方を見ると

シンに見えない様にバレー部主将に謝ってくる


「後は野となれ山となれかな」

「無責任な!本気で泣きますよ」

「もう少しだけ頑張れ!悪の女幹部!」

「わかりましたよ‥‥悪の元帥」


小声で話し合うと

モクとバレー部主将は、笑いを堪えて

勝負の準備をする為にコートへ向かう


「監督?シンちゃんと後で仲良くなれると思います?」


バレー部主将はモクに聞くと


「まぁ、アレだ!

こうなったら、爆発オチもありじゃないか?」


声を殺して、2人は笑い合った



「シンちゃんのぉ〜お怒り、お怒りぃ」


アヤノの母親は黙って見ていたが

最後に監督とシンに絡んだ子が話しているのを見て

おどけて言う

双子の母親が

アヤノの母親のやる事に手拍子をしながら聞いた


「動画を見て知ってるけど、どうなのかな?

あそこまでして入部させるの?」

「娘が去年の暮れあたりから言うのよ

シンちゃんがいたら、全国であれがやれるって」


リンの母親が少し難しい顔をしながら言うと

ウイの母親がリンの母親に聞く


「何か知ってるの?」

「それがわかれば教えてるわよ

それに‥‥

娘もシンちゃんがやる気になるかわからないって」

「さっきの調子ではね」


リンの母親の後に

少し不機嫌そうなスーツ姿の女性が言う


「いや、演技だよ演技」

「そうよ

感情コントロール授業の一環と思うよ

‥‥たぶんね、たぶん」


アヤノの母親と双子の母親は

スーツ姿の女性を宥める様に言う


「それを言ったら

アナタ達がお気に入りのシンちゃんとやらは

失格になるんじゃないかしら?」


スーツ姿の女性は

2階観客席から見ても怒っているのがわかるシンを見て言う


「普段はね、そんなでもないんだよ」

「友達が馬鹿にされたのよ

それは当然のように怒るわ」


アヤノの母親が言って、リンの母親が続ける

すると2人は自分達に視線が集まっているのを感じた

双子の母親が昔を思い出すように目を瞑ってから

身震いをして言う


「あの時は‥‥本当に!本当に!ひどかったんだからね」

「あれれ?どれだったっけ?

本当に色々と覚えがあるけど」


アヤノの母親が戯けて返すと

双子の母親に軽く頭を叩かれる


「にしても、今回の喧嘩の売り方だけど

アナタの娘が台本書いたんじゃないの?」

「ホント!

一昨年の追い出し会の動画の焼き増しかと思うわよ」


ここまで話して、パタッと会話が止まる

最後の発言をしたスーツ姿の女性に注目が集まった


「何がシンちゃんとやらよ」

「しっかり見てんのよね、コイツは」


アヤノの母親とウイの母親に言われて

スーツ姿の女性は、ウッ!と言う


「気になってしょうがないみたいね

その様子だと‥‥

文化祭の時にも覗きに行ったんじゃないの?」

「大丈夫?シンちゃんを生徒としてちゃんと見れる?」


リンの母親と双子の母親に言われて

耳が赤くなり始めたスーツ姿の女性は


「何よ!可愛くて面白いのよ!

いいじゃないのよ、これくらい!」


むくれたように言って、フンっと横を向く


「「「「でしょ」」」」


アヤノの母親達が声を揃えて言うと

スーツ姿の女性以外が笑っていた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ